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「対立」を解消できない日本企業の弱点

「二者択一」を「両立」に変えるTOC流思考法の威力

  • 岸良 裕司

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2011年7月7日(木)

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 このような場合、通常は開発中のシステムについて精査したうえで再び各工場の現場にヒアリングを行い、不要な仕様を見つけ出したり、開発費の低減策を考えたりするだろう。しかし我々が実行したのは、これとは正反対のことだった。現場の要求を聞くのをやめたのである

 代わりにD社のシステム部門とともに実施したのは、次のようなことだった。この事業部の複数の工場の中から1つを選び、そこの現場の協力を得て、製品の生産管理や在庫管理などのカイゼンに取り組んだのである。

 具体的には、本連載の2回目)で紹介した在庫削減手法の「ダイナミック・バッファー・マネジメント(Dynamic Buffer Management)」(以下、DBM)や、3回目)で取り上げた生産改革手法の「ドラム・バッファー・ロープ(Drum Buffer Rope)」(以下、DBR)を導入して、従来の業務の進め方を見直す。そして、工場が生産の指示を受けてから製品を納品するまでの生産リードタイムの短縮と完成品在庫の削減を目指した。

 こうした業務の進め方の見直しに応じて、新たな情報システムを同時に作り込んでいった。その結果、半年後に生産のリードタイムと完成品在庫をともに半減させることに成功した。

 この後に何が起きたか。ここまで読み進まれた方はもうお気づきかもしれない。そう、生産リードタイムと完成品在庫の半減という成果に目を見張った事業部のほかの工場がこぞってDBMやDBRを採用してカイゼンに乗り出したのである。

 それを実行するには、システム部門が新たに構築した情報システムが欠かせない。システムの導入も自然と進んだ。

 この動きは、事業部の中だけにとどまらず、D社のほかの事業部にも広がった。その結果、同社の懸案であった業務フローの全社的な標準化は、実現に向かって大きく前進している。

 それだけではない。買収前の業務の進め方が温存されたことで、実は情報システムも既存のものが残り、社内の複数の異なるシステムが併存して、システムのランニングコストがかさんでいた。この問題も、システム部門が新たに構築した情報システムの採用が広がることで解消され始めたのである。

 さらに関係者を驚かせる効果もあった。生産リードタイムの短縮や完成品在庫の削減によって浮いた資金が、情報システムの更新に必要な費用を大幅に上回ったのだ。その結果、情報システムを全社的に刷新する投資を、現場のオペレーションの改善によって捻出したキャッシュで賄うことが可能になった。

雲散後の晴れ間に解決策を見いだす「クラウド」

 なぜ我々は、現場にヒアリングすることをやめて、全く異なるアプローチを取ることができたのだろうか? それは、我々がTOCで「クラウド(Cloud)」と呼ばれるツールを使う思考法を適用して、D社の情報システムを巡る問題の解決に当たったからである。

 クラウドは略称で、正式な名称は英語で「Evaporating Clouds」という。雲(Clouds)を蒸発させて、モヤモヤをすっきりさせるといった意味合いを持つ。このクラウドは、『ザ・ゴール』の続編として日本では2002年に発売されたゴールドラット博士のビジネス小説『ザ・ゴール2 思考プロセス』(ダイヤモンド社)で初めて発表された。

 この作品の主人公は、『ザ・ゴール』と同じアレックス。前作で彼は、恩師の物理学者ジョナの指導を受けながらTOCを実践し、採算悪化から閉鎖の危機に直面した工場を再建した。

 『ザ・ゴール2』では、舞台が工場の操業から会社の経営に移る。アレックスは、ユニコという会社の多角事業グループ担当副社長として、担当部門の収益拡大を目指してらつ腕を振るっている。

 ところがユニコ社の業績が芳しくなく、大株主である社外取締役などから多角事業グループの売却を迫られる。そこでアレックスは売却を阻止するため、再びTOCを駆使して部門の収益性を高める方策を模索する。

 そして前作と同じく会社経営の「ボトルネック(制約)」を見つけ出し、それを解決することで事業を立て直していく。この作品でゴールドラット博士は、TOCが単なる生産革新の理論ではなく、生産以外の業務や会社の経営全体の変革にも応用できることを示した。

 この『ザ・ゴール2』で難題に次々と遭遇するアレックスが、解決策を考え出すために用いるのがクラウドである。

コメント5件コメント/レビュー

こんなシンプルで分かりやすい対立解消図は初めて見ました!思考プロセスの原点となる部分をこんなにわかりやすく解説される岸良さんはさすがです!!!これはビジネスの様々な部分で応用できるものですので活用していきたいと思います。(2011/07/07)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

こんなシンプルで分かりやすい対立解消図は初めて見ました!思考プロセスの原点となる部分をこんなにわかりやすく解説される岸良さんはさすがです!!!これはビジネスの様々な部分で応用できるものですので活用していきたいと思います。(2011/07/07)

学生の頃に聞きかじった「弁証法」というやつを思い出しました。対立があるからと、手をこまねいていてはいけない。対立こそが発展の源ということですね。(2011/07/07)

あまり新たな知見は得られなかった。当たり前の話。TOC特有の理論とは思われない。日本には、もともと“すりあわせ”という言葉もある。(2011/07/07)

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