「東北の地酒を絶やすな!〜被災した酒蔵の復興への一歩」

阪神・淡路大震災から12年、灘での酒造りを復活

祖父の密かな夢を孫娘が実現

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2011年6月21日(火)

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 東日本大震災は、激しい揺れに加え、津波の威力に我々は驚愕した。一方、火災の恐ろしさを見せつけたのが、16年前の阪神・淡路大震災だった。炎は次々と家を焼き、酒蔵を焼いた。いくつもの酒蔵が酒造りを断念した。それから12年。酒造りの音が、ある灘の蔵で甦った。灘の地での酒造りを再開させたのは、まだ20代の女性だった。

早朝に発生した地震。瞬く間に火が走った

 阪神・淡路大震災が起きたのは1995年1月17日のこと。多くの酒蔵は、気温の下がる10〜3月に酒造りをする。年が明けて間もないこの時期は、酒造りの最盛期だった。

 兵庫県の「灘五郷」と総称される一帯は、上質の水や水運条件に恵まれ、古くから名酒の地として知られる。高級酒米である山田錦の産地として有名な三木市や三田市などにも近い。世界に知られる大手醸造会社から小さな地酒の蔵まで、51の酒蔵が集まっていた。

 その中の一つ、御影郷(みかげごう)で『泉正宗』を醸していた泉酒造は、250年という歴史を紡いできた酒蔵だった。江戸時代の宝暦年間に有馬で創業。現在の灘の地に移ったのは3代目のころだ。

木造だった酒蔵はすべて焼けてしまったが、この事務所はそのまま残った。西野信也社長は高松に住んでいるため、今は、藍さんがここの主だ。泉酒造は、第二次世界大戦でも空襲を受けた。しかし、その時も壊滅状態から復活した。
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 地震が発生したのは早朝の5時46分。泉酒造の社長、西野信也さんが当時の様子を語ってくれた。

 「ちょうど、泊まりの蔵人たちが起きてくる時間で、ストーブに火を入れたところだったんです。倒れたストーブから周囲へと火が回り、醸造蔵が炎に包まれました」

 瓶詰め設備のあった蔵もあっという間に延焼した。

 一方、貯酒庫では、酒の入った10トンにも及ぶ貯蔵タンクが飛び上がり、倒れ、傾いた。直下型の地震だったからだ。ほとんどすべてのタンクから酒が流れ出した。時を置かずこの貯酒庫を炎が襲った。蔵自体はコンクリート造りのため焼けずに済んだ。だが、タンクに残っていた酒は、火災によって庫内温度が上昇したため、品質が低下し出荷できない状態になった。

 残ったのは事務所棟と貯酒庫だけ。生き残った酒はほんのわずかだった。

 西野社長は、すぐに親戚の西野金陵に連絡を入れ、援助を依頼した。香川県高松市の西野金陵は『金陵』を醸す大手酒蔵である。西野金陵の蔵で『泉正宗』を造る許可を税務署から得た。両社は以前から技術交流をしており、西野金陵は泉酒造の酒造りのことを理解していた。西野社長は、自らの管理のもと、『泉正宗』の醸造を西野金陵に委託した。

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建物の多くが無惨な瓦礫となった
震災直後に立ち寄った滋賀県在住の画家、ブライアン・ウィリアムズ氏が、寄贈してくれた泉酒造の絵。
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著者プロフィール

伝農 浩子(でんのう・ひろこ)

音楽雑誌編集部、編集プロダクションを経てフリーランスに。
『るるぶ情報版』『地球の暮らし方』などの国内外のガイドブックに携わる。
取材やプライベートで訪れた国や地域は約40カ国以上。
著書は『ピーターラビットと歩くイギリス湖水地方』(JTBパブリッシング)、『ミス・ポターの夢をあきらめない人生』(徳間書店)ほか。
日経ビジネスオンラインで「東北の地酒を絶やすな」、nikkeiBPnetにて「日本の伝統を継ぐ外国人たち」「ニッポンを伝える人たち」を連載。
日本酒に関わる人たちのインタビューも行なってきた。
現在は日経BP社「復興ニッポン」のほか、ウェブサイトやPR誌などに執筆中。



このコラムについて

東北の地酒を絶やすな!〜被災した酒蔵の復興への一歩

東日本大震災によって、東北地方の酒蔵が大きな被害を受けた。酒蔵そのものが津波に流されてしまった酒蔵もある。
しかし、彼らは落ち込んだままではいない。復興に向けて一歩を踏み出している。加えて、酒を愛する人々が、酒蔵の復興を支援する動きも全国各地で始まった。これらの取り組みを紹介する。

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