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「うら若き難病女子、ご危篤となる」という軽いタッチで描く難病ホントの話

2011年8月2日(火)

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困っているひと
困ってるひと
大野更紗著
ポプラ社
1470円

 この本のことを最初に紹介してくれたのは、和田中(東京都杉並区立和田中学校のことです)の改革に絶大な貢献をしてくれた、現在はタイ在住の浦崎雅代さんだ。

 私のホームページ「よのなかnet」の「よのなかフォーラム」掲示板の常連なのだが、ある日、いきなり「ここまで笑える難病ヒストリーは、かつてよのなかにありえなかったと思うので」と投稿してきた。

 なんと著者自身は、この本の図書館での分類は「難病エンターテイメント」という分野にしてくれと要望しているというのだ。

 難病エンターテイメント?

 当事者以外がこんな言葉を口にしたら、それこそ人権系の団体やマスコミから何を言われるか分からない。

 でも、私は、恐いもの見たさもあって、早速アマゾンで注文することにした。

 浦崎さんは「日笑」というハンドルネームで出没する。実は、私はこの書評を書くにあたって初めて浦崎さんのブログに当ってみたのだが、これまでずっと「にっしょう」さんだと勘違いしていたことを告白しなければなるまい。ホントは「ひえみ」さんだったんですね(笑)、スイマセン。

 日笑さんは杉並区のある病院の緩和ケア病棟でスピリチュアルケア・ワーカーとして働いていた人で、現在は、タイのマヒドン大学宗教学部で(タイ語で)教えながら瞑想やスピリチュアルケアについての実践と研究をしている。こう書くとなんとなく宗教っぽい怪しげな感じがするのだが、信用できる人物なのだ。

 だから、速攻で本を読むことにした。 

 日笑さんが掲示板に投稿した書評。

 ビルマ難民を研究していた女子学生の大野さん。タイに留学したものの、フィールドワーク中に原因不明の病を発症。日本に帰国。でも病名すらわからず、身体は思うように動かずの日々。世界にほとんど症例がない難病とわかり、そこから彼女のサバイバルが始まる…そんなストーリーです。

 闘病記で「泣かせたい」著者はいっぱいいるかと思いますが、大野さんは、「笑わせ、楽しませたい」と言い切ります。とにかくいろんなことを考えさせてくれる本です。これ、中学生が読んだら、どういう感想を持つのかなあ

 私は一瞬、かつて介護関連サービスの会社をつくった盟友、ハンディネットワークインターナショナル春山満さんをイメージしてしまう。20代の時に筋ジストロフィーを発症して首から下が動かない浪花のど根性社長だ。介護機器で数々の特許を取り、三洋電機やオリックスをパートナーに、動かない体でベンチャー企業を育て上げた。『どないしましょ、この寿命』や『僕にできないこと。僕にしかできないこと。』の著書もある。

 同時に、乙武洋匡君の『五体不満足』もイメージの中に飛来した。こちらは教育改革の盟友なのだが、私が杉並区に引き入れるお手伝いをして、その後小学校で3年間(うち2年間は担任として)先生として勤めた経験が『だいじょうぶ3組』(講談社)に生きている。

 でも、どうも、この本は違うらしいのだ。

 著者紹介には、上智大学外国語学部卒で、在学中にビルマ(ミャンマー)の難民問題と出逢い、民主化や人権問題への関心からNGO(非政府団体)活動に没頭。大学院に進学した2008年、自己免疫疾患系の難病を発症する。現在も都内某所で生存中、とある。

 でも、その実態は、彼女自身が「はじめに」に記述する次のような言葉を読んでしまったほうが、理解が早いだろう。

 この、『困ってるひと』というタイトルに、「なんだそりゃ」とお思いになる方も多いだろう、そして、「あなた誰」と。

 わたしは、この先行き不安、金融不安、就職難、絆崩壊、出版不況、鬱の風が吹き荒れ、そのうえ未曾有の大災害におそわれた昨今のキビシー日本砂漠で、ある日突然わけのわからない、日本ではほとんど症例のない、稀な難病にかかった大学院生女子、現在二十六歳。(中略)

 この原稿を打ち込むキーボードをたたいている今も、一日ステロイドを二十ミリグラム服用し、免疫抑制剤、解熱鎮痛剤、病態や副作用を抑える薬、安定剤、内服薬だけで諸々三十錠前後。目薬や塗り薬、湿布、特殊なテープ、何十種類もの薬によって、室内での安静状態で、なんとか最低限の行動を維持している。それでも症状は抑えきれず、二十四時間途切れることなく、熱、倦怠感、痛み、挙げればきりのないさまざまな全身の症状、苦痛が続く

おしりの一部が病巣で決壊したことを、おしり女子、流出す。と書きえる凄み

 少し本文中から引用する。

 「どんな感じなの?」とよく訊かれるのだが、特殊な病態が多すぎてイマイチうまく伝えられない。おしりや腕がとけて流出するという事態を、一言で説明するのはかなり難しい

 お財布の中の運転免許証やTSUTAYAの会員証に、障害者手帳が加わっても、わたしはわたしである。寅さんが好きで、ビルマが好きで、思い込みの激しい、妄想過多な、わたし

 破裂したおしりのあとには、脂肪組織が流れ出した痕、まるで洞窟のように巨大な空洞ができあがった。おしり洞窟。おしり女子は、ついに、人類から有袋類へと、超絶的な変身をとげた。ビルマ女子→難病女子→おしり女子→有袋類。人生とは、確実に妙ちきりんなものである

 病室に戻ってベッドに入り、天井を見つめながら。わたしは、もう少し生きたいかもしれない、と思った。この気持ち。この感覚。もう一回くらい、キスしても、いいかもしれない

 これで読者も、この本のトーン&マナーについて分かっていただけたと思う。

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「「うら若き難病女子、ご危篤となる」という軽いタッチで描く難病ホントの話」の著者

藤原 和博

藤原 和博(ふじはら・かずひろ)

教育改革実践家

リクルートの敏腕営業担当から、都内で初めての民間出身の公立中学校の校長に転じた。斬新な手法で地域を挙げての教育体制を整え、校長退職後は全国にその手法を伝えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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