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「原発維持か、減・原発か、脱・原発か」親子でディベートしてクリティカルシンキングの力を養おう

2011年8月9日(火)

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日本の復興や日本人の将来を考えていく時にどんな本を読むべきか。大阪府知事特別顧問で、前東京都杉並区立和田中学校校長の藤原和博氏に、夏休みの間に中学生から大人にまで幅広く読んでもらいたいという本を5冊選んでもらった。藤原氏は今年だけでも既に70冊以上の本を読んだというほどの読書家でもある。復興ニッポンでは、毎週1冊ずつ紹介していく。

 日本では、原発を巡る議論は「原発か、脱原発か」という二項対立になりがちだ。「親アメリカか、反アメリカか」もそうだし、「学力か、ゆとりか」もそう。
 
 しかし、こういう分かりやすい議論はテレビ向きではあるが、好きか嫌いかの子供の対立と変わりない。唯一の「正解」があると思うのは誤りだ。

 私たちが目指さなければならないのはいつも、現実を踏まえた理想の追求。最右翼と最左翼の間にこそ納得できる解「納得解」があるからだ。

 そのためには、二項対立でパターン認識する(決めつける)のではなく、賛成の立場と反対の立場をディベートしながら、右から見るとどう見えるか、左からはどうか、下から覗くととどんな事情が隠されているのか、複眼思考でものごとの本質を見極めようとする努力がいる。

 アタマの中で起こすこの作業のことを「クリティカルシンキング」と呼ぶ。

 直訳して「批判的な思考」と勘違いされるかもしれないが、日本語でいう「批判的」に含まれるような、なんにでも反対するイメージではない。英語の「critical」はオバマ大統領の演説の中にもよく使われるように、本質的に大事だという意味が隠されているから、私は「複眼思考」と訳している。

 親にとって子供の教育の多くは、学校にお任せの状態だと思う。

 でも、学校での教育は「正解主義」の要素が強く、「クリティカルシンキング(複眼思考)」は身につかない。義務教育段階ではとくにそうだ。正解を詰め込んで記憶させること、正解の出し方を教え込むことを重視しているので、ディベートの機会は少なく、一つの物事を多方面から掘り下げて考える習慣はつかない。

 近年、「ゆとり教育」が批判され「学力(記憶力や処理力)」偏重に戻ってしまった学習指導要領の下では、教科書に詰め込まれる知識の量がまた3割増加してしまったために、社会問題に対して複眼的な思考を養える余裕はなくなった。

 それでも、成熟社会を生き抜く子どもたちに必要なのは、「正解」として提示されたパターンを疑い、自ら思考、判断し、表現する力であろうことには、多くの親が気づいていると信じたい。

 だから私は、10年前に「クリティカルシンキング」の力を鍛える授業、[よのなか]科を開発し、それ以降、和田中(東京都杉並区立和田中学校)の校長であった5年間も含めて全国への普及に努めてきた。[よのなか]科の授業は、子供と大人がともに正解が1つではない社会問題を議論する中で、「正解主義」「前例主義」「パターン認識」のモードを一旦外し、常に複眼思考のクセをつけさせるものだ。

 読者がもしその様子を覗きたければ、私の講演会で模擬体験するか([よのなか]科の授業で典型的な「ゴムやタイヤに付加価値を付けて新製品を生み出そう!」という授業の一端を織り交ぜていつも講演をやっている)、全国[よのなか]科ネットワークのサイトをチェックしてもらえれば、授業の様子が24回分、5分くらいの短いビデオ映像でご覧いただける。IDもパスワードもいらない。

 実は、この[よのなか]科の授業の原点である『人生の教科書[よのなか]』を共著したのが、この本の著者である宮台真司さんなのである。つまり、[よのなか]科は、私と宮台さんが1998年に共著した本を立体化して授業にしたもの。文庫化された『人生の教科書[よのなかのルール]』(ちくま文庫)も「クリティカルシンキング」の教科書としていまだに人気が高い。

 その宮台さんの本著での対談のお相手は、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也さん。自然エネルギー分野の研究と実践では世界が認める第一人者。しかも、もともとは原子力エネルギーの研究者で原発の内部事情に詳しいのがいい。

 いわば「クリティカル・シンキング」の親分と「自然エネルギー」の神様のガチンコ対談、というのがこの本のコンセプトだ。

 私は東京電力を悪魔のように見立てて、ただただ反原発をアピールする議論には組みしない。いっぽうロマンだけで太陽や風からの恵みを讃える輩も信用できない。

 だから、原発と自然エネルギーについて親子で話す際には社会問題として文明史的に論じている本書をクリティカルシンキングの手引きとして推薦したいと思う。

 ついでに、もう1冊この分野で親子での読書を勧めたいのは、『風をつかまえた少年』(文芸春秋)だ。「14歳だったぼくは たったひとりで 風力発電をつくった」がサブタイトル。自転車のダイナモを廃物利用して、図書館の書籍を頼りに極貧のアフリカの村に発電機を自作しちゃった少年の物語だ。池上彰氏が「学ぶことの本当の意味を教える感動の実話」だと解説を書いている。

クリティカルシンキングの力が成熟社会を生き抜く子どもたちには必須

 再生可能エネルギーの世界の電力供給に占める割合は年々上がり、2009年には18%になったという。もはや新しく造られる発電設備の半分以上を占めている。

 しかし、よく言われるように、ソーラーの稼働率は曇りや雨の日も多いから1割、風力は風が吹かない日もあって2割、それに対して原子力は7割を超える。減価償却を16年で終えるらしいから、40年も使い回せば儲かるのもわかる。しかもコストは、競争がないからすべて電気料金に価格転嫁できるのだ。

 こうしたシステムに依存してきた私たちの社会のありようは、じつは、3・11東日本大震災以前から変化していて、今回の津波と原発事故は、私たちの生き方、社会のあり方、とりわけ崩壊するがまま放っておかれたコミュニティと人々との関わり方自体を見直すキッカケを与えている。

 この見直しには私たち大人がどれほど物事の本質を捉え変革を推進できるのかが問われるのだが、ここでもやはり「クリティカルシンキング」の力が必須だ。

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「「原発維持か、減・原発か、脱・原発か」親子でディベートしてクリティカルシンキングの力を養おう」の著者

藤原 和博

藤原 和博(ふじはら・かずひろ)

教育改革実践家

リクルートの敏腕営業担当から、都内で初めての民間出身の公立中学校の校長に転じた。斬新な手法で地域を挙げての教育体制を整え、校長退職後は全国にその手法を伝えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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