• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「シュレーディンガーの猫」のリスク管理論

正しく怖がる放射能【12】

2011年7月5日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 今週の金曜日(7月8日)、東京大学で「震災、原発、そして倫理」という緊急討論会が開かれます。既にお伝えした通り、哲学の一ノ瀬正樹さんの問題設定と進行で島薗進(文学部宗教学)、中川恵一(医学部放射線科)、影浦峡(教育学部情報リテラシー)の皆さんとご一緒して、私も議論に参加する事になっています。

 その中で扱う、とりわけ基礎的な話を記したいと思います。当然ながら分かりにくい点が多いと思います。ツイッター などでもご質問を受けられますので、気軽にお問い合わせ下さい。

「ミクロな世界」と「マクロな世界」

 さて、私たちの住む世界は「自然法則」に支配されています。夢の中などは別として、現実の空間では誰もその支配を免れることはできません。

 りんごは木から落ち、磁石のN極とS極は引き合い、電流を流せば豆電球が光る。物理や化学、あるいはDNAなど生命科学の法則に私たちは従いながら生活しています。

 ところが原子や分子の世界は、ちょっと様子が違います。小さな小さな水素原子1粒を取り出し、よくよく観察してみると、同じ電気や磁気の働きが全然様変わりしているのです。ミクロな原子の振舞いは、私たちの住むマクロな世界、つまり「巨視的」な世界とは、かなり違っています。ミクロな世界の法則にしたがうと、私たちの常識とはずいぶんかけ離れたおかしなことがたくさん起こります。

 日常的に私たちが暮らしている限り、そうした「ミクロな世界」を垣間見ることはあまりありません・・・、でした。少し前までは。しかし最近はちょっと事情が変わってきました。

 例えば「レーザー」はミクロな物理法則に従う典型的な「風変わりな現象」なのですが、多くの人が見慣れてしまった観がありますね。 芸能人のコンサートから社内会議のプレゼンで使うレーザーポインター、医療のレーザーメスなどまで幅広く応用されています。

 あるいは、超伝導という言葉もしばしば一般報道で聞かれるようになりました。超伝導もまた、典型的なミクロのメカニズムに従う異常現象です。何しろ電流がいくら流れても抵抗がゼロで発熱もしない、あるいは電気が流れているくせに磁場は伝導体の中に入ってゆくことができない、などなどなど。

 あるいは、液体ヘリウムなど、超流動状態になってしまうと、へらへらとポットの壁面から這い出してきてしまいます・・・。机の上においたコップから水が勝手に這い出してきたらオカルトですが、これは物理的な事実です。

 こんな具合でミクロの世界での物質の振る舞いは、巨視的世界と全く異なります。マクロな世界を支配する物理法則は、ニュートン力学、マックスウェルの電磁気学、カルノーやボルツマンの熱統計力学などで記述され「古典物理学」と呼ばれます。これに対して、ミクロな世界のクレージーなルールは「量子物理学」の法則に従います。

 どうして今、こんな話を書いているのか。それは典型的な「クレージーなミクロの現象」である「核分裂反応」を利用する「原子力発電所」の事故が起きてしまったからにほかなりません。

「専門家」は本当に専門家か

 事故以降、さまざまな報道がなされていますが、こうしたメカニズムに踏み込んで行くものは、一部の科学誌を除いて一般メディアでは見かけません。しかし、原発事故を本質的に考えようとするなら、この根っこをすっ飛ばすことは、どうしてもできないと私は思っています。

 私がそう思う、もう1つの大きな動機は、2002年から2003年にかけて東京大学工学部システム創成学科シミュレーションコース、つまりかつての工学部原子力工学科の3年生を対象に量子物理を教えていたことにあります。

 先に結論を言ってしまうと「原子力の専門家」は必ずしも「原子核物理の専門家」ではなく、産業の枠組みを離れた放射性物質の振る舞いに対して、実はお手上げである可能性が高いと思っているからです。

