• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

見逃されている原発事故の本質

東電は「制御可能」と「制御不能」の違いをなぜ理解できなかったのか

  • 山口 栄一

バックナンバー

2011年5月13日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 だが、万が一停電してCSポンプもHPCIポンプも止まってしまい、ECCSが働かなかったらどうするのか。1号機の場合、その「最後の砦」が「隔離時復水器」(IC、Isolation Condenser)だ。このICは、電力を必要としないパッシブな自然冷却システムであって、無電源で8時間作動するように設計されている。

 2、3号機では、この隔離時復水器(IC)の進化した「原子炉隔離時冷却系」(RCIC、Reactor Core Isolation Cooling System)と呼ばれるシステムが「最後の砦」として設置されている。これは、すべての電源が喪失した後も、炉心の発熱による蒸気で回る専用タービンによって一定時間、ポンプを駆動するシステムであってICよりも長時間作動する。

 以上から分かるように、隔離時復水器(IC)ないし原子炉隔離時冷却系(RCIC)が作動しても、相変わらず放射性物質は格納容器にとどまり、外界には出てこない。しかし、原子炉が「制御不能」の事態に陥り、格納容器の圧力がついに暴走し始めて設計耐圧を超えたらどうするか。このときは、圧力抑制室(SC)のところに備えられたベントと呼ばれる弁を、手動で開ける。もっとも、ベントを開けたとしても、原子炉の発熱を抑制することはできず、核燃料の崩壊熱を上回る熱容量を持つ水を注入しない限り、熱暴走を止めることはできない。

1号機では、「最後の砦」は何時間動いたのか?

 では、今回の原発事故では「最後の砦」はどのように作動したのだろうか。政府発表の公開情報を読み解くことで、それを推測してみよう。

 3月15日4月12日の首相官邸の資料および4月4日の原子力安全・保安院の公表データに基づいて、原子炉の水位と格納容器内の圧力の経時変化を求め直したのが、図2だ。まず1号機の隔離時復水器(IC)は何時間作動したのかを推測してみよう。

画像のクリックで拡大表示

 3月11日16時36分に津波が到来し、非常用炉心冷却系(ECCS)が止まった。だが、その後は隔離時復水器(IC)が働いて炉心を冷やし続けた。翌日の0時00分にはこの隔離時復水器が作動していることが確認されたものの、その30分後には格納容器の圧力が上がり始めているので、0時00分から0時30分のあいだに隔離時復水器(IC)が作動を終えたと考えられる。1号機の隔離時復水器(IC)は、16時36分から翌日の0時00分-0時30分の間まで約8時間、ほぼ設計通り作動して炉心を冷やし続けたということだ(図2(a)の青い時間領域)。

 ところが、隔離時復水器(IC)の作動が止まってしまえば、もはや炉心を冷やす手立てはなく「制御不能」の次元に陥る。かくて燃料の発熱による水の気化によって12日7時ころから原子炉の水位が下がり始め、8時36分には炉心の露出が始まった。

 週刊誌「アエラ」5月2日号の記事「遅すぎたベント 少なすぎた注水」によれば、「12日7時55分に3トン、8時15分に4トン、8時30分に5トン、9時15分に6トンの淡水が注入された」とある。さらに「内部資料によれば、1号機への注入はベントより前、12日朝から行われ、ベントをはさんだ14時53分までに計80トンを注水した。『水が少なすぎますね。私が計算したところ、1号機には毎時25トンの水を入れないとバランスが取れないのに、実際は毎時10トン。ベントしなかったために、圧力が高くて、水が入っていなかったのでしょう』(宮崎慶次・大阪大学名誉教授)」とある。

コメント101

「東日本大震災 立ち上がれ!モノづくり大国」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

人は何か自信を持って誇れるものを持っているはずです。

為末 大 元プロ陸上選手