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風評に振り回されないための“3つのこと”

福島県産を買わないカゴメとデルモンテ、買うモスバーガー

  • 武田 斉紀

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2011年5月9日(月)

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風評被害の原因の2つは、「情報不足」と「想像力の欠如」

 東京電力の福島第1原子力発電所の事故発生直後、首都圏では福島県産だけでなく、近隣県の農産品の販売も拒否するスーパーが現れた。いわゆる風評被害だ。

 被害は農産品だけでなく、水産物にも及んだ。首都圏のある市場が、原発被災地からの入荷を拒否したというのだ。被災地を応援したい気持ちはあっても、目の前に突きつけられると避けて通ろうとしてしまう現実を思い知らされた。ニュースを聞いて、同じ水産業に従事する仲間同士なのに、苦しい時こそ助け合わなくてどうするのだと残念に感じた。だが、自分が同じ立場だったとしてウェルカムと笑顔で受け入れられたかと想像すると、人ごとではないような気がした。

 告白するが、事故発生直後、我が家ではスーパーに並んでいた福島県および隣県産の農産品を買わなかった。放射線が規定以下であることを信じていないわけではないし、むしろ原発事故のニュースには大きな関心を持って毎日何度も見ている。専門家の話も聞いた。規定以下であると分かっていても、野菜の種類は多く選択肢がある。ホウレン草にビタミンAや鉄分が豊富なのは分かっているが、それぞれニンジンや大根で十分補える。今わざわざ福島県産のホウレン草を買わなくてもいいかなという気持ちが芽生えて、素通りしてしまっていた。

 4月初め、福島県の都内のアンテナショップが県内産野菜の即売会を行った。地元の人が声をからしながら、現地の窮状と産品の安全性をアピールしたところ、およそ20分で売り切れたそうだ。テレビのインタビューに答える人たちは、口々に「応援してあげたかったから」と答えた。私もそこに通りかかったら、おそらく買っていたと思う。「一つになろう、ニッポン!」のメッセージに共感した多くの日本人なら、無視して素通りすることは心苦しいに違いない。

 私の当初の行動と、アンテナショップの売れ行き。この違いは何だろう。情報が十分であったとすれば、私は「想像力」の差ではないかと思うのだ。アンテナショップでは、困っている人が直接話しかけてくるので想像などしなくてもリアリティーがある。気持ちが伝わるし、現地の農家の人たちの気持ちも容易に想像できる。ただ単に、福島県および隣県産とそれ以外の農産品が並んでいる陳列棚の前では、私の想像力はそこまで及ばなかった。

 事故発生から2カ月近くがたつ。近所のスーパーをのぞくと福島県および隣県の農産品は見かけるものの、明らかに安値で売られている。一見風評被害は収まっているかのように見えるが、ある程度まとまった量の青ネギやニラ、ホウレン草、チンゲン菜などが100円かそれ以下で並んでいるのが現実だ。神奈川県産や静岡県産、さらに西の方の産品ならその倍くらいの値を付けているというのに。

 発生直後のような表立った風評被害はなくても、地元の農家は引き続き相当苦しんでいるに違いない。この値段で元が取れるとは考えられないが、少しでも現金が入ってくるなら、あるいは廃棄処分にするくらいなら、市場に出して買ってもらいたいという切実な思いなのだろう。こんな値段で買うのは申し訳ないが、買わないより買った方が貢献できる。

 買う人が増えれば、値段も少しずつ元に戻ってくるかもしれない。昨年の夏ごろだったか、猛暑でキャベツが1個300~500円の高値を付けたことがある。さすがにほかの野菜で代用しようと考えてしまったが、福島県および隣県の農産品が一日も早く適正価格で売られるようになればいいと思う。

 現状では、出荷できるだけでもいい方なのかもしれない。事故の影響で、春を迎えても政府の制限によって、作付けさえも許されない農家が増えている。作っても土に染み込んだ放射性物質を作物が取り込んでしまい、出荷制限が想定されるからだ。確かにそうなのだろう。しかし農家にとって、作物を作れないというのは失業することに等しい。

 私は四国に親の実家があって、年に何度か帰省するが、夏になると周りには水をたたえた水田が青々と広がる。夜はうるさいくらいの蛙の声が子守唄だ。そんな被災地の原風景が帰って来る日はいつのことだろうか。農家の人々が、先祖代々の土地を手放さざるを得ない事態にならないことを、心から祈るばかりだ。

 そうした思いを抱きながらも、私は「福島県および隣県産を買うか買わないかは、日本人一人ひとりが判断すればいい」と考えている。それぞれに考え方の違い、また家族構成の違いで影響力も異なり、政府や人に強制されることではないと思うからだ。

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