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頼れるのは自国の農業だけ!

どの国も自国民への食料供給を最優先する

  • 山下 一仁

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2011年8月9日(火)

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 消費財としての食料が他の財と異なる最大の特徴は、人間生活や生命維持に不可欠であることだ。1年間十分に食べたから翌年は食べなくてもよいというものではない。一月でも供給が途絶すると飢餓が生じる。

 農産物には、穀物、砂糖、野菜、果物、畜産物などがある。食料として最も基本的で重要なものは、米、麦、とうもろこし、大豆などの穀物だ。穀物は直接食用になるほか、家畜の餌になって畜産物の供給にも資するからだ。

 穀物には、自動車などの工業製品のように、モノが国境を越えて自由に移動する市場はない。国際穀物市場は、政治によって各国の国内市場と分断された市場である。国際価格が低迷している時、国は、輸入関税などを使って自国の農業を保護しようとする。逆に、国際価格が高騰すると、輸出税を課したり、輸出を禁止したりして、国内消費者への供給を優先しようとする。途上国では、農産物が輸出されると、自国内の供給が減少して国内の価格が国際価格と同じ水準まで上昇してしまう。貧しい国民が食料を購入できなくなる。

 従って世界の穀物市場には、各国の国内需要を満たした残りしか供給されない。国際価格が低迷しようと高騰しようと、各国の国内市場は国際市場から隔離される。

国際市場は不安定 わずかな需給の変化で価格が乱高下

 自動車は生産された台数の約50%が貿易されるが、穀物輸出は生産量のわずか15%程度にすぎない。しかも、供給量は天候などにより大きく変動する。このため、わずかの豊作でも輸出量が増えて、国際価格は大きく下がる。逆に、15%の不作でも、各国が自国への供給を優先すると貿易量は100%の減少となってしまう。

 1993年、日本の米は平年作より26%の大不作となった。これを受けて日本が国際米市場で250万トンを買いつけた際、米の国際価格は約2倍に高騰した。米の国際市場は1000万~2000万トン規模である。わずかの需給変動で国際価格は大きく変動する。国際市場は不安定性なのだ。

 1973年、ソ連が国際市場で穀物を大量に買いつけたため、穀物価格が3~4倍に高騰した。この時、世界の穀物生産は13億1600万トンから12億7600トンへとわずか3%減少しただけだった。

 1973年の食料危機の際、これと機を同じくして飼料用のアンチョビーが不漁になった。このためアメリカでは、その代替品として大豆かすへの需要が増大した。当時世界の大豆輸出量のほとんどを占めていたアメリカは、国内の畜産農家への大豆供給を優先するため、大豆の輸出を禁止した。これが日本に混乱をもたらした。日本は味噌、豆腐、納豆、醤油など大豆製品の消費が多い。また大豆輸入において、アメリカへの依存度が高かった。

自国民への食糧供給が最優先課題

 ウルグアイ・ラウンド交渉の最終段階で、我が国は、1973年にアメリカが実施した大豆禁輸のような輸出数量制限を規制するよう提案した。だが、インドの大使が「不作の時に国内消費者への供給を優先するのは当然ではないか」と反対した。

 また、1995年から97年にかけて穀物の国際価格が上昇した際、EUは域内農産物を国際市場で処分するための輸出補助金の支給を停止した。逆に域内の消費者、加工業者に国際価格よりも安価に穀物を供給するため輸出税を課した。

 EUはウルグアイ・ラウンド交渉で、「域内農業者に輸出補助金を支出することで、途上国に対して安価な食料を供給している」と主張していた。しかし、国際価格が上昇し、途上国が食料を入手することが困難となる局面では、域内市場への供給を優先したのだ。

 アメリカの食料援助も、生産過剰になると増え、不足になると減少する傾向がある。いずれも過剰農産物の処分だから、価格が高騰して本当に貧しい途上国が必要とする時には援助が減る。

先進国こそが農産物の輸出国

 通常は、途上国が食料・農産物を輸出して、先進国が工業製品を輸出していると理解されている。しかし、これは誤りだ。穀物について、先進国と、中進国であるロシア、中国、タイ、アルゼンチン、ブラジルを合わせた輸出量のシェアはほとんど100%近い。

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