コメント49件コメント/レビュー

伊藤氏がシュレーディンガーの猫について書くというので期待して読んだのですが、氏が良く理解していない書き方をしていることに失望しました。箱を開けなくても、猫は死んでいるか、生きているかは定まっています。まだ見ていないコインの裏表と同じです。量子力学的な状態の重ねあわせとはまったく違います。誤解しているのは、箱の中を見ることを観測と思っている(ように見える)ことです。量子力学的観測は、巨視系との相互作用のことです。箱を開ける前から波束の収縮は起こっています。この文章ではかえって誤解を拡散させてしまいます。続編を期待しています。(2011/07/13)

「伊東 乾の「常識の源流探訪」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

伊藤氏がシュレーディンガーの猫について書くというので期待して読んだのですが、氏が良く理解していない書き方をしていることに失望しました。箱を開けなくても、猫は死んでいるか、生きているかは定まっています。まだ見ていないコインの裏表と同じです。量子力学的な状態の重ねあわせとはまったく違います。誤解しているのは、箱の中を見ることを観測と思っている(ように見える)ことです。量子力学的観測は、巨視系との相互作用のことです。箱を開ける前から波束の収縮は起こっています。この文章ではかえって誤解を拡散させてしまいます。続編を期待しています。(2011/07/13)

放射線ってそんなに特別なんですかね? 水俣病や四日市ぜんそくだって、その地域に住んでいた人全員が病気になったわけじゃなかったと思うし。放射線に致死量がなく100シーベルト浴びても確率的に死なない人がいるなら特別かもしれないけど、水銀やヒ素と同じく致死量を浴びれば死にますよね? 致死量を浴びれば100%死ぬ、致死量に至らなければ確率的に病気が発生する。過去の公害や食品会社の中毒事件とどう違うのか教えてほしいです。ちょうど猫が終わったところですし。できれば四日市ぜんそくとの違い、水俣病との違いそれぞれで。四日市を挙げるのは、水俣病では発病しなかった人は魚を食べなかったといわれると困るので。空気なら、発病しなかった人は呼吸をしていなかったとは言えませんから(笑) ちなみに放射性物質は空中にあっては呼吸で、食品にあっては食事で口から入りますので四日市ぜんそくとの比較もおかしくないと思います。私としては大きいな違いは、放射線被害はイコール癌ではなく免疫が壊されるので他のあらゆる病気のリスクが高まるため、水銀=水銀中毒、みたいな簡単な図式が成り立たず、(放射線で免疫が壊されて)感染症で死んでも、(放射線でDNAが壊されて)死産や奇形が生まれても、(放射性物質で細胞が癌化して)癌になっても、放射線の影響じゃない人との区別がつかないから保障されないってことだと思いますが。なんにせよ、物理もいいですが、実際の過去の公害等と比べた考え方で納得させてください。水銀なんて水俣病の前は歯の治療に使われるほど安全だったんですよ。正しく怖がるなら、そんな安全な水銀を規制するのはなぜでしょうか。四日市ぜんそくと水俣病、それぞれと今回の事故による放射線被害の違いについて、是非正しい見解をお願いします。(2011/07/10)

関東の人は慣れたのではない、諦めたのだ、という論の者です。伊東先生の連載は必ず呼んでいます。ひとつひとつの意味は多少ですがわかります。こうすればもう安心、と思考停止できるポイントは存在しない、少しでも確率を下げるようにすべき、という全体的な志向もわかるような気がします。しかし、生活のあらゆることに放射線からの悪影響の確率を考え対策をとり続け、なおかつ仕事と両立するほどの知的負荷に、普通の人間は耐えられるものなのでしょうか。そこをなんとかしてもらうために、普通でない人、つまり知識人が存在してほしいという願いがあります。(2011/07/08)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

テスラのような会社と一緒にできないのなら、パナソニックはイノベーションを起こせないだろう。

津賀 一宏 パナソニック社長