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計画通りに行かないから経営がある

最終回 冨山和彦氏と語る「トップ」と「組織」【後編】

2011年7月26日(火)

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(【前編】から読む)

現場に責任を押し付ける構造

冨山 この前、あるビジネススクールで、今回の震災後のバス会社の対応を例に、シミュレーションしてみました。君が同じ状況だったら、バス会社の職員にどんな指示を出すかと聞いてみたのです。その時の高学歴のインテリの典型的な答えは、ボランティアを募るというものでした。

 ああいう場合、行きたいという人に手を挙げさせて彼らに行かせると言う。それは私たちに言わせれば最悪のやり方です。

 なぜなら、危機的状況を目の前にしながら行くという決断を組織として下すわけですから、そんな中途半端なことをやると、組織の中に亀裂が生まれるからです。手を挙げた人、挙げない人が分かれる。個別事情など聞き始めたら、聞いているうちに2~3日経ってしまう。ある人は家族がいる、ある人は家族がいない、そういった、いろいろな事情がある。それこそ、神様にしか分からないフェアネスの世界に入ってしまうので、そんなこと絶対にやってはいけないのです。

 とにかくその瞬間は、唯一の情報源である政府が、まだ安全であるということを前提に出動を要請してきています。だから業務命令で、これは通常出動ですと言い、何らかの危険業務でやるのではなく、普通の貸し切りバスを出すという範囲内で、すぐに対応しなければいけないんです。

 ボランティアを募るという人の言い分は、個人のリスクだとか、危険性がある以上、本人の判断を尊重すべきとかです。しかし、業務命令で行かせた場合には、その結果、すべての責任をこっちが背負わなければなりません。それを怖がっているんです。

 今回の政府の対応も同じで、要するに全部、要請、要請、要請でしょう。最後は住民の自主的判断だとか言い出す。

 そんなもの住民の意見なんか分かれるに決まっている。分かれるということは、本来この苦しい状況下で一体感を持って行動しなきゃいけない町や市に対して、わざわざ中が割れるようなことをやらせようとしていることです。

清水 結局みんなハッピーになるような解って、最初からないですね、ああいった緊急事態では。そんなものがあればトップはいりません。

冨山 トップの判断がなければ、下はまとまりません。

清水 もっと言えば、そこがルールの出番ですね。決まったことなんだから、やりなさいというルールです。ところが、ルールを作ること、執行することを怖がる傾向があります。

冨山 ルール通りに権限、権力を行使することを非常に逡巡するんです。権力行使した結果として、人の命にかかわるようなことが起きた時、その責任をあの世まで背負っていくのが嫌なんでしょう。

決断できるリーダーを作る

清水 では、決断ができない人、あるいは泥をかぶりたくない人はリーダーになってはいけないのに、なぜリーダーになるのでしょう。リーダーとなるべき人間を育てないといけないですが、1年、2年でそんな人が育つわけがなくて、10年、あるいは30年というレンジで取り組まなければなりません。結局、人材を見つけ、育てる仕組みをつくっていかなければならないけれども、そういう仕組みをつくるに当たって、今のリーダーはどうなんだ、といった話になってしまいます。

冨山 そのあたりはむしろ環境要因の方が大きいと思います。

 昭和20年代から30年代ぐらいは日本全体がめちゃくちゃな状況だったから、その当時のリーダーの人たちはしゃきっとしないと持たなかった。あの時代、戦争でめちゃめちゃな破滅をして、そこから立ち上がっていく過程で、彼らはいやがうえにもあの環境の中で鍛えられていった。自分で歯を食いしばって決断していたわけです。だから、その世代に人材がいたから、というわけではないでしょう。

 上の世代がどうしようもないということは、その次の世代を育てる上でマイナスにはならない。むしろ上がもう、どうしようもないことになっている今の方が、環境はいいと思いますよ。

清水 そういうものですか。

冨山 はい。大事なことは、人材をどういう環境に置くかということです。例えば国家経営が組織経営という側面を持っているとすれば、政治家だって若い時に、極めて厳しい条件でやらせた方がいいわけです。100人とか200人ぐらいのサイズの、今にも倒産しそうな小さな会社の社長をやらせた方が鍛えられるでしょう。

コメント4件コメント/レビュー

記事はリーダー論を指すのではなく、何がリーダーかという点で全く同意できます。「むしろ人間的に立派な人、とても正直で、誠実で、ヒューマニストで、という良い人は、不幸をつくります。だいたいそういう人がリーダーになると組織は滅び、多くの人が困る。間違いなくそうですね。」は組織運営では、如何なる命令も実行しなければ意味が無く、決断と責任を負うことがリーダーだという理解に立ち、かつて儒教思想がもたらした「仁義」の弊害をまさに良く理解された意見だと思います。リーダーに必要なのは責任・権限・身分保障であり、リーダーになる人間に責任を負う覚悟さえあれば誰にでもリーダーが勤まるのがリーダーの意味です。だからリーダーに必要な個人的な資質は「真摯さ」だけです。(2011/07/27)

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「計画通りに行かないから経営がある」の著者

清水 勝彦

清水 勝彦(しみず・かつひこ)

慶應義塾大学大学院教授

東京大学法学部卒業。ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサスA&M大学経営学博士(Ph.D)。戦略系コンサルティング会社のコーポレィトディレクションを経て研究者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事はリーダー論を指すのではなく、何がリーダーかという点で全く同意できます。「むしろ人間的に立派な人、とても正直で、誠実で、ヒューマニストで、という良い人は、不幸をつくります。だいたいそういう人がリーダーになると組織は滅び、多くの人が困る。間違いなくそうですね。」は組織運営では、如何なる命令も実行しなければ意味が無く、決断と責任を負うことがリーダーだという理解に立ち、かつて儒教思想がもたらした「仁義」の弊害をまさに良く理解された意見だと思います。リーダーに必要なのは責任・権限・身分保障であり、リーダーになる人間に責任を負う覚悟さえあれば誰にでもリーダーが勤まるのがリーダーの意味です。だからリーダーに必要な個人的な資質は「真摯さ」だけです。(2011/07/27)

「むしろ人間的に立派な人、とても正直で、誠実で、ヒューマニストで、という良い人は、不幸をつくります。だいたいそういう人がリーダーになると組織は滅び、多くの人が困る。間違いなくそうですね。」これには一体如何いう根拠があるのだろうか。。。(2011/07/26)

カルロスゴーン氏は日産の危機にやってきて、それを見事に対処したがゆえに真のリーダーであり、年収何億得ようともそれは氏に見合った金額であり、危機にあって病院に逃げ込む人物がリーダーの立場に着くのであれば、たとえ数千万の収入であろうと多すぎると考える。(2011/07/26)

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三品 和広 神戸大学教授