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意外に知らない「津波」の正体~夏休みに学び直すには最適な入門書

2011年7月26日(火)

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津波災害ー減災社会を築く
河田惠昭著
岩波新書
756円

 私は最近、全国の小中学校の校長先生の研修会で講師をやることが多いのだが、その冒頭に、津波に関してこんなふうに聞いてみることにしている。

 「先生たちは朝礼や始業式で何度も東北の『津波』被害の話をしていると思いますが…ところで、『高波』と『高潮』と『津波』の違いについて、はっきり説明できる方はいらしゃいますか?」と。

 すると若干名の勇気のある先生方は、周囲の先生と相談しながらこんなふうに答えてくれる。「風で起こるのが『高波』で、台風などの低気圧で起こるのが『高潮』。ここまでははっきり分かるんですが、『津波』は海底の岩盤の地震によって起こるというのが違いじゃないですか?」。

 この答えは間違ってはいないのだが、点数をつければ100点満点の50点。

 発生原因の違いはこれでいい。でも『津波』本来の性質の違いを指摘しなければ、なんで、あの強靭な防波堤・防潮堤までを破壊して、何キロメートルも陸地に押し寄せてくるかが分からない。

 かくいう私も、恥ずかしながら、この本を読んで初めて知ったのだ。

 発生から2カ月も経ってからのこと。4月から被災地に入っていたし、ラジオでコメントもしていたのだが、本当のことは知らなかった。

 『高波』も『高潮』も、どんなに高くなっても、それは海面の波の動きだけなのである。海水中にサメが泳いでいたとしても悠々としているはずだ。

 ところが『津波』は、海面から海底までの水の塊が数百メートルから1キロ幅で、そのままドーンと動く「水流」なのである。宇宙戦艦ヤマトの波動砲のように、ものすごい運動エネルギーが沿岸に押し寄せる。だから、コンクリートも打ち砕くのである。じっさい、サメも一緒に打ち寄せられた。

 「高い波」なのではない、高速で動く「水の塊」だ。私にとっては、これだけでも目からウロコだった。

 著者は言う。『津波は漢字で「波」と書かれているために、海岸に打ち寄せる波と同じであると誤解される。津波が湾内や港内に入ってきた場合には、波というよりは流れと考えた方が、その挙動を正しく理解できる』。

 あの東北の漁村の壊滅状況は、こうして解説されれば納得できよう。

 いまからでも遅くはない。夏休みに海に行った時でもいい。この本の60ページに非常に分かりやすい図解が掲載されているから、父親や先生から子どもたちに、あれは「波」ではなく「流れ」なんだと解説してあげてほしいと思う。

指摘が見事に当っていることの恐怖も

 この本は、予言の書でもある。

 昨年12月に出版されている。読み終えれば、読者は誰でも、あたかも3・11東日本大震災とその津波災害を予知していたかのような印象を持つであろう。

 その意味では、恐ろしい本である。

 著者は津波防災、減災の研究を30年以上続ける研究者で、現在は神戸市にある「人と防災未来センター」の所長だ。この本は内外の震災や津波の実態と人々の対処の仕方を分析した入門書として書かれたもので、発売時点ではけっして「予言の書」ではなかった。

 しかし、「まえがき」にはこうある。

 『近年の津波被害では、住民の避難率が大変低いことはすでに問題になっていた。しかも、年々これが低くなっているのである。「こんなことではとんでもないことになる」というのが長年、津波防災・減災を研究してきた私の正直な感想であり、一気に危機感を募らせてしまった。沿岸の住民がすぐに避難しなければ、近い将来確実に起こると予想されている、東海・東南海・南海地震津波や三陸津波の来襲に際して、万を超える犠牲者が発生しかねない、という心配である』

 この心配は、悲しいことに当ってしまった。

コメント3件コメント/レビュー

以前、別なコメントにも書いたが、東北地方には「一里塚」のような「津波塚」があって「ここより下に家を建てるな」と先人達の知恵が込められた財産があると言う。いつの間にか「先人の知恵の風化」が始まり、低地に家を建てることが平気で行われるようになった。家を建てた人が悪いのか、許可した行政が悪いのかを突き詰めてもしょうがないが、一人一人がもう一度考え直して見る必要があると考える。ただ、被災した人の中には、低地にもう一度家を建てたいという人もいるらしく、私の理解を超えている。今の自分の判断が、将来の末裔に津波の被害をまた経験させようとしている無謀な判断にしか思えないのは私だけだろうか。(2011/07/26)

「藤原和博氏が薦める夏休みに読んでほしい5冊」のバックナンバー

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「意外に知らない「津波」の正体~夏休みに学び直すには最適な入門書」の著者

藤原 和博

藤原 和博(ふじはら・かずひろ)

教育改革実践家

リクルートの敏腕営業担当から、都内で初めての民間出身の公立中学校の校長に転じた。斬新な手法で地域を挙げての教育体制を整え、校長退職後は全国にその手法を伝えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

以前、別なコメントにも書いたが、東北地方には「一里塚」のような「津波塚」があって「ここより下に家を建てるな」と先人達の知恵が込められた財産があると言う。いつの間にか「先人の知恵の風化」が始まり、低地に家を建てることが平気で行われるようになった。家を建てた人が悪いのか、許可した行政が悪いのかを突き詰めてもしょうがないが、一人一人がもう一度考え直して見る必要があると考える。ただ、被災した人の中には、低地にもう一度家を建てたいという人もいるらしく、私の理解を超えている。今の自分の判断が、将来の末裔に津波の被害をまた経験させようとしている無謀な判断にしか思えないのは私だけだろうか。(2011/07/26)

今回の地震・津波を陸前高田市の病院で被災し4階の病室でカーテンにしがみついて生還した津波災害研究家 山下文男氏の著書「津波てんでんこ―近代日本の津波史 」の方を紹介するべきなのでは?後は畑村洋太郎氏の失敗学関係の書物でも同様に三陸の津波災害の記録の保存や風化について書かれてますので一緒に読んでみてください。(2011/07/26)

津波動画を見て一番感じたのは「止まらない」でした。本当に海からいつまでも水がどんどん送られてきて、そんな置くまで入り込むのか!?と驚愕してましたからねぇ。あの映像は超一級の学術的資料とも言えます。(2011/07/26)

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