「消費者はこう変わる 全国5000人意識調査」

消費のニューノーマル

第1回「感覚」と「現実」の大きな溝

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2011年6月7日(火)

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 自粛ムードも一服したかに見える個人消費だが、ここにきてマクロ経済予測は悲観的な見方を示し始めた。ボストン コンサルティング グループは日経ビジネス編集部と共同で、全国 5000人を対象に消費者意識調査を実施した。浮き彫りになったのが新しい消費者の姿。震災を機に得た「気づき」が消費行動を大きく変える可能性を秘める。
 個人はどう変わり、企業はそれにどう向き合うのか? そして消費を回復するために必要なマクロの処方箋は?

 東日本大震災から3ヶ月が経とうとしている。
 震災直後の報道からは、「自粛」や「不謹慎」といったキーワードと共に、消費は壊滅的なダメージを受け、マクロ経済全体への影響も深刻との印象を受けた。一方、日銀は比較的早いタイミングで、下方修正こそしつつ、11年度のGDP成長は、年後半の回復で0.6%成長になると発表していた。実際のところ、消費や景気の落ち込みは深刻なのか、限定的なのか――。

 ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、日経ビジネス編集部と共同で、震災前後の消費変化を捉えるべく、震災から約2ヵ月後の5月7日と8日、約5,000名を対象に消費者サーベイを実施した。対象は、地域、年齢構成、世帯年収などが、概ね日本の消費人口の縮図となるよう工夫した(表1)。

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 この調査を基に、「消費のニューノーマル」と題し、震災が消費を量的・質的にどう変えたのかをたどっていく。ズームインした事象を伝えるメディア報道からはなかなか掴めない、ズームアウトした「消費変化の全体像」や、その変化の内訳、変化の理由などを、定量的・具体的にお伝えしたい。

消費への影響は14兆円、マイナス3%

 まずは、消費変化の全体像を鳥瞰することから始めよう。消費は、経済活動全体を表すGDPの極めて重要な要素である。家計消費がGDPに占める割合は消費先進国ほど高く、アメリカで7割、日本は6割程度となる(ちなみに、中国では4割弱である)。表2は、家計消費約300兆円の品目ごとの消費が、震災後にどのように変化したかを示している。

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 消費の凹み具合は、大きく分けると、「重症(10%以上減)」が、ハレの消費(旅行)と一生もの・耐久財消費(家・クルマ)、「軽症(5-10%減)」は、その他の嗜好性消費(外食やギャンブル、ファッション等)、そして、それ以外はほぼ無傷、ということになった。結果、全体で見てみると、5月上旬までの変化が仮に1年続いたとして、14兆円のマイナス、GDPベースでは▲3%の変化ということになる。

 消費に関する報道の中心は、「ゴールデンウィークの旅行はキャンセルが戻らず」「東京ディズニーリゾートも、地方客に大幅な落ち込み」「百貨店は人影まばら」などであった。しかし、仮に、震災直後の最も厳しい状態がずっと続いたとしても、全体の落ち込みは▲3%にすぎない。今後、ニュースに占める震災報道が徐々に減り、生産の回復、エコ家電特需、節約疲れの反動などの動きが予想されることを考えると、年全体でここまで落ち込むことはないと見るほうが自然である。ただし、サプライチェーンの寸断による商品供給の影響には引き続き注視する必要がある。

 消費に関する報道では、「木の報道」が多く、「森の報道」は少ない。例えばGDP比では「衣食住」の中で、食がダントツで1/3を占め、次いで住が7%、衣は4%を占める、といった全体観は報道からは伝わってこない。被災による損失に関しても、「復興需要は内閣府発表で16−25兆円」という報道は何度となく目にしたが、ニュースはその分母(社会ストック総額)が約2,000兆円ということには触れていない。

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著者プロフィール

齊藤 直人(さいとう・なおと)
ボストン コンサルティング グループ パートナー&マネージング・ディレクター

齊藤 直人東京大学教養学部卒業。デューク大学経営学修士(MBA)。株式会社日本興業銀行を経て現在に至る。
消費財、流通、サービス、金融等の業界を中心にマーケティング・営業、サプライチェーン、組織、人事等の戦略策定・実行支援、PMI(M&A後の統合マネジメント)等のプロジェクトを手がける。



このコラムについて

消費者はこう変わる 全国5000人意識調査

 震災で消費はどうなるのか。日々伝えられる震災特需の好調ぶりと裏腹に、マクロ経済予測では個人消費の悲観論が台頭している。ミクロの視点で消費の実相を検証するのを目的に、日経ビジネス6月6日号では「消費者はこう変わる−全国5000人意識調査」を特集した。そこで浮かび上がったのが「利他消費」とでも呼べる新しい消費の形だった。
 特集では定量的な変化も捉えようと5000人を超える消費者を対象に、ボストン コンサルティング グループと共同で意識調査を実施した。本誌の特集ではお伝えしきれなかった調査内容について、3回にわたってリポートする。

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