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「震災後」をビジネスチャンスに変えよう

例えば高速道路の1000円終了さえも考え方次第

  • 武田 斉紀

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2011年6月27日(月)

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高速道路1000円で潤った地方はダメになってしまうのか?

 先週末の6月19日(日)をもって、高速道路無料化のための社会実験が終了した。申し上げるまでもない、直接的には東日本大震災の復興費用を優先させたためだ。土日祝日の上限1000円料金(ETC利用、普通車・軽自動車)の廃止で、観光客であふれていた地方が戸惑っている。制度がもたらしたものは何だったのか。

 19日のニュースでは、香川県のうどん店の様子が紹介されていた。片田舎に点在する製麺所を兼ねたうどん店の前の道路に、順番を待つ長蛇の列が続く。人気店では2時間待ちも出た。現地につながる高速道路である高松自動車道では最大11kmの渋滞となった。普段はもちろん、お盆でさえもすいすいと通れる道路だけに、その異常さが分かる。

 並んでいる人の多くが県外、特に瀬戸大橋(高速道路の瀬戸中央道)を渡り、本州からクルマでやってきた人のようだった。大阪、神戸、あるいは広島方面から、安い高速道路を利用して、わざわざ1杯100~200円(人気店でさえびっくりするくらいに安い価格だが、地元では常識)のうどんを食べに来ていた。

 インタビューに答える人たちは、「高速道路1000円が最後なので来た」と口をそろえる。「でも高くなったらなかなか来られなくなる」と残念そうだった。お店の人は、「来週からは3割くらいは減ってしまうのではないか」と心配していた。恐らく3割では済まないだろう。

 「讃岐(さぬき)うどん」は、1990年代くらいから広く知られるようになり、2006年に『UDON』という映画(主演:ユースケ・サンタマリア、小西真奈美)が上映されて全国区になった。ご当地グルメの走りと言ってもいいかもしれない。これをきっかけに瀬戸大橋を渡って本州から訪れる人が増えたが、ブレイクするほどにはならなかった。大きなハードルがあったからだ。そう、高速道路の料金だ。

 とりわけ瀬戸大橋の通行料金は破格だった。開業当時は普通車で5500円(その後10%値下げとなる)。いくら話題でおいしいといっても往復約1万円とガソリン代を払って、1杯100~200円のうどんを食べに行く気にはなれなかっただろう。それが2009年3月から土日祝日は片道1000円になった。週末や連休に、本州から一気に人が押し寄せた。

 香川県は全体が讃岐であり、讃岐うどんは県内どこでも食べられるのだが、本場の本場といえば瀬戸大橋から金刀比羅宮に通じる界隈だ。映画『UDON』の舞台にもなったが、知る人ぞ知る人気店は田舎道の果てにひっそりとある。まず製麺所があって、人々はその隣に据えられた小さなお店の前に並ぶ。順番が来てうどんを手にしても、混んでいると周りの農道に立って一杯をすすることになる。これもうどんの本場の庶民の味ならではの光景だ。

 その非日常性も面白いが、讃岐うどんはやはり安くておいしいし、名店ごとの味を食べ比べるという楽しみ方もある(四国新聞社の専門サイト『讃岐うどん遍路』などを参照ください)。だがそれも高速道路の割引があってのことだ。6月20日以降も土日祝日は終日5割引となるが、倍くらいかかることになる。うどん店だけでなく、地元の土産物店や観光地も大幅な売り上げ減は否めないだろう。

 それでも私は悲観することはないと見ている。たしかに高速1000円や無料化の継続が実現していれば、観光客は途絶えなかっただろう。ではこの2年間は単なるあだ花だったのか。いやそうではない。多くの人に本場の味と香川県の良さを体験してもらえたのだ。讃岐うどんの本場の味を知ってしまった人は、足を運べなくても食べたい気持ちはなくならない。これは2年間の実験がもたらしてくれた、測りしれない財産だ。

 財産を生かす方法はいろいろ考えられる。通販を始めてもいいだろう。本場と同じ味を家庭で味わえるように研究を重ねていけばいい。資金に余裕があれば、都会に出店する選択肢もある。ラーメンの世界では珍しい話ではない。震災によってもたらされた事態はピンチではなく、新たな売り方を考えるチャンスなのかもしれない。

 鳥取県境港市は、NHKのドラマ「ゲゲゲの女房」で有名になり、タイミングよく高速道路休日1000円効果が重なって、2010年の観光客数は過去最高の372万人を記録したという。地元観光協会は、実験終了の余波を心配しながらも前向きに対応策を打ち出している。人気の妖怪ブロンズ像のライトアップを増やしたり、着ぐるみの妖怪が練り歩く「妖怪パレード」の実施やバスツアーの誘致なども進めているという。

 ピンチはチャンスだ。

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