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津波で酒蔵を失った男の再起への誓い

地元の酒を愛する人々がなけなしのお金をカンパ

  • 伝農 浩子

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2011年4月25日(月)

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 3月11日14時46分に発生した東日本大震災は、東北地方はもちろん、関東東部、さらには長野県北部にまで甚大な被害を与えた。

 東北から北関東にかけて、太平洋沿岸部にある複数の酒蔵が壊滅的被害を被った。

 岩手県の地酒に『酔仙』がある。大地震を追いかけるように起こった津波は、金野靖彦社長が見る前で、酒蔵のすべてを飲み込んでいった。高台に逃げる途中で振り向くと、酒蔵は怒涛に飲まれていた。残ったのは、瓦礫の中から突き出す流木に引っかかった酒樽だけ。その光景が金野社長に与えた衝撃と哀しみは言葉に表しようがない。しかも、3月11日は甑倒し(こしきだおし)――この年最後の米を蒸して仕込み、酒の神様を祀った神棚に新酒を供え、蔵人(酒造りの職人)の労をねぎらう――の日だったという。

 その同じ日に甑倒しを終えていた蔵がある。福島県の地酒『磐城壽(いわきことぶき)』を製造する鈴木酒造店だ。磐城壽の生産量は決して多くはない。だが、地元の海の男たちと、全国の愛好家の咽をうるおしてきた酒だ。

 地震、津波、原発事故――すべての災害が同酒造店を襲った。酒蔵も、住む家も崩れ、すべて津波に押し流された。確かにそこに酒蔵はあった。しかし、今、その場所には蔵があった形跡すら残っていない。にもかかわらず、大きくニュースに取り上げられることもなかった。

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 震災から1カ月半がたった。しかし、福島第一原発の事故のため、蔵があったはずの場所への立ち入りは制限されたままだ。近寄ることもできない。この先、20年も浄化されない可能性も懸念されている。それでも鈴木酒造店の専務、鈴木大介さんは、『磐城壽』の看板を再び掲げるため、再建へ動き出した。

海の男のための酒を手作りで造ってきた

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 「東西に長く広がる浪江(なみえ)の町は、二つの川が海へと注いでいます。その一つは水源も町内にある、本当にきれいな町なんです」(鈴木さん)

 福島県浪江町の酒蔵、鈴木酒造店は、海運業を営んでいた先祖が天保年間に創業したとされる。請戸漁港も近く、傍らにある堤防に上ると目の前に太平洋が広がる「日本一海に近い酒蔵」だ。

『磐城壽』の堂々たる銘柄の看板

 鈴木さんは、磐城壽が「海の男酒」であることを誇りに酒造りをしてきた。磐城壽は、海の男たちが誇る大漁を「壽ぐ(ことほぐ)」ための酒であることから、こう名づけられた。鈴木さんは「数年前までは、大漁だと、漁協(漁業協同組合)が船主に酒を贈ったんです。そのため『大漁だったが?』と聞く代わりに『酒になったが?』と声をかけることが漁師の挨拶だったんです」と語る。磐城壽、通称『壽』は、漁師たちに届けられた寿ぎの酒だ。

鈴木酒造店自慢の酒の中から。左から『本醸造生酒 磐城壽』、『純米生酒 磐城壽』、『夢の香米 純米吟醸酒 磐城壽』、『山廃純米大吟醸酒 磐城壽』、『季造り しぼりたて 磐城壽』、『大吟醸酒 磐城壽』、『山廃純米原酒 土耕ん醸(どこんじょう)』。唯一持ち出した生酒、『季造り しぼりたて 磐城壽』は、お世話になっている人たちに振る舞った。再び醸(かも)す日を期して。

 水も米も地元産を使い、すべて手作りしてきた。海の近くにありながら、鈴木酒造店の敷地内の井戸からわき出る水は酒造りに適した良水だ。いくつかの井戸からわき出る質の異なる水を使い分けて仕込んできた。とろりとした水質が、磐城壽をふくよかな酒に仕立てている。

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