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震災で動揺した人々から「回復力」を引き出す

金井壽宏・神戸大学大学院教授が語るリーダーの条件

2011年5月13日(金)

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 2011年3月11日に起きた東日本大震災。巨大地震は大津波や原発事故を誘発し、戦後最大の災害に発展。その結果、多くの日本企業の事業活動は、東日本にとどまらず全国にわたってマヒしてしまった。

 これまで追求してきた効率経営の歯車が一気に逆回転して、さまざまな負の連鎖が広がった。その反省に基づいて、企業は自らのあり方を再考しなければならない。大震災を転機として新たに創造し直すべき経営のモデルとは。企業で経営再創造の最前線に立つ実務家の取り組みや識者の論考を通して模索していく。

 今回に登場するのは、日本のリーダーシップ研究の第一人者である金井壽宏・神戸大学大学院経営学研究科教授。震災でさまざまなショックを受けて動揺している人々から、復興に向けて立ち直る「回復力」を引き出すリーダーの条件について考察する。

(取材構成は、中野目純一=日経ビジネスオンライン記者)

 今回の大震災で人々に動揺が広がっている。余震が続き、東京電力の福島第1原子力発電所で起きた事故も収束のメドが立っていない。人々は不安の中で生活を送り、落ち着いて仕事に取り組むことができない。

 地震に襲われた東日本の人々だけではない。彼らの抱く不安は、メディアの報道などを通じて西日本の人たちにも伝播している。不安の根底にあるのは、現在や将来に確たる見方や見通しが持てないという不確実性だ。

 だが、ここで再認識しなければならないのは、我々の社会はもともと不確実性に満ちているということ。そして原発に限らず、人が作り出した人工物には大きな危険が伴っている場合があるということだ。震災が起きる前に人々が過度な不安を抱くことなく生活していたのは、「日本の社会は安全だ」という見方を多くの人が共有していたから。本当に社会が安全だったわけではない。

現代社会に必要なのは「正解」ではなく「納得解」

金井 壽宏(かない・としひろ)
神戸大学大学院経営学研究科教授。専門は経営管理と経営行動科学。日本の経営学におけるリーダーシップやキャリア、モチベーション研究をリードする。1954年生まれ。89年米マサチューセッツ工科大学(MIT)でPh.D.(マネジメント)、92年神戸大学で博士(経営学)取得。94年神戸大学経営学部教授。99年から現職。(写真:山田 哲也)

 世の中の現象は科学で説明がつき、予測可能である。問題があっても必ず正解があるという信念を持ってやってきた。それはけなげなことではあるけれども、人類がこうした確信を抱くことができたのは、実は近代だけにすぎない。

 ポストモダンの現代においては、科学によって解明できないことがたくさんあると改めて気づかされたはずである。そんな澱が現代社会に堆積し続けてきたので、この世の中は、ドイツの社会学者であるウルリヒ・ベック博士(独ミュンヘン大学と英ロンドン大学の教授を兼任)が同名の著書で指摘した「危険社会」だという認識がある。

 こうした主張をやや悲観的にすぎると感じた人も当時は多かったことだろう。いずれにしても、不確実なのだから、正解などない。あらゆる問題に、合理的に対処すれば、唯一最善の正解がすぐに見つかるという時代は終わった。

 そこで追求すべきは、正解ではなく、多くの人々が危機に直面していても納得して共有できる「納得解」である。

 この言葉は、東京都初の民間人校長として杉並区立和田中学校の校長を務めた藤原和博氏が提唱した言葉だ。周りの意見を聞きながら、納得解を見いだす。現代のリーダーは、そうした人でなければならない。藤原氏のこうした考えに対して、「心から同感する」と私もご本人に申し上げた。

 特に有事には、不安や動揺に駆られた人々に向けて、回復のシナリオや展望とともに「大変だけど大丈夫」というメッセージを出すことが重要だ。組織が弛緩しないように、「大丈夫なようだけど実は大変だ」と緊張感を持たせることが求められる平時とは逆になる。

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「震災で動揺した人々から「回復力」を引き出す」の著者

金井 壽宏

金井 壽宏(かない・としひろ)

神戸大学大学院経営学研究科教授

1954年生まれ。89年米マサチューセッツ工科大学(MIT)でPh.D.(マネジメント)、92年神戸大学で博士(経営学)取得。94年神戸大学経営学部教授。99年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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