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ガン告知に学ぶ放射線情報リテラシー

正しく怖がる放射能【13】

2011年7月13日(水)

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 7月8日、東大本郷キャンパスで行われた緊急討論会「震災、原発そして倫理」は、僕がかつて東大で経験したことのないガチンコ勝負・予定調和なしの、緊張感に満ちた、しかし大変に有益なものとなりました。

 この緊急討論の内容は、書籍化が現在検討されていますので、詳しい内容はそちらに譲るとして、ここでは全体のアウトラインと、そこで提起された問題についてご紹介できればと思います。

東大で御用学者の弊害を論ず

 緊急討論は、主催者である東京大学文学部、哲学教室の一ノ瀬正樹さんから、確率のものの見方から現在の状況を考える問題設定があった後、4人の提題者が問題提起を行いました。

 やや楽屋オチを記すなら、一ノ瀬さんからは1週間ほど前にパワーポイントを送っていただき、みんながそれを見た上で自分の準備を進めることができました。

 これに続いて、宗教学科の島薗進さんから戦後の医学、とりわけ疫学のもつ問題性の提起がありました。島薗先生のお祖父さんは旧制時代の東大医学部教授、お父さんも精神科医として重責を負われ、とくにシンポジウムの中で1945年8月、原爆投下直後の爆心地に脳のサンプル収拾に向かうよう命じられたあたりのお話は、非常に心に迫るものがありました。

 島薗先生ご自身、東大紛争の渦中、東大医学部長宅に下宿しながら通った教養学部理科3類(医学部への進学課程)から、文学部宗教学科に進まれたご経緯があり、医の倫理と疫学統計の非人間性を明確に指摘され、さらに戦後の多くの公害訴訟で、東京大学を中心とする学界が「御用学者」として機能してきたことを、落ち着いたご論旨で、しかし極めて明確に指摘され、私たちのあるべき姿勢を問われたのは、大変に心深く響くものがありました。

 これに続いて、医学部放射線科の中川恵一さん、僕、そして教育学部の影浦峡さん、と3人の提題が続きましたが、僕の話は主催側、哲学との議論を念頭に置いた、良くも悪しくも原理的な話題であったのに対して、中川さんと影浦さんの話は極めてリアルな内容で正面からぶつかり合うもので、正直なところ間に挟まれた僕はフリーのパネルトークの直前、いったいどうやって議論を建設的に進めてゆけるか、考え込んでしまいました。それくらい、僕を挟むお2人の話は、予定調和ゼロのガチンコ勝負の議論になっていました。

 何だかんだで僕も12年ほど東大におり、かなりの数のシンポジウムやパネルトークに出てきましたが、ここまでシナリオのない、正面衝突の議論の場は東大としてはかなり異例で、その点でも得がたい機会と思いましたが、議論自体は本当に緊張感に満ちたものになりました。

正面激突する議論

 東大病院放射線科の中川さんの本職は、ガンの放射線治療医です。関連の平易な本も多くお出しになっておられ、市民へのインフォームド・コンセントの重要性、つまり情報の周知共有の必要性を強調されます。

 中川さんは、例えば喫煙による発ガンのリスクと放射線の影響とを比較して、無用の不安に陥る弊害を説かれます。現場の医師の言葉として、一つひとつが説得力と重みを持っています。

 これに対して教育学部の影浦さんは、本職は電子計算機を駆使する言語学者で、高度な翻訳ソフトウエアなども手がけられますが、言語学で古典的なソシュールの翻訳などもある、極めてオーソドックスな科学者です。Tシャツ1枚のラフなスタイルでの登壇でしたが、あくまで言語テキストの分析に徹底終始する、として、上の中川さんが新聞やブログで発表された内容を一言一句検証。細かな矛盾点と見える部分を抽出して、不特定多数が読むメディア上の情報発信として、「不正確になっていないか」と舌鋒鋭く問いかけます。

