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すべての戦略はインテリジェンスに通ず

秋山真之と『孫子』に学ぶ戦略と戦術〈7〉

2011年5月11日(水)

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 『孫子』という古典には、一つ奇妙な謎があります。それは全十三篇で成り立っている最後に「用間篇」、つまりスパイの活用法が置かれていることなのです。

 書物の終結部分といえば、一般的には内容の結論や、最も胆となる記述が来るところ。もちろん諜報は重要な活動ですが、では全編の掉尾を飾るに相応しいものなのか、といえばやや首をひねらざるを得ません。

 一つ前の十二篇目「火攻篇」後半には、全体の結論といえる記述が置かれているため、「『用間篇』は番外編のような形で最後に置かれたのではないか」といった解釈もなされたりしました。確かに諜報の話は、全体の内容からはやや独立した趣があるんですね……。

 ところが、1972年に山東省にある銀雀山漢墓という遺跡から発見された竹簡『孫子』には、「用間篇」が十二篇目に、「火攻篇」が十三篇目に配当されていました。この結果、どうも本来の配列は最後が「火攻篇」だったのではないかと現在では推測されるようにもなっています。

 しかし、疑問がすべてこれで氷解した、とはいきません。仮に当初の形は「火攻篇」が全体の〆だったとしても、では一体誰が何のために「用間篇」を全体の最後に置き、現在伝えられる形としたのか――。

 実は、われわれが現在目にする『孫子』の形をつくったのは『三国志』の英雄・曹 操でした。それまで伝えられてきたテキストを再編纂して、いわば決定稿を作ったといわれています。

 この流れからいけば、「用間篇」を最後に持ってきたのは曹操である可能性が真っ先に浮かびあがってくるのです。そして筆者は――この改変が曹操の手によるものだったとして――彼の思いがわかるような気がしてなりません。なぜなら、今回の表題のように、

 「すべての戦略はインテリジェンスに通ず」

 というのが、戦略を尽きつめて行くと浮かび上がってくる大原則の一つだからです。しかもこの原則は、日露戦争の帰趨にも大きく関わっていました。そこで今回は、インテリジェンスと戦略との関連というテーマでお送りしていきます。今回は、戦略のヒントというより、戦略の限界と特異点をめぐる旅です。

「状況認識」で先んじていた日本海軍

 まず、インテリジェンスという言葉の定義について、ちょっと触れておきましょう。「インテリジェンス」は「インフォメーション」と対比される概念で、それぞれ――筆者なりのざっくりした表現では――以下のようになります。

・ インフォメーション――裏とりも整理もされてない情報
・ インテリジェンス――裏とりや整理され、使えるように加工された情報

では何故、戦略にとってこの「インテリジェンス」が、それほどまでに重要なのかといいますと、「秀才の考える戦略はなぜ似てしまうのか」でとりあげた戦略の定義に関わってきます。それは次のようなものでした。

〈状況認識(状況を構成する彼我の認識も含む)〉〈戦う道具〉〈めざす目的〉の3つの要素を論理的な道筋で結び付け、めざす目的を手に入れるアイデアを考えること

 この図式でいうなら、まず何より必要なのが正確な「状況認識」に他なりません。これが歪んでいたり、現実に即していなければ、いかに頭の良い人が精緻な戦略――それが計画的なものであれ、試行錯誤的なものであれ――を組み立てたとしても、砂上の楼閣なのです。単純な例でいえば、敵軍は総勢で1万人だという前提で戦略組み立てて、実際に戦場行ったら実は10万人集結していた、というのでは目も当てられません。

 逆に、敵の内情、特にその弱みをうまく探り出すことが出来たなら、それは大きな強みともなってきます。

 先ほどの曹操が、まだ弱小勢力だった頃、ときの最大勢力である袁紹軍と戦ったことがありました。これを「官渡の戦い」といいます。そして、激戦を決したのは、裏切った袁紹側の参謀がもたらした「烏巣に輜重があるから、焼き払えば形勢は逆転できる」という情報でした。彼は勝負における情報の価値を、肌身で体感した人物だったのです。

 実はこうした状況認識における情報の重要性というのは、現実の戦場では常につきまといます。そして面白いことに、日本海軍は日露戦争において、この点で大きなアドバンテージを獲得していました。それは、当時起こった情報革命と大きく関係してきます。

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