• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

そして誰もいなくなった~震災のどん底から這い上がった「観光バス」

震災に負けない人々(2)谷島賢イーグルバス社長

2011年5月17日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 震災による「消費の自粛」で、観光業はもっとも打撃が大きかった業種と言える。人々は外に出ることを控え、輸送業も低迷を続けている。

 だから、観光バスも手がけるこの会社は、ダブルパンチを受けているはずだった。

 イーグルバス。

 埼玉県川越市を本拠地に、周辺の日高町、ときがわ町で路線バス事業を手掛けている。だが、企業の歴史は「イーグルトラベル」という旅行代理店としてスタートしている。今でも旅行業は会社の柱の1つだ。その後、1980年にバス事業に進出、送迎バスや観光バスで少しずつ拡大してきた。そして、21世紀に入って念願の路線バス網を任される企業へと飛躍した。

 バスと観光。この「被災2業種」とも呼べる事業で、イーグルバスは3月の売上高が前年同月比でプラスになっている。

 なぜ、そんなことが可能だったのか。

 イーグルバスは、バス業界では有名な存在となっている。自社のバスがどこを走っているか、すべて把握するシステムを構築して、効率的な運行ダイヤを変幻自在に作り上げている。しかも、人口動態までとらえ、停留所が「顧客最大化」を達成する地点を分析するシステムまで作ってしまった。その結果をもとに、停留所を動かしている。

 そして赤字路線を収益改善する。その「奇跡」に大手バス会社が驚愕した。そして、「イーグルバスもうで」が続いている。「どうすれば、バス路線を収益改善できるのか」と。

 そのイーグルバスをしても、震災の打撃は大きかった。団体客は潮が引くように消えていった。そして、個人客も激減する。

 だが、イーグルバスは窮地から這い上がってきた。その時、彼らは平時では得られないものを手にしていた。

 一体、何があったのか。どうやって短期で復活を果たしたのか。

谷島賢イーグルバス社長

 イーグルバスのある川越に着くと、谷島賢社長は何事もなかったかのような穏やかな表情で迎えてくれた。だが、2カ月を振り返った「復活物語」は、変化に柔軟な者だけが生き残り、より強くなっていく、という自然界の摂理を想起させるストーリーだった。

内藤 地震が起きた当日はどこにいましたか?

「非常事態」の赤ランプが灯った

谷島 東日本大地震が発生したとき、ちょうど川越市にある本社で会議中でした。

 「大丈夫だから、大丈夫だから」

 社屋がしっかり建てられていたので、まず従業員にそう言って、落ち着かせようとしました。しかし、これだけ川越で揺れているのだから、震源はどうなっているのか、とても気になりました。もし東京だったら大変なことになる、と。その後、すぐに震源の情報が入ってきて、東京でなく東北地方だと分かりました。

 それから自社のバスの運行がどうなっているのか、心配になりました。すぐに、帰宅難民がでることが予想できましたから、そのための準備も急がなければなりません。そうこうしていると、運輸部の責任者が、非常事態に発令する「異常気象発令」を出しました。

 これによって、バス車庫の事務所に赤いランプが点燈します。これで、会社は緊急体制に入りました。

 渋滞がひどくなり、電車の運行も止まりました。うちは工場の送迎サービスも請け負っていますので、そこで働く従業員の帰宅に向けた応対に追われました。

 この時点で、燃料不足という問題が襲ってくるとは、想定していませんでした。これは初めての経験です。特に、路線バスを請け負っている埼玉県ときがわ町では、燃料がほとんど届きませんでした。かつてガソリンスタンドが少なかった頃は、バスは予備の燃料タンクを装備していました。しかし、今では、どこでも給油できる時代になっていますから、燃費効率を考えてタンクを小さくしています。これが裏目に出ました。燃料を確保するために、スタンドに延々と並ぶことが、重要な仕事になってしまったんですね。

 無力感に襲われました。結局、燃料がなければ、我々は何もできません。いくら「バス会社は公共交通を担う事業者だ」と言ってみても、燃料がなければ何の役にも立たない。そして、「燃料を運ぶトラックこそ、社会を支える存在なのだ」と痛感しました。

内藤 燃料不足や計画停電に、どう対応しましたか。

コメント5件コメント/レビュー

イーグルバスの判断を支持します。これからも地域を支えてください。(2011/05/24)

「究極のサービス」のバックナンバー

一覧

「そして誰もいなくなった~震災のどん底から這い上がった「観光バス」」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

イーグルバスの判断を支持します。これからも地域を支えてください。(2011/05/24)

全文興味深い記事だっただけに、前半の震災対応で燃料不足をどう解決したのかがわからず、残念でした。公開しにくい情報だったのかもしれませんが…(2011/05/18)

イーグルバスさんは震災前にTVの特番で、路線バスの乗合状況を数値的に把握・分析されて、運行ダイヤの効率化を実践されてきたという、社長の実行力と社員の対応能力で赤字から黒字へと変革された会社と聞いておりました。今回の地震で震災直後からある程度鎮静化するまでの、獅子奮闘ぶりが伝わり内閣周辺に出来なかった、情報の収集(管理統制の集約)が民間企業の生命線だと改めて感じ入りました。今後もイーグルバスさんの発展に期待します。(2011/05/17)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リクルートは企業文化そのものが競争力です。企業文化はシステムではないため、模倣困難性も著しく高い。

峰岸 真澄 リクルートホールディングス社長