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「東海、東南海、南海」 3つの地震の連動に備えよ

東日本大震災が迫る対策の根本的な見直し

  • 高橋 智幸

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2011年8月24日(水)

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 3月11日に発生した東日本大震災──。地震、津波という自然災害に原発事故という社会災害が重なり合う未曽有の事態は、これまで社会や企業が前提としてきた安全の常識を次々と覆した。3月11日を境にどのような常識が新たに形成されていくのか。それに応じて社会や企業活動の安全マネジメントをどう変えていかなければならないのか。

 このコラムでは、自然災害と事故などの社会災害の両方に精通した防災や危機管理のプロを育成する場として日本で初めて誕生した関西大学社会安全学部の教授陣が、社会や企業の安全マネジメントについての新たな考え方や具体策を講義していく。

 今回は、津波や高潮、洪水といった水害についての研究の第一人者である高橋智幸教授が、東日本大震災の津波被害の現地調査を踏まえて、今後に想定されている東海地震、東南海地震、南海地震に伴う津波の発生に対して必要とされる新たな防災・減災のあり方を提言する。

(構成は、峯村創一=フリーライター)

 東日本大震災は、6つの想定震源域にある断層が連動してずれて起きた。その範囲は宮城県沖から茨城県沖に及び、規模にして長さ約450キロ、幅200キロ。これだけの広範囲にある断層が最大で20~30メートルも動いた。このように一度に6つの想定震源域の断層が連動するとは、政府の地震調査委員会も想定していなかった事態である。

 確かに、869年 に起きた「貞観地震」では、この海域で今回と同様の広域に及ぶ連動が発生していた可能性がある。しかし、まだ調査中であり、十分な知見は得られていなかった。加えて、そうした事態が起きたとしても、地震の規模はマグニチュード8.4程度と予想されていた。

 ところが、今回はその「まさか」の連動型地震が起き、マグニチュード9クラスの巨大地震が現実のものとなってしまった。地震や防災の専門家は、これまでの地震予測と対策を根本から見直さざるを得ないだろう。

 将来に起きることが確実視されている東海、東南海、南海の3つの地震についても、さらなる警戒が必要だ。

 静岡県沖を震源とする東海地震、中部沖の東南海地震、四国沖の南海地震 ――。この3つの地震域で断層が連動してずれるという最悪のシナリオを、たとえ可能性が低くても想定しておくべきである。つまり、東海地方から近畿・四国にかけての超広域に大規模災害が発生することを想定し、備えなくてはならない。

現地調査で分かった津波被害の5つの特徴

 そのためには、今回の大震災から我々が得た教訓を生かすべきである。津波被害では、次のような5つの特徴が我々の現地調査で明らかになった。

(1) 想定を上回った浸水範囲
 ハザードマップ(災害予測地図)で予想した範囲をはるかに超えて大きな被害が発生している。痛ましいことに、ハザードマップを見て自分の住む地域には津波は来ないと思い、逃げ遅れて犠牲になられたケースがあるのではないだろうか。
(2) 自動車の被害と、自動車による被害
 自動車に乗って避難しようとしたが、渋滞に巻き込まれ、クルマごと流されてしまう被害が多発した。さらに、そのクルマが漂流物となって町を襲った。これは発展途上国には少なく、先進国の都市部で多く見られる現象である。
(3) 市街地で起きた複雑な水の流れ
 市街地に浸入してきた水が、メーンストリートや入り組んだ路地で複雑な流れを生み、人々は逃げる方向を失って被害が拡大した。
(4) 湾口防波堤が示した減勢効果
 岩手県釜石市の釜石湾の湾口には、水深63メートルという世界最深の防波堤がある(長さは990メートルと700メートル)。今回の津波によって大きく損壊してしまったが、これをもって津波に対して無力だったとするのは誤りである。現地調査の結果、釜石湾の一帯ではハザードマップの浸水は想定にほぼ近い状態に収まっている。このことからも、防波堤が有効に機能し、津波の勢いを減少させたと評価できる。
(5) 自動車専用道路の盛り土による減災効果
 宮城県仙台市若林区の荒浜地区は、海岸から内陸に向かって平野が広がっているため、津波が内陸の奥深くまで襲来した。しかし、仙台東部道路の盛り土が“防波堤”の役割を果たし、それより内陸への津波の浸入をかなり防いだ。

 私は、2004年のインド洋津波で被災したタイ・プーケットのカロンビーチを調査した際に、同様の事例を見ている。高さ5~6メートルの津波が襲ったが、湾岸道路が盛り土されていた区間では道路が堤防の役割を果たし、道路より内陸側のホテルはほとんど無傷だった。しかし、盛り土されていなかった区間ではホテルが全壊していた。これらは別の用途で造られた土木構造物が図らずも減災に役立った例だが、新たに構造物を建設する際に、防災機能を付加することを考えるのも重要であろう。

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