「伊東 乾の「常識の源流探訪」」

「2カ月後」のメルトダウン発表と内部被曝

正しく怖がる放射能【6】

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2011年5月17日(火)

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 東京電力は震災から2カ月目に当たる5月12日、福島第一原子力発電所1号機の圧力容器内で燃料棒が冷却水から完全に露出して過熱し、原形をとどめない形で溶け落ちてしまったこと、事故で圧力容器の下部にできてしまった複数の穴から水とともに格納容器に漏れた可能性がある、と発表しました。
(追記:こののち5月15日には、1号炉の炉心全体が3月12日午前6時50分ごろの段階でバラバラになり、一部の燃料はペレットまで壊れた形で圧力容器の底部に燃料が落下したと考えられる分析が発表されています)。

 定義があいまいになりやすくあまり使いたくない言葉ですが、端的に言えば1号炉は「全炉心溶解」という意味での「メルトダウン」を起こしたことになります。この状況とそこでの安全に関して、今、手元にある情報を元に考えてみましょう。ご質問などありましたら私のツイッターに直接いただくこともできます。

 前回、浜岡原発の運転停止の問題を扱ったところ「これは正しく怖がる放射能のシリーズと違う、政治的な問題だ」というコメントを幾つかいただき、率直に残念でした。いまだそのレベルで事態を見ていては、収まる事態も収まりません。

 よろしいでしょうか、科学的に正しく放射能を恐れるというのは、放射能漏れなどを起こさせず、未然に事故を防ぐべく万全を期すことを言います。

 前々回までの大半の内容は、残念ながら既に福島第一原発からかなりの量の放射性物質が出てしまった、そこで被曝を最小限に抑えるためには、という話を具体的にしていたわけですが、浜岡については幸いまだ大地震にも津波にも遭遇しておらず(しかし、今後それに遭う可能性が極めて高いと指摘されており)、そこで正しく放射能汚染を防止するために、という話を書いているもので、今までで最も徹底的に「正しく放射能を怖がる」内容を記したものと思っています。

 今回はそれとは逆に、大変に残念なことですが、福島第一原発1号炉では「燃料棒」が原形をとどめぬ形で崩壊し、中に納まっているはずの核燃料を収めている鞘、ペレットすら溶解したものがある状態で、格納容器下部にたまっているという、あっては困る状態に私たちが直面しているところから、どのような防御策が取れるかを考えるというものですが、起きてしまってからでは遅い、というのが、何より最初に声を大にして言わねばならぬことでしょう。

裸の核燃料をじゃぶじゃぶ水洗い

 東京電力は1号機の状態を「メルトダウン」であると認めて、格納容器を丸ごと水で満たす冠水作業の見直しに入る作業に着手した、と発表しました。いわゆる「水棺措置」ですが、このまま続けるわけには行きません。

 報道はこれに続けて、水棺作業が見直しになったため、冷却作業に遅れが出て、事故全体の収束が長期化、工程表の見直しは必至、といった話に流れていますが、果たしてそういう話だけ見ていれば良い問題でしょうか。

 東電が発表したデータに即して見てみましょう。5月10日までは長さ約4メートルの燃料棒の1メートル65センチほどが水面から出ており、あとは水の中に浸かっていると思われていました。

 ところが震災から2カ月目の5月11日に水位計を調整してみたところ、燃料棒が完全に水面より上に露出する、いわゆる「空焚き」の状態であったことが判明(「水位・圧力に関するパラメータ」の「D.S(ダウンスケール)」となっている部分)、過熱した核燃料が溶融して溶け落ち、灼熱した物質がたれてくるわけで、これにより「圧力容器」配管に穴があいて、溶融燃料が1段外側の「格納容器」内に漏れ出した可能性が高い、というものです。

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著者プロフィール

伊東 乾(いとう・けん)

伊東 乾

1965年生まれ。作曲家=指揮者。ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督。東京大学大学院物理学専攻修士課程、同総合文化研究科博士課程修了。松村禎三、レナード・バーンスタイン、ピエール・ブーレーズらに学ぶ。2000年より東京大学大学院情報学環助教授(作曲=指揮・情報詩学研究室)、2007年より同准教授。東京藝術大学、慶応義塾大学SFC研究所などでも後進の指導に当たる。基礎研究と演奏創作、教育を横断するプロジェクトを推進。『さよなら、サイレント・ネイビー』(集英社)で物理学科時代の同級生でありオウムのサリン散布実行犯となった豊田亨の入信や死刑求刑にいたる過程を克明に描き、第4回開高健ノンフィクション賞受賞。科学技術政策や教育、倫理の問題にも深い関心を寄せる。他の著書に『表象のディスクール』(東大出版会)『知識・構造化ミッション』(日経BP)『反骨のコツ』(朝日新聞出版)『日本にノーベル賞が来る理由』(朝日新聞出版)など。



このコラムについて

伊東 乾の「常識の源流探訪」

私たちが常識として受け入れていること。その常識はなぜ生まれたのか、生まれる必然があったのかを、ほとんどの人は考えたことがないに違いない。しかし、そのルーツには意外な真実が隠れていることが多い。著名な音楽家として、また東京大学の准教授として世界中に知己の多い伊東乾氏が、その人脈によって得られた価値ある情報を基に、常識の源流を解き明かす。

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