コメント21件コメント/レビュー

この記事の結論、全貌を早く知りたいと思います。量子物理まで遡る放射能の本質を結局どう扱えば良いのか。しっかり読ませていただきます。以下、この場を借りて申し上げたいことがあります。 今、福島県の肉牛を全て流通させない決定がなされようとしています。屋外に放置された藁による肉牛の被爆の件です。放射能の安全担当者、専門家がいち早く、牛の飼料の扱いに警告を発するべきでした。牛の飼料にとどまらないでしょう。様々な経路で濃縮され、食料となり、体内に取り込まれる可能性です。それらの要素の監視、警告、啓蒙をいち早く行うことです。この国には、こころある専門家がいないのでしょうか。国は、全県出荷停止することになる意味を感じているのでしょうか。 最後に原発について安全性管理の上から、以下の簡単な結論が出せるのではないでしょうか。 「原発は、巨大なシステムで動いています。一度致命的な事故(メルトダウン)が発生すると制御不能に限りなく近い状況に陥ることを今回学びました。これをもって、どんなに安全対策しようが自然現象としての災害は、真に予測できるわけがなく、致命的な制御不能に陥る可能性がある原発を人間が扱うのは不可能であり、間違っている。」です。(2011/07/16)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

この記事の結論、全貌を早く知りたいと思います。量子物理まで遡る放射能の本質を結局どう扱えば良いのか。しっかり読ませていただきます。以下、この場を借りて申し上げたいことがあります。 今、福島県の肉牛を全て流通させない決定がなされようとしています。屋外に放置された藁による肉牛の被爆の件です。放射能の安全担当者、専門家がいち早く、牛の飼料の扱いに警告を発するべきでした。牛の飼料にとどまらないでしょう。様々な経路で濃縮され、食料となり、体内に取り込まれる可能性です。それらの要素の監視、警告、啓蒙をいち早く行うことです。この国には、こころある専門家がいないのでしょうか。国は、全県出荷停止することになる意味を感じているのでしょうか。 最後に原発について安全性管理の上から、以下の簡単な結論が出せるのではないでしょうか。 「原発は、巨大なシステムで動いています。一度致命的な事故(メルトダウン)が発生すると制御不能に限りなく近い状況に陥ることを今回学びました。これをもって、どんなに安全対策しようが自然現象としての災害は、真に予測できるわけがなく、致命的な制御不能に陥る可能性がある原発を人間が扱うのは不可能であり、間違っている。」です。(2011/07/16)

中川先生は多くの反対勢力から「パターナリズム(医療父権主義)」等の批判を受けており、このコラムでの引用もそのような誤解を引き起こしかねない内容に思えます。中川先生を引き合いに出すのであれば、きちんと「パターナリズム」ではないという反証を添えて明確に擁護するべきだと思います。結局伊東氏は中川先生が批判されている本質を理解されているわけでもなく、それに対する中川先生の経験に基づいたご覚悟も、表層的にわかったつもりでいるだけなのだと(7/14の島薗先生とのTweetを見て感じました)。中途半端な覚悟で戯作コラムに登場させられる中川先生もいい迷惑では?命の現場に詩人の居場所はあるのでしょうか。(2011/07/15)

読者コメントだけが意見の全てだとは思いません。伊東先生も頑張って連載を進めて下さい。私は、少し失礼な読み方かもしれませんが、過去の記事に遡ってみることにしました。 ●先ず、昨年11月24日付けの“菅首相は「もんじゅ」に政治生命を賭けられるか?”を今の時点で読み返してみると、いろいろと感じるところもありましたので、読者の皆様にも再読をお勧めします。 ●次に注目したのは、昨年3月30日付けの“米国最高首脳が今オウム実行犯に接見する理由”の中で「部分最適、全体崩壊」の社会構造的問題を指摘しておられる箇所です。「F:日本型組織は権威と権限、予算執行権などが分断され、局所局所は最適に見えながら、全体像は崩壊したものになってはいないだろうか?」、「自分に言えることで具体例を挙げるなら、私が属している東京大学は、上記のすべてで“クロ”判定です。」と真摯に述べておられます。原子力ムラ全員有罪という論旨に繋がりますが、このような社会的構造を醸成してしまった根源的な問題について、過日の討論会では究明・到達できたのでしょうか? 私は、そこから再出発しないと解決の道は見えてこないと思っています。 ●現在進行形の恐怖を正しく怖れる為にも、その恐怖を生み出した妥協の連鎖の本質を明らかにして頂きたいと希求します。科学的論理思考の中にリスク対便益といった政治経済論理が入ってきたところから科学者の妥協と堕落が始まったのでは・・・と恐れています。(私の亡母は開業医でしたが、医学界に対しても同様の疑念を持ち続けていたことを思い出します。島薗先生の言にある「医の倫理と疫学統計の非人間性」に通ずるところだったのだろうと思います。) ronpapa(2011/07/14)

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