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なでしこと長友に通じるもの(前編)

絶対のストロングポイントを伸ばす

2011年7月21日(木)

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 サッカー女子ワールドカップでのなでしこジャパン優勝は本当に感動的だった。被災地の方々や日本を元気にしたいという強い意志、日頃の恵まれない女子サッカーのプレー環境を変えるという使命感。僅かなやっかみや妬みさえも全く入る余地のない彼女たちの姿勢は、世界一という結果以上に伝わってくるものがあった。

 体格ではるかに勝る強豪国相手に、日本のスタイルで戦い抜いた日本選手たちに世界も驚きを隠さなかった。大会当初は殆ど注目されない中で、格上の女子サッカー先進国を次々に倒して世界の頂点に上り詰めた彼女たちは、さしずめシンデレラともいえる。

 今回の彼女たちは、エリートとして全てを与えられて育てられることが、世界で戦う、いや“闘う”上で絶対的なアドバンテージにはならない、ということを示してくれた。

 では何が必要なのか。日本サッカー界でのもう1つのシンデレラストーリー、「長友佑都」の秘密から解き明かしてみたい。

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 2007年、佑都は明治大学サッカー部でプレーしていた。さらに言えば、大学1年生の時にはレギュラーではなく応援席で太鼓を叩いていた。その選手が、3年後にサッカー大国イタリアのセリエA(1部リーグ)のACチェゼーナ、翌2011年にはインテル・ミラノへ移籍した。

 インテルホームスタジアムのジュゼッペ・メアッツァでは、8万人の観衆が熱狂し、試合の実況が全世界にテレビやインターネットで配信される。その世界的なビッグクラブで長友は、昨シーズン終盤に早くもインテルの左サイドバックとして確たる地位を確保した。今シーズンも新監督の下でレギュラー定着のための練習に明け暮れる日々が始まっている。

 エリート街道とは一切無縁。中学、高校時代も無名、大学1年生の時には試合時太鼓を叩いていた普通の大学生が、わずか4年後に世界最高峰のクラブでレギュラーを勝ち取ったのは何故なのか。

 私が接して来た多くの選手のなかでも、彼は他の選手とは少しだけ違っていた。それはほんの僅かな違いに見えることであったが、実は大きな差であった。

「海外でプレーする」という明快な目的意識

 佑都との出会いは2007年5月に遡る。

 当時私はU-17日本代表監督を務めていた。前年(2006年)U-16でアジアのチャンピオンになり、U-17ワールドカップを目指すことになってからは、ずっとプロのサテライトチーム(若手)と試合を組んでもらっていた。

 その中のFC東京サテライト戦。格上相手に本気で臨み、優勢に試合を進めていたが、左サイドだけは勝手が違った。相手チームの右サイドバックに幾度となく突破されてしまう。駆け上がってくるスピードと頻度に付いていけないのだ。対策として山田直輝(現浦和レッズ)をボランチから左サイドに変えて抑えにかかることを余儀なくされた。

 そのとき、何度も駆け上がって来ていたのが佑都だった。当時、彼は明治大学3年生だったが、FC東京の練習生として参加していたのだ。
 試合結果は1対1であったが、佑都の印象は鮮明に残った。

 年が明けた2008年1月。私はFC東京の監督に就任した。時を同じくして大学4年生になる直前の佑都が、明治大学サッカー部を退部し、FC東京に入団してきた。

 明大2年時、サイドハーフからサイドバックにコンバートされ頭角を現していた彼は、当時の北京五輪代表スタッフである江尻篤彦コーチ(明大出身)に見出され、反町康治五輪監督にも期待をかけられていた。

 この頃の佑都はまだ特別な実績を残した訳ではなかったが、北京五輪の意識の高いメンバーと一緒に過ごす中で、「将来海外でプレーする」という目標を持つこととなる。その目標を達成するためには、22歳という年齢のうちに、国内最高峰のJリーグでプレーして自分を高めることがベストの選択だ、という明快な目的意識があった。

 近年最強と言われた明治大学での4年生時でのプレーを放棄してプロの世界に飛び込んで来るには、経済的に苦労をかけた母親のことも含め相当の覚悟があった。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長