• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

愛のタクシーは会津と会社を救えるか?

最終回 収入を増やすためのタネを蒔き続けていく

2011年8月3日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 今回で「会津バス 再生への物語」の「第1シーズン」は最終回を迎える。初めにこの場を借りて7月末の新潟・福島豪雨での当社の状況をご報告したい。

 週半ばから降り続いた雨は、後半にかけて豪雨になった。まずJR磐越西線が運休、次いで高速道路の通行止めにより当社の高速バスも運休を余儀なくされた。道路確保のための自治体・警察・消防・自衛隊等の懸命の復旧作業にも助けられ、高速バスは比較的早く通常運行の体制に戻ることができた。ただ、一部の路線バスは南会津方面での陸橋崩落などの影響により、運休を強いられているルートもある。

 被害にあわれた方に謹んでお見舞い申し上げると共に、現在進行形で続いているこの災害復旧に向け、当社も強い気持ちを持って地域の足をしっかりと支えていきたい。

 まさに福島県は東側で震災・原発事故の被害、西側では今回の豪雨による災害と、以前にも増して厳しい局面にある。その中で、後ろを向いているだけでは何も始まらない。だが、前を向いて行動を起こせば、それが新たな動きにつながっていく可能性はある。最終回はそうした積み重ねを狙った営業施策の記録である。

 福島県会津若松市のバス・タクシー会社、会津乗合自動車(通称・会津バス)は企業再生支援機構の下、再建に取り組んでいる。だが、3月11日の東日本大震災で大きな影響を受け、当初に練った再生計画は大幅に見直さざるを得なくなっている。課題となっているのが収入増の施策だ。

 会津地域には白虎隊で知られる鶴ケ城、猪苗代湖、喜多方ラーメン、温泉などの名所・名物があり、観光地としてのポテンシャルは高い。県や市とともに観光活性化にかかわりながら会津バスの増収を実現していくというのが当初の計画だった。だが、東日本大震災でその目論見は狂ってしまった。地震と津波だけであれば、復旧・復興需要も取り込みながら回復していくことができたかもしれない。だが、東京電力・福島第1原子力発電所の事故で内陸の会津でも、放射能に対する不安が高まってしまったのは本当に痛手だった。

 だが、前を向くしかない。貸切バスツアー、日帰り旅行など、とにかく増収に向けた「タネを蒔き続けていく」ことが必要だ。

 期間が限られるとはいえ、震災後に確実な需要をつかむことができたのが、連載の第1回で紹介した避難住民向けの「一時帰宅バス」だ。すでに運行回数は30回を超え、一定の収入が得られる。観光客が減少し、貸切バスの売り上げが落ち込んでいる中、被災者に直接貢献しながら、収益も補えるのは大変幸いに思っている。

 会津若松市内の東山温泉には、福島第1原発が立地する大熊町の住民の方々が震災当初は2000人以上避難されており、被災者向けの近距離周回バスも運行してきた。避難所(東山温泉)と市役所、郵便局、店舗、コインランドリーなどを周回するバスで乗車賃は1回200円。7月半ばまでで、コンスタントに1日70人ほどの方にご利用いただいている。

 通常、バスの需要は通勤・通学の時間帯である朝と夕方に集中する「M字型」となる。だが、市役所・店舗などはその時間帯には開いていないので、被災者の方々の移動の需要は昼間になる傾向がある。そのため、支援バスは「M字型」の真ん中を埋める路線であり、限られた台数での運行を続ける当社にとっては稼働平準化の意味でも効果が大きかった。

 そのほか、避難所と学校の間を行き来する「スクールバス」も運行している。

避難所と学校の間を送迎するスクールバス

 今後は避難住民も仮設住宅への入居が本格化するので、これらの運行は段階的に減っていくだろう。被災者の方々に直接貢献しながら、一時的にせよ、震災後の大幅な収益減を多少なりとも補うことができたことは幸いだった。

「稼ぎ頭」の高速バス事業にテコ入れ

 今後、収入増に向けて力を入れていきたいのが高速バス事業だ。高速バス事業は会津バスの売り上げの3割を占める。高速バスの成功なくして会津バスの再生はありえない。

 会津バスは東京・新宿、仙台、新潟、県内主要都市(福島、郡山・いわき)と会津若松を結ぶ高速バスを計5路線運行している。その中でまず郡山便にフォーカスして対策を打った。

 郡山まで高速バスで行くと費用は片道1000円、所用時間は1時間10~20分。時間帯にもよるが大体30分に1便ほどのペースで出発する。これに対して、会津若松-郡山間をJRに乗って行く場合には乗車賃が1110円、所用時間は高速バスと大きく変わらず、便数は1時間に1本程度だ。そう考えていくと、郡山便の高速バスはJRに十分対抗できる競争力を備えている。だが、残念なことに十分にはその魅力が認知されていなかった(あとでも述べるが、会津バスにおける増収のキモは、企画の巧拙というより伝え方の巧拙にあった。そういう意味で、まず存在を知ってもらうことが極めて重要だった)。

JRと競合する会津若松-郡山間。会津若松駅前に「片道1000円」の看板を掲げた

 そこで、会津若松駅近くの観光案内所に「郡山1000円」と大きく書いた看板を立てた。電車に乗って会津若松に来た人に、「帰りはバスに乗ってみよう」と思ってもらうのが狙いだ。市内の会社や温泉、ビジネスホテルにもチラシを置いていただき、PRに努めている。

「会津バス 再生への物語」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「タイム・トゥ・マーケット」で売らないともうからない。

栗山 年弘 アルプス電気社長