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「だめトップ」と「強い現場」の悪循環を断ち切ろう

第1回 組織力とは何かを考える

2011年5月17日(火)

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「霞が関の各省間の綱引きや、相互の情報交換や調整の不十分さは被災地への救援をめぐってもみられた。被災地でもそうした組織間の対立やコミュニケーションの不足はあり、消防や警察、自衛隊の連携も十分なものとは言えなかった」

(草野厚『官僚組織の病理学』)

 東日本大震災、原発事故、さらには経済・財政問題と日本は今、大きな問題ばかりに直面しています。そうした問題に対して、現場の方々のすさまじい努力には頭が下がるばかりです。多くの海外メディアが報道したように、1人ひとりの日本人の姿勢、努力、規律は世界的に見ても格段であると思います。

 一方で、そうした現場を率いる(はずの)トップの動き、そして組織的な対応はどうであるかというと、見ていて歯がゆいも怒りも通り越し、絶望的な気持ちになったのは私だけではないはずです。政府にしても、東京電力にしても、優れた人材は豊富であるはずなのに、常に後手後手に回って、現場力だけで何とか持ちこたえていたのではないかと思わざるを得ません。今回の震災が図らずも明らかにしたのは、「日本の現場力はやはりすごい」ということ以上に、「日本の組織って何なんだ」「政府や本社はいったい何をやっているのだ」という、組織力の深刻な問題だったのではないでしょうか?

 冒頭の文章は、1995年の阪神・淡路大震災時の政府の対応について書かれたものなのですが、15年以上もたって通信技術なども発達しており、しかもそうした貴重な経験をしておきながら、何も良くなっていない。さらにさかのぼっていえば、太平洋戦争で「日本陸軍は教科書通りのことしかやらない。どうしてあんなばかな司令官や参謀たちのいる軍隊が大崩壊しなかったのかといえば、兵隊や下士官が信じがたいほど強かったからだろう」というイギリス人参謀の指摘(司馬遼太郎『昭和という国家』)から、何も変わっていません。

 考えてみれば、「現場力だけで持ちこたえる」ことは、有事の対応だけでなく、今の多くの日本の企業、組織の日常でも当てはまりそうです。優れた技術を持ちながらガラパゴス化している電機、携帯電話メーカー、優秀な人材が集まっていながら、M&Aや大きな国際案件で外資系に全く歯の立たない銀行、証券もそうでしょう。大手銀行にいるMBA時代の友人によれば、「外資系のインベストメントバンクには、確かにすごい人も何人かはいるが、平均だったら当行のほうがはるかに上だと思う」ということですが、それにもかかわらずです。

 ただし、トップは遊んでいるのかというと、どうもそうでもなさそうです。ストレスをためて怒鳴り散らしたり、心労で倒れたりするほどいろいろ考えてはいるようなのですが、どうもそれが見えない、あるいは組織の力に反映されていないのです。

 今こそ、もう一度日本の組織の力、組織力とは何かを考えてみる必要があるのではないでしょうか。それは、トップやそれを支える(はずの)本社はもちろんのこと、現場でへとへとになりながら頑張っている人たちにとっても、さらに今後組織に加わって日本をよみがえらせる役割を担う人たちにとっても大変重要なことではないかと思います。

組織力とは何か

 そもそも組織が存在するのは、個人ではできない仕事や目的を達成するためです。ここでは組織力を「組織の目的をより効果的または効率的に達成する力」としておきます。バーナードは組織を協力のシステム(cooperative system)と定義し、大きな石を動かすことを例として挙げています。石を動かすことであれば、目的はきわめて明確で、10人集まれば、5人の時の2倍の力が出るでしょう。しかし、現実には、公共機関にしろ、企業にしろ、目的はもっと複雑ですし、個人の仕事や担当する役割も多岐にわたっています。ですから、10人の組織が、5人の組織の2倍の力を持つとは限りません。組織のマネジメント次第で、3倍になることもあれば、1.5倍かそれ以下になることもあるのです。

コメント12件コメント/レビュー

(1)未曾有の大震災を被災し最低限の生活すら失う恐れのある個人が、なぜか、自己防衛のために暴徒化しない。(2)まさに国の危機という事態に際して政府に代表される組織のリーダーシップが、なぜか、いつまで待っても効果的に機能しない。この2点は海外から見ると驚愕に値する。もしかしたら、(1)と(2)はお互いに保管しあう関係なのかもしれない。(2011/05/17)

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「「だめトップ」と「強い現場」の悪循環を断ち切ろう」の著者

清水 勝彦

清水 勝彦(しみず・かつひこ)

慶應義塾大学大学院教授

東京大学法学部卒業。ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサスA&M大学経営学博士(Ph.D)。戦略系コンサルティング会社のコーポレィトディレクションを経て研究者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

(1)未曾有の大震災を被災し最低限の生活すら失う恐れのある個人が、なぜか、自己防衛のために暴徒化しない。(2)まさに国の危機という事態に際して政府に代表される組織のリーダーシップが、なぜか、いつまで待っても効果的に機能しない。この2点は海外から見ると驚愕に値する。もしかしたら、(1)と(2)はお互いに保管しあう関係なのかもしれない。(2011/05/17)

これまで野中先生はじめ多くの方が日本の組織の問題を指摘しながら、改善されていない。官僚は彼らに責任の及ばない法律を作り、大手町や丸の内の大企業は惰眠をむさぼり、人のせいにしてきました。226事件との世相を言われても、マスコミも反応は鈍い。せっかくの電源不足。マスコミも輪番で1日放送を停止。新聞も1日休むくらいのことで、政府のというか。霞が関の官僚個人や大手町の大企業の役員個人を究明するくらいでないと組織はしゃんとしないのでは。優れた企業は声も出さずに海外に展開しています。いら菅では、何ともならないと思うのですが。民主党はばらばら。偉くなるほど馬鹿を作る日本の組織は直らないのでは!(2011/05/17)

統合の視点というのは、忘れがちだなと改めて思いました。そして、統合する部門が機能していないケースが多いことも。セクショナリズムが必然とおきてしまうことが問題なんでしょうかねぇ? 今後の連載に期待します。(2011/05/17)

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