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「オレってただ乗り?」 震災で広まった“不要不急”症候群

それってやっぱり社内失業なの?

2011年4月28日(木)

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 あれは確か、1年くらい前の話だったと思う。

 オーストラリアの投資銀行に勤める男性社員が、テレビ生中継のインタビューに答えていた時のこと。彼の後ろの席で熱心にパソコンに向かって仕事を“している”、ほかの男性社員の姿が画面に映り込んでいたのだが……、よくよく見てみると、何とそのパソコンのモニターに映っていたのは、女性のセミヌードのグラビアだったのである。

 しかも、その男性は中継の途中でテレビに映っていることに気づいた。振り返って「ヤバイ!」と大慌てした姿まで、電波に乗ってしまったのだ。

 当然ながらテレビ局には苦情の電話が殺到し、会社側でも大問題になった。グラビア画像に夢中だったこの男性が、中級レベルのクライアント投資マネージャーという、そこそこのご身分だっただけに、会社側も困惑を隠せなかったという。

 当時、このニュースを見た友人のS子は、「仕事中にエッチ画像を見てるなんて、最低!」と憤った。

 それに対し、その場にいたM男は「エッチ画像かどうかは別として、何か必死にパソコンに向かってると思ったら、ネットショッピングしてたり、同窓会の連絡してるなんて人はざらにいるでしょ」と反論した。

 「だって会社ってアクセスできない画面とか、結構厳しく管理してるんじゃないの?」と私が聞くと、M男は次のような仕事を“している”ように見えるだけの社員の実態を教えてくれた。

 「それは大きな会社の話。うちみたいな中小はそこまでやってない。だいたい会社の中って、何やってるんだか分からない人が多いからね。会議だって、最近はやたらと時間厳守だから、プレゼンターじゃない限り、何も言わないで終わるなんてざら。考えているフリして昼飯に何を食おうかなんて考えてるヤツ、結構いると思うよ。昔の会議ってダラダラやってた分、必ず全員意見を言わされたから、もっと緊張感があった」

 確かに、大部屋で顔をつき合わせていた昔と違い、パソコンと向き合うのが典型的な仕事スタイルとなった現代では、仕事を“している”のか、“している”ように見えるだけなのかを見分けるのは難しい。

 眠くてボーっとパソコンの画面を見つめているのも、脳みそフル回転させて見つめているのも他人からは区別がつかない。忙しいように見える人が実はヒマしてエッチな画像を見ていることもあれば、頭を悩ませて働いているように見える人が実は好みの写真を必死に探しているだけの場合だってある。

 その逆に、部下と無駄話ばかりしたり、席におらずにフラフラして、ヒマそうに見える上司の行動が、実は重要で意味のある仕事だったりもする。

3月11日以降に変わってしまった仕事や職場の風景

 フリーライダー、ただ乗り、粘土層――。

 このコラムでも扱ってきたテーマではあるが、これらはすべてその人に対して周りが抱く主観的な印象でしかなかった。

 裏を返せば、その人の本当の仕事の価値や、その人の仕事ぶりというのは、他人からは判断のつきにくいものなのだ。

 ところが、3月11日以降、事情が少々変わってきた。

 「あれ? オレって、ひょっとしてただ乗りだったのか?」

 自分の仕事の価値に、自分の存在価値に、こう疑問を感じてしまった人たちがいる。

 「不要不急の仕事、つまり、重要でも急ぎでもない仕事の場合、会社に来なくていい」と、会社から自宅待機の指示を受けて、「オレの仕事は不要不急なのか」とショックを受けたというのだ。

 自分は重要な仕事をやっていると思い込んでいたが、どうやらそうでもない“らしい”。

 「不要不急」という、これまでめったに使われることのなかった言葉がきっかけとなり、それまで自分が信じていた価値観がガラガラと音を立てて崩れ去った。

 職場の風景、人間関係、そして自分の存在価値。さまざまなものが一変してしまったのだ。

 そこで今回は、「不要不急」の仕事について、考えてみようと思う。

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「「オレってただ乗り?」 震災で広まった“不要不急”症候群」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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