• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「スローガン」だけでは企業事故はなくならない

従業員の“危険行動”を“安全行動”に変えるには

2011年7月4日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所の事故は、日本企業にとって本当の安全管理や危機管理を学べる大きな機会だったが、ほとんどの企業は、それをみすみす逃している。JR石勝線(北海道旅客鉄道の幹線)のトンネル内火災など、小さなミスを発端として重大な事故を起こしている企業が後を絶たない。偽装表示などのコンプライアンス違反は枚挙にいとまがない。

「想定外」を学べずにいる企業

 私は、危機管理の最前線をいく米国でBBS(Behavior Based Safety)理論を学び、いち早く日本に持ち帰り「組織行動セーフティマネジメント」として体系化した。今、大小さまざまな企業がこの手法を取り入れ、自社の完全なる安全を構築しようとしている。

 インターネットが普及し、企業が起こした事故を穏便に隠し通すことなどできないことを知っている賢明な経営者やリーダーは、これまでの管理だけでは本当の安全は手に入らないということを理解し始め、動き出している。

 今回の震災では、「想定外」という言葉があちこちで使われた。しかし、安全管理、危機管理において想定内のことだけをしていたのでは話にならない。

 そもそも想定内のことが起きているうちは、それは想定内なのだからきちんと治めることができる。だから「自分の安全管理、危機管理は完璧だ」と思い込んでしまう。

 しかし、いつかはその想定内を外れたことが起きるかもしれない、というところまで想定していかなくては、真の安全管理はできない。訓練はしていたのに、いざというときに全く役に立たないということになる。

 今回、それがはっきりと露呈したのに、それでもなお、企業はいまだに同じようなことを繰り返している。

なぜ危険を犯してしまうのか

 事故を起こしたい、と考えている従業員はいない。誰だって安全に仕事を進めたいし仲間を怪我させたくない。それなのに、人が危険行動を取ってしまうのには、6つの理由がある。

(1)危険行動は甘い果実を伴う
  危険を犯してもでも効率がアップすれば、上司から褒められる、などが典型例。

(2)危険行動のほうがスムーズにできる
  片手のほうがハンドルを切りやすい、という人も多い。

(3)危険予防行動は継続させるのが大変
  ガンの危険が増すと言われても、タバコをやめるのは大変だ。

(4)「もしも?」の話に本気になれない
  避難訓練を本気でやっている人が、どれだけいるだろう?

(5)危険行動を取れる環境がある
  自動車内で携帯電話がつながるから運転中もかけてしまう。

(6)安全行動は習慣化するまでが大変
  運転席のシートベルト着用でさえ、習慣にするまで時間がかかった。

 こうした人間心理を踏まえたうえで、企業の安全な「行動」を作り出していく必要がある。しかし、ここで多くの企業が間違うのが、人の「行動」ではなく、「態度」や「意識」にフォーカスしてしまうことだ。

フォーカスすべきは「行動」

 安全も危機も、作り出すのは人間の行動だ。運転席に座ったとたんにシートベルトを締めるのも人間の行動だし、ビールを飲んだのについ運転してしまうのも人間の行動だ。それを、態度や意識に問題点を見いだそうとしているから、いつまでたっても危機は去らない。

 ある大企業で、1人の従業員が吸ったタバコの火の不始末で、工場が丸ごと焼失し、そのショックで工場長が失踪するという事件が起きた。ここで、企業が絶対に取り組まなくてはならないのは、タバコを吸った従業員の態度や意識を責めることではなく、従業員の危険な行動を安全な行動に変えていくことだ。

「小さな注意 大きな安全」
「慣れとうっかり 事故のもと」
「連絡の ミスで始まる 医療事故」

 こうした事故を防ぐために、企業内にはこのようなスローガンが掲げられている。しかし、これらの期待はかなえられることはない。それは従業員が悪いのではない。従業員の態度がなっていないからでも、従業員の意志が弱いからでもない。スローガンの内容があやふやで、どうしていいか分からないからだ。

「復興の経営学  ここから始まる企業再創造」のバックナンバー

一覧

「「スローガン」だけでは企業事故はなくならない」の著者

石田 淳

石田 淳(いしだ・じゅん)

ウィルPMインターナショナル社長

行動科学マネジメントの第一人者。行動分析、行動心理を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものにアレンジ、短期間で8割の「できない人」を「できる人」に変えると企業経営者などから支持を集める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授