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【追悼】『ザ・ゴール』のゴールドラット博士が逝去

マネジメントの発展に偉大な足跡を残した師を振り返る

  • 岸良 裕司

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2011年6月15日(水)

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 日本では2001年に発売されてベストセラーとなったビジネス小説『ザ・ゴール』(ダイヤモンド社)の著者として知られる物理学者、エリヤフ・ゴールドラット博士が2011年6月11日正午、イスラエルの自宅で息を引き取った。享年64歳。家族と親しい友人に看取られての安らかな最後であった。

 私は博士ご本人に誘われて、ゴールドラットコンサルティングのディレクターとなり、その薫陶を受け続けてきた。亡くなる直前にもイスラエルに滞在し、ほかの仲間とともに指導を受けた。病気が悪化して出席できない博士に代わって、6月13日からニューヨークで始まった国際カンファレンスでセミナーの講師を務めるためだ。

 もっとも、病状の悪化にもかかわらず、博士の指導は精力的だった。午前10時から午後9時まで議論を交わした後、夕食を挟んで議論を再開したいと言われたりして、側近の我々の方が音を上げたほど。その姿が今もまぶたを閉じると脳裏に浮かんでくる。

ボトルネックを解決して全体最適を実現する「TOC」を提唱

 ゴールドラット博士の名前が世の中に広まったのは、1984年に出版した『ザ・ゴール』が世界的なベストセラーになったことがきっかけだ。これまで世界で1000万人以上が読んだといわれる。

 そのあらすじは、機械メーカーに勤める主人公のアレックスが、恩師である物理学者のジョナの指導を受けながら、採算悪化によって閉鎖の危機に直面した工場を再建していくというものだ。このビジネス小説を通して、博士は自ら考案した改革手法の理論「TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)」とその具体的な手法を解説した。

ベストセラー『ザ・ゴール』の著者として知られるエリヤフ・ゴールドラット博士。2002年6月に撮影(写真:村田 和聡)

 TOCは、組織には必ず「つながり」と「ばらつき」があり、そのためにどこかに全体のつながりを阻害する「ボトルネック(制約)」が存在するという前提に立つ。そして、制約に集中して、それを解決することで全体最適を目指すという実にシンプルな理論である(詳細はこの日経ビジネスオンラインで筆者が連載中のコラム「『ザ・ゴール』式で目指す 真のモノ作り再興」を参照していただきたい)。

 このTOCとその手法は、製造業の生産現場だけでなく、小売業や行政などさまざまな業種や分野に応用され、企業などの組織全体の改革にも用いられている。『ザ・ゴール』は世界各国のビジネススクール(経営大学院)で教材にも使われており、現在のサプライチェーン・マネジメント(SCM)の理論の基礎になったともいわれる。

 このベストセラーは、日本でのみ2001年まで出版が許されなかった。この逸話をご存じの方も少なくないだろう。そのため、ゴールドラット博士は日本嫌いという噂もあった。

コメント4件コメント/レビュー

ゴールドラット博士に謹んで哀悼の意を捧げる。TOCICO(TOC国際カンファレンス)の人物紹介欄に、「教育者、作家、科学者、そしてビジネスリーダー」とあった。本当に我われを「考えるように駆りたててくれる」偉大な教育者であったと思う。また、最後に語ったという4番目の「決して分かったとは言わない」も、教育者の面目躍如といったところだろうか。謹んでご冥福をお祈りする次第である。(2011/06/16)

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ゴールドラット博士に謹んで哀悼の意を捧げる。TOCICO(TOC国際カンファレンス)の人物紹介欄に、「教育者、作家、科学者、そしてビジネスリーダー」とあった。本当に我われを「考えるように駆りたててくれる」偉大な教育者であったと思う。また、最後に語ったという4番目の「決して分かったとは言わない」も、教育者の面目躍如といったところだろうか。謹んでご冥福をお祈りする次第である。(2011/06/16)

日経ビジネスオンラインの連載の中でも、最も実際的に参考にさせていただいています。いつも楽しく拝読しています。本日の稿には特に感銘を受けました。是非今後、最後に触れられた「(4)分かっているとは決して言わない」について、より踏み込んだお話を伺えればと思います。楽しみにしています。(2011/06/15)

本当に本当に返す返すも残念です。今も信じられない気持ちです。2009年の東京でのカンファレンスでお話させて頂き、厳しくも温かなお人柄に魅了されました。日本には岸良裕司さんがいらっしゃる。その事が今はとても心強く、たのもしく感じています。「分かっているとは決して言わない」とは「継続的改善」の真髄かもしれません。きっと博士は今頃は大野耐一さんと久々の再会を果たしてご機嫌かもしれませんね。博士の肩の上にはまだまだ届きませんが、いつかそこで考え、実践できるように努力し続けたいです。博士のご冥福をお祈り致します。(2011/06/15)

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