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日本企業が危機管理で先送りしてきた2つの懸案

トップの感性とコミュニケーション力の向上が急務

  • 亀井 克之

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2011年5月27日(金)

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 3月11日に発生した東日本大震災──。地震、津波という自然災害に原発事故という社会災害が重なり合う未曽有の事態は、これまで社会や企業が前提としてきた安全の常識を次々と覆した。3月11日を境にどのような常識が新たに形成されていくのか。それに応じて社会や企業活動の安全マネジメントをどう変えていかなければならないのか。

 このコラムでは、自然災害と事故などの社会災害の両方に精通した防災や危機管理のプロを育成する場として日本で初めて誕生した関西大学社会安全学部の教授陣が、社会や企業の安全マネジメントについての新たな考え方や具体策を講義していく。

 今回は、日本リスクマネジメント学会の副理事長を務め、企業のリスクマネジメントに詳しい亀井克之教授が、震災を受けて見直すべき最大のポイントについて持論を展開する。

 震災後の対応で批判の矢面に立つ菅直人首相と東京電力の経営トップ。そして震災発生から1カ月もたたない3月末に来日し、東電福島第1原子力発電所の事故への全面的な支援を表明したニコラ・サルコジ仏大統領と、原子力世界最大手である仏アレバのアンヌ・ロベルジョンCEO(最高経営責任者)──。

3月末に来日して原発事故への全面支援を表明した仏アレバのアンヌ・ロベルジョンCEO

 3月11日に東日本大震災が発生して以来、「リスクマネジメント」や「危機管理」という言葉がたびたび話題に上り、そのあり方が問われている。では、今回の震災を機に何を見直すべきか。

 被災地に甚大な被害をもたらした大津波への対応や大規模停電への備え、生産拠点や調達先の分散などが既に既に論じられている。また、企業などの現場における迅速な対応が評価されてもいる。

 これらはもちろん重要なポイントだが、最大の焦点は上記の日仏のトップの対照的な姿に集約されている。それは、有事の際のリーダーシップとコミュニケーションである。

 この2つはリスクマネジメントにおける長年の懸案でもある。しかし、ここ数年はどちらかと言えば、中心的なテーマにはなっていなかった。特に企業は別のテーマへの対応に力を注いできた。なぜか。経緯を理解するために、日本におけるリスクマネジメントの歴史を少しひも解こう。

守りからリスクテークに転換し、企業経営の重要な要素に

 今や一般用語になった感さえあるリスクマネジメント。この言葉に日本企業の経営者が大きな関心を払うようになったのは、実はそう昔のことではない。企業経営の重要な要素として注目されるようになったのは、1970年代後半のことだ。

 それまでリスク管理と言えば、「安全管理」や事故や災害による損失を損害保険でカバーする「保険管理」を指していた。それがこの頃を境に変化する。海外進出などに際し、失敗した時の損失を保険で賄い切れないほど大規模な投資を行ってまで、事業に乗り出す例が増えたからだ。

 代表的な例が、イラン・ジャパン石油化学(IJPC)事業である。三井物産を中心とする日本企業5社とイラン国営石油化学が折半出資して合弁企業のIJPCを設立。ペルシャ湾奥深くの海岸を埋め立て、エチレンや13品目の石油化学製品を生産する巨大コンビナートを建設するという壮大な計画だった。

 工事は順調に進んだが、79年に起きたイラン革命で中断。さらに80年に勃発したイラン・イラク戦争で工事を続行できなくなり、事業は打ち切りとなった。その結果、三井物産など5社は海外投資保険ではカバーし切れない巨額の損失を償却することになった。

 この事例から学ぶべきポイントは、多大な損失を被るリスクがある事業は回避する方がいいということではない。むしろ逆だ。損失を出すリスクを冒してでも投資をしなければ、大きなリターンを得られない時代に入ったということである。

 つまり、企業におけるリスクマネジメントは、保険で損失をカバーする「守りのマネジメント」から、果敢にリスクを取ってリターンを狙う「リスクテークのマネジメント」、すなわち経営戦略としてのリスクマネジメントへと変貌を遂げたのである。

 失敗したら大きな損失を出す恐れがある事業に乗り出すかどうかを決めるのは、保険の契約を結ぶ財務部門の仕事ではあり得ない。決定を下すのは経営トップの仕事だ。ここで初めて、リスクマネジメントは企業経営の重要な要素になった。

 もっとも、経営戦略的なリスクマネジメントが企業の経営トップの重要な役割になったとはいえ、現場の最前線で働く社員までが組織的・全社的に取り組む形には至らなかった。

 その後、1984年にグリコ森永事件が発生。1995年には、1月に阪神・淡路大震災が発生し、3月に地下鉄サリン事件が起きて、「危機管理」が改めて注目される。だが、災害やテロに対する備えの強化にとどまり、企業の組織的・全社的な活動に発展する契機にはほとんどならなかった。

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