• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

新興国生まれのビジネスモデルが世界を席巻する

製品だけにとどまらないリバースイノベーションを目指そう

2011年6月10日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 リバースイノベーションという言葉がある。ご存じだろうか。

 従来は、先進国がイノベーションを生む場であり、そこで作られたものを新興国市場に投入するというのが、多国籍企業の通例であった。ところが近年、逆方向(リバース)の流れができ、新興国で起きたイノベーションが、先進国に持ち込まれるということが見られるようになっている。この流れそのもの、あるいは、意図を持ってこういう流れを作ること、をリバースイノベーションと総称するようだ。

 当時は、そのような呼び方をされていなかったが、しばらく前のホンダの中国での合弁が、日本企業が関与したリバースイノベーションの初期の事例だったように思う。

中国の模倣メーカーを取り込んだホンダの戦略

 ホンダのスーパーカブは、世界中で二輪モータリゼーションを引っ張る、いわば最強のエントリーモデルだが、さまざまな国で勝手に模倣品を作るローカルメーカーが後を絶たない。従って、模倣品メーカーというのは、ホンダにとって、大変目障りな相手なのだろうと思っていた。

 そうしたら、ある時、中国の模倣品メーカーに50%出資し、合弁相手にしてしまう、ということが報道され、仰天した覚えがある。

 考えてみれば、敵を自らの陣営に取り込むという観点からは理にかなった戦略だ。さらに、このメーカーは、驚くほど低コストで、一定の品質のバイクを生産する能力があった。合弁会社を通じて、そのノウハウを獲得する意図もあったと言われる。

 この「中国での低コスト生産ノウハウ」は、一種の「新興国発のイノベーション」と考えることもできる。このノウハウを、先進国を含むほかの市場に投入することは、まさにリバースイノベーションそのものだ。

 ホンダの例は、先進国市場である日本で生まれた製品(のコピー)に関するリバースイノベーションの話だった。通常の方向でイノベーションが移転され、それが逆方向に戻る、という流れである。スーパーカブが誕生した1958年の日本が、明らかに先進国だったかどうかは疑問だが、その後の度重なる製品進化を考えれば、先進国からまず始まったイノベーションと言ってもよかろう。

最初から新興国用に作った米GEの成功

 最近、リバースイノベーションの典型例としてよく挙げられる米ゼネラル・エレクトリック(GE)の医療用診断機器の場合は、最初から新興国市場用に作った製品を先進国に投入したら、予想以上に受け入れられた、というケースだ。

 GEは、世界経済の成長ドライバーが中国、インドをはじめとする新興国にシフトしていく流れを先読みし、かなり早い段階から、将来の経営幹部クラスを何十人という単位で中国やインドに送り、その地域に合ったビジネスや製品を考えさせる、ということを行ってきた。この一環で出てきたのが、中国市場用の小型軽量の超音波診断機器だ。

 1990年代には、GEも米国や日本で開発した超音波診断機器を中国市場で販売していた。これは、1台10万ドルから35万ドルという高価なもので、かつ大型だったため、販売先はごく一部の大病院に限られていたという。

 そこで、中国のローカルチームを活用し、医療の恩恵を地方にも広めようという中国政府の方針に従って増加し続ける地方の診療所向けに、パソコン程度の大きさのポータブル商品を開発した(現在では手のひらに乗るサイズまで小型化されている)。

 このモデルは現地で大ヒットし、販売台数が拡大。結果として、2002年の発売当初、1台3万~4万ドルしたものが、2007年ごろには1台1万5000ドルまで価格を下げられるようになった。その結果、さらに売り上げが増えるという好循環が生じた。

 面白いことに、このポータブル超音波診断機器、今では日本を筆頭に先進各国で非常に売れ行きが好調だ。グローバル市場全体で3億ドル近い売り上げを達成していると推定されている。

 しかも、グローバル市場に拡販する際には、中国での小規模診療所用ではなく、救急車の車内搭載用や、大病院の緊急処置室向けとして売られているそうだ。

 中国現地の市場実態から考えて、価格とサイズの制約を乗り越える商品イノベーションを起こしたところ、それが先進国市場でも評価されるようになったということだろう。

 こういった「新興国での厳しい制約条件」を逆手に取って、先進国でも受け入れられる製品イノベーションを起こす、というパターンは、今後増えてくるものと思われる。

コメント2件コメント/レビュー

まさにオーストラリアのビジネススクールでこのテーマに関する授業で受けました。世界で勝つにはどんな組織が必要かという授業です。日本企業は、東京に全ての決定権をおいた、上意下達の縦構造に首を絞められています。技術的+経済的には、世界のトップクラスに仲間入りをしたいまでも、さらに発展するためには、新興国から謙虚に学ぶ姿勢を忘れてはいけないと思います。日本が長引く停滞から抜けだすには、世界から学びとる初心に帰る姿勢、そして逆にアジアのリーダーとして相手に施し、共に成長していく品格、若い世代がその二点を自覚することにポイントがあると思います。(2011/06/10)

「御立尚資の帰ってきた「経営レンズ箱」」のバックナンバー

一覧

「新興国生まれのビジネスモデルが世界を席巻する」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

まさにオーストラリアのビジネススクールでこのテーマに関する授業で受けました。世界で勝つにはどんな組織が必要かという授業です。日本企業は、東京に全ての決定権をおいた、上意下達の縦構造に首を絞められています。技術的+経済的には、世界のトップクラスに仲間入りをしたいまでも、さらに発展するためには、新興国から謙虚に学ぶ姿勢を忘れてはいけないと思います。日本が長引く停滞から抜けだすには、世界から学びとる初心に帰る姿勢、そして逆にアジアのリーダーとして相手に施し、共に成長していく品格、若い世代がその二点を自覚することにポイントがあると思います。(2011/06/10)

あまり知られていないんですが、リバースイノベーションっぽい事例が他にも。アキバや大阪日本橋の店頭に並ぶフィギュア。もう知らない人は少ないでしょう。ほとんどが中国で量産されているこれ、昔はほとんど日本生産で材料も異なり、プラモデルのような組み立てキットでした。しかも生産性が低いため高価で生産量も少量、ゆえにガレージキット(個人が車庫で生産する規模のキット)と呼ばれています。■GKは需要に対して供給が少なく、しかも国外にはほとんど出ないため、外国では現地業者が勝手に海賊版を生産販売していました。それがインターネットの普及による通販で国内にも流入、市場を荒らしていました。そこでGKメーカー(元は小さな模型販売店がほとんど)が始めたのが、そういう国での正規品の製造でした。現地の玩具工場に生産を発注していったのです。材料や製造方法も見直され、安価で生産性が高く、しかも塗装済み完成品となり、正規のライセンス品として日本のみならず海外にも出回るようになりました。そういう量産正規品が需要を満たしていったため、昔より海賊版業者は減少しました。(今は多分残り50人以下に)■今はその玩具工場が発注の生産数を作り終えた後、余った生産能力で本物そのままの海賊版を作り始めたりする事例が出てきて問題になりつつあったり(ライセンス証紙が貼ってないので、すぐに判るのですが)。これはフィギュアに限らず中国生産の高級ブランド品等で珍しくないトラブルです(高級ブランドメーカーでは、人件費高騰を名目に中国生産を止めるところも出てきています)。(2011/06/10)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

店長や売り場主任などの管理職は、パートを含む社員の声を吸い上げて戦略を立てることが重要だ。

川野 幸夫 ヤオコー会長