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「東京のフレンチはうまい」の勘違い

フランスで成功した日本人シェフの軌跡

  • 安西 洋之,中林 鉄太郎

バックナンバー

2011年6月1日(水)

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 前回のキッコーマンの醤油に引き続き、食特集2回目だ。醤油は、海外市場に根づいた「日本食ではない調味料」だということを前回は見ていった。キッコーマンの醤油が売れるには、所得水準が高いという条件があげられ、北米市場の成熟化と欧州市場の急伸という2つの流れの背景を説明した。アジア市場は、欧米の両市場とも異なり、「醤油とは何か」を説明する必要がない。それだけに参入が簡単な市場とも思えるが、現地の醤油との差別化が難しい。大きくブレイクするには、もう少し時間が必要である。

 「海外における日本食の受け入れられ方」として寿司の事例で見たように、食は実にロジカルな世界である。ダイエット、ヘルシー、トレンディというキーワードが効いて、寿司が世界に普及している。単純に「日本で美味しいものが世界に通じる」というわけではない。世界各地で、そこに住む人の味覚は違う。その差を踏まえたうえでのプレゼンテーションが必要だ。

 今回は、この「舌の差」をどう乗り越えるかをテーマとしたい。

 松嶋啓介氏。1977年生まれ。仏ニースと東京・原宿にフランス料理レストランを経営するシェフだ。両店とも、ミシュランガイドで一つ星の評価を得ている。ニースを本拠地としながら、毎月のように日本に通う。インタビューの話題は、ご自身のローカリゼーションの経験から始まって、「日本」の見せ方に至るまで、広範なテーマに及んだ。

まず、フランス人になりきる

 松嶋氏がフランスに渡ったのは20歳の時だった。

 「まだ日本にいる18歳の時から、箸はいっさい使いませんでした。調理場での賄い料理でも、必ずナイフとフォークで食べました。米も口にしなかった。フランスに行って、『ご飯が食べたい』なんて言いたくなかったんです」

 おやっ、と思う台詞だ。最近、「日本人であることを活かすことが大事なんですよね。西洋人になるなんて無理なんだし」という諦めともつかぬフレーズが多い。そんな中で、松嶋氏の言葉はいまどき珍しい。

 これには、理由があった。東京における松嶋氏の師匠は、フランスから帰国する際に、「お前はもうフランス人だ」と言われたという。そのエピソードを聞いて、師匠を越えるには、まずフランス人にならなければいけない、と考えたそうだ。フランスに渡って、現地でブルターニュ出身のシェフと勝負するには、福岡出身では不利になる。フランス人になりきるしかない。

 フランス料理の本場で、フランス人を上回るシェフになる…。そのためには、フランス人のように振舞わないといけないと考えたのだ。日本人のフィロソフィーに邪魔されている暇はない。そのため、日本にいた時も、日本料理を学ぼうとは思わなかった。「日本人のやり方」を逃げ道にしたくなかったのだ。

 ローカリゼーションというテーマに、あまりにもぴったりはまるエピソードだ。私は思わず、こう尋ねた。

 「10年経って、松嶋さんの舌はフランス人の舌になりましたか?」

 彼は笑いながら、こう答えた。

 「フランス人が美味しいという味覚は分かります。しかし、フランス人の舌ではありません。フランス人の舌では、寿司の旨さが分かりませんからね」

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