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火力発電の稼働率引き上げが当面の現実解

自由化が原発依存からの脱却うながす

  • 円居 総一

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2011年5月12日(木)

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 東日本大震災によって、日本の電力システムがいかに脆弱かが明らかになった。

 現状の電力供給体制では、今夏の電力需要を賄えない恐れがある。

 しかし、供給を増やすことは容易ではない。原子力発電所の増強は、近隣住民の理解を得るのが難しい。とはいえ、火力発電に頼り、地球温暖化ガスを増加させるわけにもいかない。

 では、どうするか?

 大学やシンクタンクの研究者、エネルギービジネスに携わるビジネスパーソンに、電力需給ギャップ問題の解決策を提示してもらう。

第2回は円居総一 日本大学教授

  東京電力福島原子力発電所の事故によって、「安全、安価で地球に優しい」という原発神話が崩れ去った。

  原発危機は、生命と社会の安全を揺るがす事態を招いたからだ。原発危機の発生とその対応プロセスが我々に問いかけた問題は、個人の生活様式、社会の在り方、企業の行動規範を含めて広範にわたる。今、休止原発の再稼働は社会的に許される状況にはない。

  日本の電力は、火力発電が全体の65%弱を、原子力発電が30%弱を賄っている。火力発電の稼働率(設備利用率)は30%程度だ。IAEA(国際原子力委員会)の試算では、ピークに備えた火力発電の稼働率を20%上げれば、今回の電力不足分はほぼ賄える状況だ。火力発電の稼働率をすぐには上げられないとしても、日本全体の、総供給力は需要を満たし得る状況にある。

  東西間で電力の融通を行えば、総需要を満たすだけの供給を概ね確保することが可能だ。だが、東西で周波数が違い、その転換設備と転換能力量がネックになっている。これを電力会社任せにせず、国の緊急措置として進めれば、少なくとも1年程度で電力制約を解消する目算が立つだろう。

  今夏の節電はやむを得ないとしても、制約解消への具体的展望が見えてくれば、企業の生産計画も立ち、今や産業の基軸となったサプライ・チェーンの早期復旧も促されるだろう。不確実性に根差す経済の落ち込みサイクルにも歯止めがかかり、復興への期待が膨らみ、経済の回復への基盤が整ってくるだろう。

原発の発電コストは火力発電より高い

 電力について、持続的成長パスへの移行に絞って、課題を考えてみたい。

 第1に、求められるのは、経済・社会活動の基盤であるエネルギー政策の抜本的見直しだ。今回の事故が原子力発電への賛否を超えて、原子力発電が、採算性、安全性、クリーン性のどの点から見ても、エネルギー政策の基本に据えるには無理があることを明らかにしたからだ。

 キロワット時当たりの発電単価は、耐用年数をベースとする計算方式で原子力が9円程度、火力が10円程度であった(1992年資源エネルギー庁)。一方、財務諸表ベースでの発電単価は、2002年で、原子力が8.3円、火力が9.5円となっている(電気事業連合会試算)。

 しかし、これらの単価の算出は両方式ともに、採算性の比較に不可欠な同一水準の設備利用率(稼働率)で計算していないため、客観的比較にならない。稼働率が低ければ、規模の経済性が働かず、単価が上昇するのは常識だ。

 原子力発電の稼働率が75%前後で維持される一方、火力発電の稼働率は30%程度まで落ちている。火力発電は、発電量の調整がしやすく、電力需要がピークに達する時の予備とも位置付けられてきたため、大半が非稼働だ。一方、原発は、福島に見るように、耐用年数や長期の原価償却期間を過ぎたものも稼働させている。

 電事連の上記試算でも、火力発電の稼働率を80%とすると、火力の発電単価が7.3円となって、原子力の8.3円(稼働率78%実績値)を下回る。両者の採算性は、逆転してしまう。

 また、最近年の原油価格の急騰に照らして、火力単価の大幅上昇を懸念する声が強いが、これを懸念する必要性は低い。火力発電の主力は天然ガス(LNG)に移っている。石油火力は火力発電全体の1割程度にすぎない。

 より直近のデータ(2008年『エネルギー白書』)によると、石油火力の発電単価は原子力の2倍以上だ。だが、石炭とLNGの発電単価は原子力と変わらない。それらが90%近くを占めるため、稼働率を同一にして計算すると、火力が5.96円、原子力が5.73円と両者にほとんど差はなくなってしまう。

 さらに原発には、原発関連予算という多額の税を投入している。2009年度の実績は一般会計と特別会計を合わせて4323億円に上る。これは、発電単価を計算する際、コストに算入しない金額だ。これらも含めて考慮すれば、原子力発電の採算性が火力に劣るのは明らかだろう。

原発は暴走し始めるとコントロールできない

 原発の安全性と安全管理については、継続中の危機がその致命的欠陥を示した通りだ。原発は、いったん安全管理の域を超え、原子炉が暴走し始めると、それを止める手だてがない。危機管理システムとして、これは何より致命的だ。またいわゆる5重の安全壁が、意外とローテクな冷却装置に依存する管理システムであることも明らかになった。

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