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日本人の労働時間はもっと減っていてもいいはず

マクロ経済データから見る労働実態

2011年8月11日(木)

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 総務省統計局の「労働力調査」によると、日本の大人1人当たり総労働時間は1960年から2010年までに34%減少した。日本人はなぜ働かなくなったのか。今回はマクロ経済データを基に、その理由を探ってみたい。

 大人1人当たり総労働時間とは、15歳以上人口における就業者の割合である「就業率」に、就業者1人当たりの「平均労働時間」を乗じたものである。図1は、総労働時間、就業率、平均労働時間をそれぞれ1960年の水準を100として図示したものである。これによると、就業率は16%、平均労働時間は21%減少している。つまり、日本では近年働く人の割合も、働く人の労働時間も減っているのだ。

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 なお、今回の分析に使った総務省統計局の「労働力調査」は労働者へのアンケートを集計したデータであるため、いわゆる「サービス残業」による労働時間の過小評価を防ぐことができる。

高度経済成長で労働時間が減少

 高度経済成長期における総労働時間の低下は興味深い。戦争による工場や設備の喪失は、日本の資本の収益率を高め、資本蓄積を促し、戦後の急速な経済復興の一因となった。さらに、戦後の日本は先端的な技術の流入や開発によって急速な技術進歩を遂げ、高度経済成長を達成した。一見矛盾するように思えるが、1960年から1973年にかけて、大人一人当たり実質GDPが2.5倍に成長した一方で、総労働時間は12%減少している。

 この時期の総労働時間減少の一因として、終戦後の貧困状態からの脱却が挙げられる。終戦後しばらくは日本人の消費水準は低く、1960年の一人当たり消費水準は現在の物価水準で換算すると、2010年のおよそ4分の1の水準だった。しかしその後、高度経済成長とともに民間消費は急速に増加し、1973年には1960年の水準の2.4倍に成長した。

 一般的にマクロ経済学では、労働者は常に消費と余暇のバランスを考えながら総労働時間を選択すると想定されている。戦後の日本のように消費水準が低く、飢餓水準に近いときは、労働者は消費を増やすことが重要であるため、より労働を多く供給する。一方で、貧困を脱すると、消費よりも余暇の重要性が高まり、労働供給が減少する。したがって、高度経済成長期には、戦後の貧困状態から脱却できたことで、徐々に日本の労働供給が減少していったと考えられる。

高齢化が就業率を押し下げた

 日本では65歳以上人口の15歳以上人口に対する割合は、1968年から2010年の間に8.9%から26.6%へと急速に増加しており、先進国の中で高齢化の速度が最も早い。

 年齢層別の就業率をみると、1968年当時、65歳以上人口の就業率は33.3%と、全体平均を31.8ポイント下回っていた。この年齢層の人口割合が2010年までに17.7ポイント増加したことで、就業率の全体平均を5.6ポイント低下させたと考えられる。

 さらに、平均寿命が延びたことで、65歳以上人口の就業率は現在、19.4%に低下している。したがって、就業率の低下の3分の1程度は、高齢化によって説明することができる。 

コメント21件コメント/レビュー

途中まで興味深い分析でしたが、『「なぜ労働時間がこんなにも減少したのか」ということよりも、実は、「なぜ労働時間はもっと減少しなかったのか」ということのほうが不思議だ。』という論旨の根拠を追うことができなかった。

「高度経済成長」、「労働税」、「少子化」の3つの要因だけのシミューレーションでほぼ現在のレベルの労働時間短縮を説明できるが、「高齢化」と「時短」の影響があるはずだから、というのだが、分かりにくい。実際に5つの要因を組み入れたシミュレーションを行うことはできなかっただろうか。それぞれの要因が独立に作用して、効果が単純に上乗せできるという保証もないように思うので議論としてはちょっと弱いと感じた。(2016/10/20 19:09)

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「日本人の労働時間はもっと減っていてもいいはず」の著者

大津 敬介

大津 敬介(おおつ・けいすけ)

英ケント大学経済学部講師

2001年3月、慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程を修了。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校経済学博士(Ph.D)。日本銀行金融研究所でエコノミストなどを経て2010年9月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

途中まで興味深い分析でしたが、『「なぜ労働時間がこんなにも減少したのか」ということよりも、実は、「なぜ労働時間はもっと減少しなかったのか」ということのほうが不思議だ。』という論旨の根拠を追うことができなかった。

「高度経済成長」、「労働税」、「少子化」の3つの要因だけのシミューレーションでほぼ現在のレベルの労働時間短縮を説明できるが、「高齢化」と「時短」の影響があるはずだから、というのだが、分かりにくい。実際に5つの要因を組み入れたシミュレーションを行うことはできなかっただろうか。それぞれの要因が独立に作用して、効果が単純に上乗せできるという保証もないように思うので議論としてはちょっと弱いと感じた。(2016/10/20 19:09)

外資でキャリアをはじめて10年のOLです。日本人は働きすぎ…というよりは、権力のある人がオフィスに長くいることが好きなだけなのでは?部下はそれに付き合わされ、新人はそういうものだと教え込まれてるだけでは?「こんなに長くオフィスにいて働いてる(ようなふりをしている)自分」に酔ってるのかなぁと思うことがしばしばあります。実際、ひとつのことをこなすのにそんなに時間がかかるとは思えないのです。長時間労働がまったく生産性につながってないというのは、そういうことなのでは?と思います。長時間オフィスにいることが日本の会社文化になっているのでしょうか。外資にいるとしばしばささやかれる冗談で、「ドメの会社と打ち合わせしたら、こっちはひとりなのに、あちらは7人連れてきた。実際に話したのは二人で、他の5人はひとことも口をきかなかった」というようなものがあります。その全員が長時間労働をしても終わらない仕事量を、外資で二人の社員が定時あがりで終わらせることができるというのは、能力の問題ではない気がします。(2011/08/18)

経済学者の言うことはどうも理解できません。例えば、「税・社会保障費が上がれば、労働者は自分の取り分が減るから働かなくなる」などと、さも当然のように書いていますが、私にとっては「自分の取り分が減るから、それを補うためにもっと働かざるを得なくなる」の方が余程しっくりきます。皆さんはどうでしょうか? 筆者の主張は、・山ほど資産があって食うに困らず、・「労働」という手元資産の運用対象として魅力的なものを探している。という場面でのみ成り立つように思います。以上は一例ですが、採用している前提や仮定の多くが似たような代物であり、とてもまともに議論するに値するとは思えません。記事最後に「総労働時間の減少をすべて説明できる」などと書かれていますが、「説明できるように数字を選んできたのだから、説明できて当たり前」としか感じません。経済学って、経済学者って、一体何なのでしょうか?(2011/08/18)

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