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BCPで「想定外」の事態は必ず起きる

そこでカギを握るのは経営者の即応力

  • 高野 一彦

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2011年5月31日(火)

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 3月11日に発生した東日本大震災──。地震、津波という自然災害に原発事故という社会災害が重なり合う未曽有の事態は、これまで社会や企業が前提としてきた安全の常識を次々と覆した。3月11日を境にどのような常識が新たに形成されていくのか。それに応じて社会や企業活動の安全マネジメントをどう変えていかなければならないのか。

 このコラムでは、自然災害と事故などの社会災害の両方に精通した防災や危機管理のプロを育成する場として日本で初めて誕生した関西大学社会安全学部の教授陣が、社会や企業の安全マネジメントについての新たな考え方や具体策を講義していく。

 今回は、企業でコンプライアンス(法令順守)の責任者を務めた経験を持つ高野一彦准教授が、震災で注目を集めたBCP(事業継続計画)について論じる。計画に定めた通りに実行できたかどうかの検証が盛んだが、その議論には最も大切な視点が抜け落ちていると同准教授は指摘する。

 東日本大震災では、「想定外」の巨大地震や大津波が発生して甚大な被害が生じた。さらに、東京電力福島第1原子力発電所からの放射性物質の拡散や電力不足が、日本の経済や社会生活に大きな影響をもたらし、まさに「複合災害」の様相を呈している。

 ここ数年、日本企業の間で危機管理やBCP(事業継続計画)が随分と普及した。しかし、BCPはあくまでも「計画」である。危機が実際に発生した時には、経営者が刻々と変化する事態に対応して、臨機応変に意思決定をしなければならない。従って、企業の経営者は平時から「クライシス・シミュレーション・トレーニング」を実施し、緊急事態の発生に備える必要がある。

 本稿では、今回の大震災でBCPを軸とした日本企業の危機管理が十分に機能したのかどうかを検証するとともに、平時にどのようなクライシス・シミュレーション・トレーニングを行うべきかを考察する。

「計画」はかなり実施されたが…

 BCPは自然災害や事故などの社会災害が起きた時に、企業が損害を最小にとどめて事業の継続または早期再開を図るために、平時から備えておく計画である。

 BCPに先立って、事業継続という概念が最初に注目されたのは1990年代後半に起きた「コンピューター西暦2000年問題」、通称「Y2K」であろう。

 2000年1月1日にコンピューターが年月日を100年前と読み違え、世界中のコンピューターシステムが止まったり、誤作動を起こしたりする事態が憂慮された。そのような事態を回避するための対策に、企業や官公庁は躍起となった。

 BCPそのものが世間の耳目を集めたのは、2003年に中国広東省を起点としたSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行し、また2008年には鳥由来の新型インフルエンザ(H5N1)のパンデミック(世界的な流行)が懸念された時である。これを機に多くの企業がBCPの策定に取り組んだ。

 このように日本でBCPが普及する契機となったのは、主に情報システムがダウンしたり、感染症が世界的に流行して業務の遂行が困難になるリスクであり、地震をはじめとする自然災害のリスクではなかった。

 2007年の新潟県中越沖地震で調達先の企業が被災し、自社工場の操業がストップする事態を経験したトヨタ自動車など一部のメーカーを除けば、日本企業の多くは地震などの自然災害への対応に十分な経験を有しているとは言い難い。

 こうした状況下で起きた今回の大震災。それは、日本企業が策定してきたBCPが巨大地震に対する備えを十分に盛り込んでいたかどうかが試される最初の機会となったが、その結果はどうだったのだろうか。

 本格的な検証はこれからになるが、ここに企業の実情の一端をうかがい知る材料がある。東京・麹町にある経営倫理実践研究センター(BERC)が、上場企業を中心に実施した「東日本大震災の対応に関する緊急調査」の結果だ。104社にアンケートを実施し、33社から得た回答をまとめた。

 回答企業の約3分の1が「(震災で)甚大な被害を被った」と答え、軽微な被害まで含めると、90%以上の企業が被災した。

 しかし、大半は震災当日に社長などの経営トップを責任者とする災害対策本部や危機管理委員会を立ち上げていた。そして、従業員やその家族の安否を確認し、自社の施設や情報システムにおける被害の有無、顧客の状況把握に努めた。さらに電気やガス、上下水道などの社会インフラの被害についての情報も集約するなど、BCPに基づいた対応を冷静に実行していた。

 震災当日、社長が海外出張などで不在だった企業もあったが、事前に定めていた権限委譲ルールにのっとって混乱なく対応できたようだ。

 この調査では、回答企業の約半数が「5年以上前からこのような危機管理体制や組織を準備している」と回答していた。上場企業を中心にBCPやそれに基づく危機管理体制が定着し、危機への備えがしっかりとできていた様子がうかがえる。

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