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「対立」を解消できない日本企業の弱点

「二者択一」を「両立」に変えるTOC流思考法の威力

  • 岸良 裕司

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2011年7月7日(木)

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 東日本大震災によって生産停止の連鎖が日本全国や海外にも広がり、日本のモノ作りの効率化は行き過ぎだったと再考を促す声が高まっている。だが、それは本当に正しい指摘なのか──。

 本コラムでは、ビジネス小説『ザ・ゴール』(ダイヤモンド社)の著者として知られるイスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット博士が考案した改革手法の理論「TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)」とその具体的な手法を紹介しながら、実は効率化が進んでいなかった日本のモノ作りの実態を明らかにし、処方箋を提示していく。

 5回目の今回は、工場の生産管理などに使う情報システムの開発が暗礁に乗り上げてしまったメーカーの事例を引用しながら、本社と現場の意見が対立して効率的な経営を実現できない日本企業の実情を考察する。原因を分析するとともに、この問題を解決に導くTOC流の思考法について解説する。

 前回までは、メーカーの事例を引用しながら、製品の在庫管理や生産のリードタイムの短縮、新製品開発のプロジェクトマネジメントなど、主に製造業に特有の問題について取り上げ、TOCによる解決法を示してきた。今回は、製造業に限らず、日本の幅広い産業に共通する課題を取り上げる。

 その課題とは、利害の対立を直面してそれを解消できず、物事が前進しないという「二者択一のジレンマ」である。生産と販売、本社と工場──。異なる立場の利害が一致しないことから生じる対立は、どの産業に勤める人も日常の業務の中で直面している問題だろう。

 ビジネスの世界ばかりではない。政治の世界でも、東日本大震災の復旧・復興や財政再建、増税問題、TPP(環太平洋経済連携協定)の加入問題など、利害対立が「ボトルネック(制約)」になって解決の糸口すら見えていない課題が山積している。今回は、こうした利害対立を解決するために有効な思考法について、事例を交えながら解説する。

 今回の事例は、ファクトリーオートメーション(FA)機器メーカー大手のD社。同社は国内外で積極的にM&A(合併・買収)を仕掛け、業容の拡大とグローバル化を進めてきた。この戦略が功を奏し、急速に売り上げを伸ばしている。

 だが、M&Aをテコとした急成長の裏で、同社は大きな難題を抱えていた。買収後の社内の融合がうまく進んでいなかったのだ。

 特にD社の経営陣が頭を悩ませていたのが、買収によって新たにD社の傘下に入った国内外の工場がそれ以前の業務の進め方を温存し、社内に複数の業務フローが併存するようになっていたことだ。

 これでは全社的に生産性の向上を進めようとしても進めようがない。D社の売上高が拡大する一方で、収益性が一向に改善しないのも無理はなかった。工場の業務の標準化を推進して、全社的に生産効率を引き上げる。これが、D社の経営陣にとって懸案となっていた。

現場の要求を集約して標準化することを目指したが…

 そうした中、D社のある事業部で、工場の生産管理などに使っている情報システムが老朽化していることから、事業部全体でシステムを刷新するという話が持ち上がった。この事業部は、国内外で複数の工場を稼働させているが、各工場の業務の進め方はやはり異なっていた。

 この計画を聞いたD社の経営陣は次のように思い立った。「情報システムの更新をきっかけに、この事業部の各工場で異なっている業務の標準化し、それをサポートする情報システムも標準化して、全社のモデルにしよう」と。

 経営陣の意を受けた本社のシステム部門は、まず事業部の各工場の現場に出向いて、業務の進め方についてヒアリングをしながら、情報システムに対する要求を聞いていった。現場からの要求を集約して整理すれば、どの現場でも共通して使える標準的なシステムを構築できるし、それが業務の標準的な進め方をまとめることにもつながると考えたからであった。

 しかし、事は思惑通りには進まなかった。各工場の現場は自らの業務の効率を改善する独自のアイデアを持っている。それを実現するための要求はまちまちで、とても集約できるような状況ではなかったのである。

 要求の1つひとつを聞き入れていたら、情報システムの仕様は膨大なものになり、開発費も予算を大幅にオーバーしてしまう。

 予算内に何とか収めるため、本社のシステム部門は、各工場の現場から寄せられた要求を半ば強引に絞り込んでシステムの仕様を作り、各工場に提案した。ところが現場は首を縦には振らない。それどころか、「そんな仕様では、業務の効率が上がらないどころか、仕事にさえならない」と反発する。

 本社のシステム部門と事業部の各工場との対立は日増しに強まり、情報システムの開発は完全に暗礁に乗り上げてしまった。そこでD社の経営陣は我々に支援を仰いできた。

コメント5件コメント/レビュー

こんなシンプルで分かりやすい対立解消図は初めて見ました!思考プロセスの原点となる部分をこんなにわかりやすく解説される岸良さんはさすがです!!!これはビジネスの様々な部分で応用できるものですので活用していきたいと思います。(2011/07/07)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

こんなシンプルで分かりやすい対立解消図は初めて見ました!思考プロセスの原点となる部分をこんなにわかりやすく解説される岸良さんはさすがです!!!これはビジネスの様々な部分で応用できるものですので活用していきたいと思います。(2011/07/07)

学生の頃に聞きかじった「弁証法」というやつを思い出しました。対立があるからと、手をこまねいていてはいけない。対立こそが発展の源ということですね。(2011/07/07)

あまり新たな知見は得られなかった。当たり前の話。TOC特有の理論とは思われない。日本には、もともと“すりあわせ”という言葉もある。(2011/07/07)

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