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失敗の本質~小さなミスが重なり大規模トラブルにつながった

震災直後、混迷の10日間を振り返る

  • 大和田 尚孝

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2011年7月20日(水)

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 費用がかかるのを嫌って設備の刷新を怠る。東日本大震災の影響で老朽化が進んだ設備にトラブルが発生する。非常事態への準備が足りず緊急対応が後手に回る。経営陣が大胆な決断を下せず、そのためにトラブルの影響がどんどん広がる。経営トップが責任を取り辞任する。一連の対応が元で、顧客や世間からの信頼を失う――。

 福島第1原子力発電所の事故における東京電力の対応をまとめると、このように表現できるだろう。実は東日本大震災の直後、これとよく似たことが起こった。みずほ銀行のシステム障害である。被害の程度は原発事故ほどではないものの、みずほ銀行のシステム障害には福島原発事故との共通点が多い。

 みずほ銀行は、費用がかかるのを嫌い20年以上にわたって「勘定系システム」の刷新を怠った。勘定系システムとは、預金、融資、為替といった業務を処理する、大型コンピューターを使った中核システムのことである。

 東日本大震災の3日後、義援金の振り込みが集中したことをきっかけに、老朽化した勘定系システムの「弱点」が表面化、振り込み処理の遅延やATM(現金自動預け払い機)の全面停止を招いた。経営陣は「店舗の休業」や「ATMサービスの休止」など、障害の復旧に必要な措置を決断することができず、ゆえにシステム障害の影響が拡大。10日間にわたって混乱が続いた。

 東日本大震災の直後、みずほ銀行のシステムに何が起こったのか。改めて振り返ってみたい。

振り込みが殺到し、トラブルが発生

 東日本大震災から3日たった2011年3月14日午前10時過ぎ、みずほ銀行のある口座に、義援金の振り込みが殺到した。この口座はテレビ局が義援金の受け付け用に設けたもの。テレビ局が募金を呼びかけたのがきっかけだった。

 義援金の振り込みは、午後3時を過ぎても押し寄せ続けた。午後3時以降に受け付けた分は翌日扱いとなる。これらの振り込みデータについては、翌日の振り込み処理に備えて、夜間に一括して準備処理をする。

 午後10時7分、この一括処理が異常終了した。振込件数が、勘定系システムに設定されていた上限値をオーバーしたのである。本来であれば、一括処理を実行する前に、振り込み件数が上限値を超えていないか、チェックする仕組みを設けるべきである。ところが、みずほ銀行は、この仕組みを設けていなかった。

 しかも、勘定系システムの運用拠点で作業に当たっていたシステム担当者は、この上限値の存在を知らなかった。みずほ銀行の情報システムは稼働から23年が経過しており、情報システムの中身に詳しい担当者がほとんど居なくなっていた。

 みずほ銀行のシステム担当者は上限値を引き上げた後、一括処理を再実行した。だが、再び異常終了してしまった。1度目の異常終了によって、一部の振り込みデータが欠落してしまっていたことが原因だった。 通常であれば、ある処理が異常終了してもデータが欠落することはない。ところが、みずほ銀行のコンピューター・プログラムの作り方などに問題があり、あり得ないはずの出来事が起こってしまった。

 欠落したデータの復元に8時間を費やした。これが新たな問題につながった。復元作業に時間をかけすぎたため、翌15日のオンライン処理――ATMや店舗の窓口端末を利用した現金の引き出し、振り込みなど銀行の最も基本的なサービスを提供するための処理――を始められない可能性が出てきたのだ。午前9時までにオンライン処理を始めないと、店舗で融資や振り込みなどのサービスを通常通りに提供することができない。

 みずほ銀行の勘定系システムは、夜間の一括処理(バッチ処理)を終わらせないと、店舗でのオンライン処理を始められない作りになっていた。

 「夜間の一括処理で問題が発生しています」。システム担当役員の萩原忠幸常務執行役員(当時、以下同)は、15日午前3時30分頃に初めて、システム担当者から障害の報告を受けた。システム担当役員が障害発生を知るまで、振り込みが殺到し始めてから17時間がたっていた。

 15日午前5時、萩原常務は午前9時の店舗開店までにオンライン処理を始めるよう、システム担当者に指示した。この指示は「一括処理よりもオンライン処理を優先せよ」という意味である。「一括処理の復旧にとらわれるあまり、システム障害の影響が広がってしまうことだけは避けなければならない」。萩原常務は、こう考えたのであろう。これは正しい判断である。ところが、皮肉にもその判断がシステム障害の影響範囲を広げることになった。

 みずほ銀行は結局、15日午前9時に店舗を開いたものの、融資や振り込みなど一部のオンライン・サービスを始めることができなかった。オンライン処理の準備にてこずったためだ。オンライン処理を伴うサービスを開始できたのは、開店から1時間25分後の午前10時25分のことだった。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長