• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「人のため、被災地のため」と思う人が陥る自覚なき勘違い

高まる「社会貢献」熱につきまとう危うさ

2011年5月12日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「自分より日本のことを考えて滑った」と言う安藤美姫選手がフィギュアスケートの世界選手権で優勝し、「誰かのために戦う人間は強い」と選手会長の嶋基宏選手が語った東北楽天ゴールデンイーグルスは、本拠地・宮城スタジアムでの開幕戦で見事な勝利を収めた。

 「最近の若い人たちって、すごいなぁ」と素直に思う。だって「誰かのために」なんて気持ちが私に芽生えたのは、ずいぶん大人になったからだったように思うから。

 「日本のために~」
 「誰かのために~」

 私が20代のころには、めったに発することのなかった言葉だ。自分がどうにかなりたいために働いたし、自分の能力を高めたい、とか、自分の能力を発揮したい、とか、根拠のない自信に支えられ、大いに“若気の至り”を満喫し、20代を突っ走っていた。だから、最近の若い人たちの言動に対して「すごいなぁ~」と、ただただ感心してしまうのである。

 「誰かのため」という感情と無縁だった私たち、いや、正確には私、であっても、いくばくかの年月を社会で過ごすうちに、「ありがとう」と誰かから感謝されたり、「人のためになった」と感じたりする瞬間に巡り合う。すると、「誰かのために働くのって、悪くない」と思い、時には「社会の役に立つ」ことがモチベーションになることに気づかされる。

 いわゆる「やりがい」とでも言うのだろうか。いや、「社会貢献」といった方がいいかもしれない。そう。社会に何かしら役に立った時に得られる満足感って、とてつもなく心地いいのだ。

 と同時に、「人のために」なることの難しさも幾度となく経験する。自分では「良かれ」と思ってやったのに全く感謝されなかったり、思い描いたような結果が得られなかったり、時には逆に相手を傷つけてしまうこともある。

 「患者さんのために」、「患者さんの命を助けたい」と働く医師でさえ、いつも感謝されるとは必ずしも限らない。

 「最近は感謝されることよりも、怒られることの方が多いかな」

 友人の医師は以前、こうぼやいていた。

 人のために働くのって、ものすごく難しいことなのだ。

東日本大震災で一段と高まる「社会貢献」熱

 東日本大震災が起きて以降、「人のために働きたい」「人の役に立ちたい」という、いわゆる『社会貢献』熱が、若い世代を中心に高まっているという。

 今年4月に入社した新入社員を対象に、日本経済新聞社とNTTレゾナントが意識調査を実施した。その結果を見ると、「東日本大震災に伴い、会社勤めを通じて社会に貢献したいと感じるようになった」という回答が57.2%に上り、「会社の先行きに不安を感じるようになった」という回答(36.3%)を大きく上回った。 

 昨年くらいから若い世代の社会貢献熱は高まっていると、さまざまなメディアが伝えていたが、震災を機に一段と強くなっている傾向が認められたのだ。

 「誰かのため」「社会貢献」──。

 どちらも胸に刺さる、美徳を感じる言葉だ。当然ながら、そういった気持ちを否定する気など毛頭ないし、むしろとても大切なことだと思っている。そういう優しい気持ちを持った人が増えれば、もう少し住みやすい世の中になるんじゃないか、などとほのかな期待も寄せている。

 ただ、「誰かのために」と豪語する人に、一抹の不安を感じてしまうのも事実だ。だって、「誰かのために働く」ことって、そんなに簡単じゃないと思うから。

 そこで今回は、「誰かのために」働くということについて、考えてみようと思う。

コメント72件コメント/レビュー

とても共感しました。ビジネスであればあるほど、社会貢献を直接的に感じるって難しいことですから。だからこそ、自分の何気ない仕事が、めぐりめぐって誰かの幸せに繋がることをイメージして、自分の日常に愚直に向き合う姿勢が大事だとしみじみ思います。そして、「ありがとうと言われたい」という自分のエゴを認識する強さ、大事です。(2011/06/09)

「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」のバックナンバー

一覧

「「人のため、被災地のため」と思う人が陥る自覚なき勘違い」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

とても共感しました。ビジネスであればあるほど、社会貢献を直接的に感じるって難しいことですから。だからこそ、自分の何気ない仕事が、めぐりめぐって誰かの幸せに繋がることをイメージして、自分の日常に愚直に向き合う姿勢が大事だとしみじみ思います。そして、「ありがとうと言われたい」という自分のエゴを認識する強さ、大事です。(2011/06/09)

「人の役に立つって、やはり簡単じゃない」はその通りです。自己認識の問題であり、かつ現実対象への理解の問題であって、人に役立つことをする対象が自己実現に即繋がるものではありません。むしろ自己犠牲に近くなると思います。優勝した時の言葉に国の為にやったと出る場合、その前のトレーニングが余りに辛く、自分の為では納得できずに、探し当てた到達点だと推測します。私が一人で外国に出かけ、何のためにやっているのだと夜ストレスに悩まされた時、到達した心境は「みんなの為、会社の為」でしたから、そう考えます。でも対象にどう考えてもそう思えなくなった時、会社を辞めました。あるお坊さんの説教に「情けは人の為ならず」がありました。「他人の為にすることは容易ではない。回り回って自分に戻ってくるから自分の為にやっている」と思いなさいとの説教でした。社会に役立つ仕事と思ったがそうでないからと簡単に辞める若者は、認識が不足しているのです。(2011/05/19)

真理ですね。さすが河合さんはお解りのようです。 被災地ボランティアで「被災者の皆さんの助けになる様にがんばります」と言っているやつほど、口以上に手は動かさなかった事を思い出してしまいました。 しかし、こうした活動をしていると、日本はボランティアの活動場所が少ないとつくづく思います。もっと増えないもんですかね。(2011/05/18)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授