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避難所には「心のバリアフリー」があった

障害者の「働く場」を守れ!~仙台からの報告[1]

  • 高嶋 健夫

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2011年5月9日(月)

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 そうした中で、取材当日の25日にいち早く操業を再開した企業があると聞き、震災の日からの対応を聞くため、現地に足を運んだ。

知的障害の社員が聴覚障害の社員を避難誘導

目の前の道路が津波で冠水したクリーン&クリーン東北工場(左=撮影:高嶋健夫)
震災直後に撮影した同工場の様子。積み上げたパレット類がすべて崩れ落ちた(画像提供:クリーン&クリーン)

 仙台市宮城野区蒲生にあるクリーン&クリーン(田中明朗社長)東北工場。仙台市に本社を置く製造アウトソーシング・人材派遣会社、東洋ワークなどが出資する障害者雇用のための特例子会社で、スーパーで使われる買い物カゴやオリコン(野菜などを入れる折りたたみ式の小型コンテナ)、パレット、トレーなどのプラスチック製品の洗浄や、買い物カートの清掃・修理を請け負っている。

 この工場は仙台市沿岸部にあり、キリンビールや東洋製罐、JFEスチールの関連会社などの工場が津波で壊滅的被害を受けた仙台港から直線距離にして1キロもない。工場の中央には大型の自動洗浄機が2ライン並び、その周囲や工場棟の前には搬入された買い物カゴやコンテナ、パレットが3メートル以上の高さに積み上げられている。地震によって重さ数トンもある洗浄機は横に1メートル以上動き、カゴやパレットはすべて崩れ落ちたという。

 震災当日は18人の障害のある社員(16人が知的障害、2人が聴覚障害)と4人のスタッフが勤務していた。幸いなことに人的被害は少なく、軽傷を負った人が1人出ただけで済んだ。

 「仙台では大震災の2日前にそこそこ揺れる地震(前震と見られる3月9日の地震)があったんです。それがいわば予行演習になって、社員はスムーズに避難してくれました」と、障害者雇用・教育担当の岩崎キミ子取締役は胸をなで下ろす。障害のある社員たちの業務管理やケアを担当する鴇田喜一氏は「実は、2日前の地震では持ち場を離れてはいけないという責任感からか、逃げない社員もいたんです。そこで改めて、『地震がきたら仕事は投げ出していいから、とにかく逃げろ』と徹底しておいた。みんな、その指示をよく守ってくれました」。

 最も心配だったのは、2人の聴覚障害のある社員。工場建屋の一番奥での作業を担当していた彼らに、避難指示を的確に伝えられるか一抹の不安もあった。それを払拭したのは、近くにいた知的障害のある社員たちだった。「私たちが指示するまでもなく、チームワークを発揮して、すぐに一緒に連れ出してくれました」と、鴇田氏は振り返る。

事務棟2階の食堂でインタビューと写真撮影に応じてくれたクリーン&クリーンの社員たち。震災当日、多くの社員がここで夜を過ごした(撮影:高嶋健夫)

 こうして、道路の反対側にある緑地にいったん避難し、ほっとしたのもつかの間、社員たちには新たな危機が迫っていた。津波である。「最初は水道管が破裂したのかと思っていた」(鴇田氏)が、水はどんどん迫ってきた。すぐに全員が工場棟の脇にある事務棟の2階に避難した。普段は食事をしたり、ミーティングをしたりする憩いの場だ。道路は冠水したものの、道路より少し高くなっていた工場と事務棟はギリギリで浸水を免れた。

 そこから長い一夜が始まる。電話はほぼ通じず、停電したままの中で、鴇田さんらは深夜までかかって、車で社員たちを順番に自宅や居住するグループホームに送り届けた。

 マイカー通勤している聴覚障害のある社員は、安全を確認したうえで帰宅させた。津波が襲った沿岸部に住む2人の知的障害のある社員については、一晩スタッフの家に泊め、翌日、「若林区役所に行け。そこで事情を話し、家族と連絡を取ってもらいなさい」と指示。2人は鴇田さんの指示通りに冷静に行動し、無事に家族と再会することができた。

コメント1件コメント/レビュー

このような記事が取り上げられることを極めて高く評価したい。非常事態では、人と人とのバリアを引き裂いて手を取り合うことが、ビジネスの場であっても必要。弱者を更に弱い立場に追いやってはいけない。自戒の意味も込めて思います。(2011/05/09)

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このような記事が取り上げられることを極めて高く評価したい。非常事態では、人と人とのバリアを引き裂いて手を取り合うことが、ビジネスの場であっても必要。弱者を更に弱い立場に追いやってはいけない。自戒の意味も込めて思います。(2011/05/09)

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