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「喉の渇き」こそが部下を鍛える

[2]モチベーションが高くなる環境を作る方法

2011年5月31日(火)

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第1回『部下に「与える」つもりで「求めた」失敗』から読む)

 「自分でやった方が早いよ」。リーダーとは本来「他人を通じてことをなす」のが仕事であるにもかかわらず、新任課長の僕はプレーヤーに逆戻りし、課長失格の烙印を押された。

 そして再び課長に登用され、リベンジとばかりに部下育成に熱心になった。しかし、その熱心さが仇となった。部下にダメ出し100連発を何度も続け、部下のスキル(知識・技術)ではなく態度(姿勢・意欲)に直接手を突っ込んだ。部下が嫌がる「心の深い部分」を否定し、無理やり変えようとした。そして部下から怖がられ避けられてしまった。なんということはない。僕は再び課長失格、となってしまったのだ。

 僕は悩んでいた。部下の態度を無理やり変えようとすると拒絶される。しかし、そこを変えなくては本当の意味での育成はできない。いったい、僕はどうすればいいのか、と。

上司の指導は部下の主体性を奪う

 今の僕ならば分かる。西洋のことわざにこんな言葉がある。「喉の渇いていない馬に無理やり水を飲ませることはできない」。僕はこの言葉を見た時に小学生時代の母親とのやりとりを思い出した。「ヒロシ!宿題やりなさい!」すると僕は必ずこう返していた。「うるさいなぁ。今やろうと思っていたのに、お母さんに言われたからやる気がなくなった!」。

 これはある意味、真実である。人は強制されたり、催促されると主体性を奪われる。自主的に取り組もうと思っていた事柄が「催促されてする仕事」つまりは「やらされ仕事」に変わってしまうのだ。しかし、若かりし日の僕にはそれが分からなかった。思う通りに動かない部下に我慢できず、指示命令し、催促し、何とか仕事を動かそうと思ったのだ。それをやればやるほどに、部下の「主体性」を奪っていることに気がつかなかったのだ。

 では、上司には何もできないのだろうか。部下の主体性を信じて待つしかないのか。僕は先のことわざをもう1度、しげしげと読み返した。すると、そこに人材育成のヒントが見え隠れしていることに気づいたのだ。先のことわざを言い換えるとこんなふうになる。

 「喉の渇いていない馬に無理やり水を飲ませることはできない。しかし、喉を渇かせることはできるし、喉が渇いた後に水を与えることもできる」と。そう、上司がすべき人材育成とは、部下の「喉を渇かせる」こと。そして「喉が渇いた」後で、部下が自ら「水を飲みたい」と思った時に「水を与えること」だと気がついたのだ。

 その時に、かつて本で読んだこんな公式を思い出した。

Behavior(行動)
= Personality(個人の資質)× Environment(環境)

 部下の行動は部下の資質と部下を取り巻く環境により決まる、という意味だ。そうか。僕がすべきは部下が、「目標達成をしたい」と思いたくなるような「環境」を作ることなのだ。やる気のない部下の心の中に手を突っ込んで「おまえはダメだ。生まれ変われ」と無理やり命令することではなかったのだ。

帰納法と演繹法から導いた結論

 どのようにすれば喉が渇くような「環境」を作れるのか。僕はモチベーションが高く、人材が育つ企業の環境を研究した。各企業が導入している事例からさかのぼって共通する法則を探す。つまりは帰納法だ。

 そして同時に演繹法でも考えた。こちらはモチベーション・リソース(やる気の源泉)にはどのようなものがあるのか、心理学やNLP(神経言語プログラミング)、コーチング、カウンセリング的セオリーを組織に当てはめて考えたのだ。

 そして帰納法と演繹法の双方から導き出された僕なりの結論は以下のようなものだった。

【1】 個人の「人生のビジョン」(ワクワクする未来像)を描き、チームビジョンとの重なりを部下と一緒に探す
【2】 ビジョン実現に向けての中間目標を設定し、その達成度を測る指標を定める
【3】 指標をリアルタイムに測定し途中経過を随時フィードバックする(「見える化」する)
【4】 週に1回メンバーと1対1で面談する。その際に部下をチェックするような取り調べ尋問をやらない。部下からの質問を待ち、それを支援する。部下が主役の面談とする
【5】 日常のあらゆる場面で部下一人ひとりを主役にする。自分は脇役に回る。会議の進行、意見を言う順番などあらゆる場面で部下を立て、自分は支援に回る
【6】 指示命令をやめ、質問をし、ヒントを与えて部下に自分で決めさせ、責任を持たせる
【7】 ナレッジを物語形式で流通させる。同僚、後輩の成功事例、エピソードを感動的な物語にして文章や朝礼で頻繁に数多く流通させる。それにより「オレも頑張るぞ」という心理的刺激を与えると同時に成功のノウハウ共有を同時に行う
【8】 成果があがれば誉めるという「成果承認」だけでなく、ただ存在するだけでも部下を認める「存在承認」を行う。具体的には部下を常に見守り、見守っていることを言葉で伝える。部下の小さな変化を肯定的にフィードバックする。

――など

 つまりは、オレ流を部下に押しつけるのではなく、部下流を支援するようにした。考え方を180度転換したのである。

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「「喉の渇き」こそが部下を鍛える」の著者

小倉広

小倉広(おぐら・ひろし)

組織人事コンサルタント

小倉広事務所代表取締役。組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。大学卒業後、リクルート入社。ソースネクスト常務などを経て現職。対立を合意に導く「コンセンサスビルディング」の技術を確立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官