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「信頼」を軸に企業と働く人の関係は変貌していく

守島基博・一橋大学教授が予見する方向性

2011年7月25日(月)

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 東日本大震災でサプライチェーンや物流網が寸断され、日本企業の多くは事業活動の停止を余儀なくされた。その反省から、新たに創造していくべき経営のモデルとは──。企業で経営再創造の最前線に立つ実務家の取り組みや識者の論考を通して模索していく。

 今回のテーマは、組織のあり方や社員の働き方がどう変わっていくか。震災は、人と人とのつながり、人間同士のきずな、働く人々と企業との信頼関係といったものの大切さを人々に思い出させた。そうした中、企業にとっては、緊急時に強い組織のあり方はどのようなものか、従業員をどう活かすべきかといった課題が浮上している。

 一方で、働く側の価値観にも変化が見え始めている。「何のために働くのか」を自問し、これまでの働き方を見直そうとするビジネスパーソンが増えているのだ。こうした状況を受けて、「企業と働く人の関係」はどう変わっていくのか。一橋大学で人材マネジメントを研究する守島基博教授に見解を聞いた。

(取材構成は、秋山基=ライター)

 「ボンディング(bonding)」という英単語をご存じだろうか。この言葉は、組織における人々のつながりやきずな、組織のメンバーが組織やリーダーに対して抱く信頼感を指す。

 これらは、組織を機能させるために欠かせない重要な資源なのだが、日本企業では長年、あたかも空気のように「あって当然」のものだと思われてきた。そして近年では、ボンディングをあまり重視しない企業も増えていた。

「契約の束」にシフトした日本企業

 背景には、米国流の経営の影響がある。米国流のファイナンスを重視した企業論では、企業を「契約の束」と見なす。株主とトップ、トップと幹部、幹部と社員という具合に、契約関係の束がたくさん集まってできているのが企業だというとらえ方だ。

 これに対して、企業は「信頼の束」だとする見方もある。株主はトップを信頼してお金を預け、トップは幹部を信頼して仕事を任せ、幹部と社員、さらには社員同士というように、信頼関係の束がたくさん集まって形作られているというとらえ方だ。

 平常時であれば、「契約の束」である企業の方が、効率性において勝る。上司が部下に指示を出す時、「この仕事を成功させてくれれば、ボーナスを出す」と言うだけで済むのであれば、人を動かすコストは明確だからである。

 一方、「信頼の束」を目指す企業は、ともすれば非効率に陥りやすい。信頼を構築するためのコストはいくらかかるのかが見えづらく、場合によっては、コストをかけすぎてしまうこともある。

 バブル崩壊後の90年代以降、日本企業の多くは、「信頼の束」としての性格を薄め、「契約の束」の方向にシフトしていった。例えば人材管理の非効率を退治するために成果主義が導入され、社員は自立を求められた。

 それは、集団主義に埋没していた個を解き放ち、創造性を呼び起こすためでもあったが、社員に自由を与える代わりに、自己責任で働いてもらう、自分のキャリアは自分で築いてもらうといった考え方が、企業側に広がっていった。結果として、あたかも個々の社員が企業と契約を結ぶような働き方が、あちこちで見られるようになった。

コメント3件コメント/レビュー

現状分析は素晴らしい。リーダー必要論も納得である。信頼を得るためにどうするか、の方法論に対する踏み込みがやや甘い。方法論は各論になるのだろう。千差万別となろうが、一つの例示でも良いので、方法論に踏み込んで欲しい。その時には、学者の目より記者の目と臭覚がものを言うと思う。(2011/07/25)

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いただいたコメント

現状分析は素晴らしい。リーダー必要論も納得である。信頼を得るためにどうするか、の方法論に対する踏み込みがやや甘い。方法論は各論になるのだろう。千差万別となろうが、一つの例示でも良いので、方法論に踏み込んで欲しい。その時には、学者の目より記者の目と臭覚がものを言うと思う。(2011/07/25)

▼文章全体の主旨的には賛同・共感するのですが、「契約の束」と「信頼の束」を、「両立しえないもの」とみなしているようなところには違和感を感じます。▼「信頼」という言葉のもと責任を曖昧にする風土は、結局のところ見せかけの信頼を生む原因になっていると思います。(いざという時に頼りにならない)▼「契約」だけでも「信頼」だけでもダメというか、「真の意味での信頼」が必要ということではないでしょうか。(2011/07/25)

非常事態の中でDemand Chain/Supply Chainを復旧・確保してゆくには現場指揮官の力量が必要なことは今回の震災で痛感された。一方現場の取組みの中から、さまざまな制約や阻害要因も明らかになってきている。危機を改革の契機に結びつけ事業を再構築してゆく上で国家や経団連のに失望した面も少なからずあるが、この教訓からの今後の心機巻きなおしに期待している。(2011/07/25)

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三品 和広 神戸大学教授