「ワインから考える体験型ツーリズムは地方を救うか?」

「よそ者、若者、ばか者」が揃い、ワインツーリズムが走りだす

第2回:2人の「貴之」が引っ張り輪が広がる

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2011年8月19日(金)

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 山梨県の小さな町に3000人が集まるワインツーリズムが注目を集めている。今年も11月5日(土)、6日(日)に開催されることが決まった。参加ワイナリーは過去最多の40社以上となる見込みで、開催エリアも、昨年の甲州市、甲府市に加え、笛吹市へも広がった。かねてから体験型ツーリズムに期待していた旅行業界だが、なかなかここまでの成功例はでていない。この仕掛けをいかに作り上げたのか。成功の3カ条と言われる「ヒト・モノ・カネ」の中で、前回はモノについて考えた。今回は、ヒトについて考えていく。

地ビールで足がかりをつくる

 甲府駅から徒歩5分。県庁所在地としては明らかに閑散とした商店街を抜けていくと、甲府城の石垣が見えてくる。その辺りが市役所や県庁などが連なる官庁街で、その一角にある雑居ビルの1階に、その店、フォーハーツカフェはある。

大木貴之氏

この店の店主兼オーナーが大木貴之(1971年生まれ)だ。甲府出身で、県内の大学を卒業した後、東京のPR会社で5年間働いた。当時、原宿にあったカフェ運営会社の社員だった妻・忍は高校の同級生。結婚すると2人で郷里に帰り、開いたのがフォーハーツカフェだった。2000年12月のことである。

 独自色を打ち出さなければ店は生き残れない。ニューヨークのベーグル、イタリアのモッツァレラチーズ、スペインの生ハムなど、本場の輸入食材を手ごろな値段で提供する時期が3年ほど続いた。食材をただ出すだけでなく、どこで、どうやってつくられているものか、という知識も努めて提供するようにした。そのうち、「地場の食材でいいものはないか」と考えるに至る。

 格好のものがあった。地ビールだった。 評判の高いものをいくつか取り寄せて飲んでみた。目からウロコが落ちるうまさだった。「これだ」と思った。

 本当は山梨県産の地ビールだけを置きたかったが、県内にメーカーが何社もあるわけではない。そこで、山梨の1社に、近県である長野と静岡のメーカーを1社ずつ加え、計3社の地ビールを揃えた。それだけではない。各社から醸造責任者に来てもらい、ブラインドテストで客に商品名を当てさせる「ビア・フェスタ」というイベントを開催したところ、評判になり、客足がぐんと伸びた。

山梨ワインを店の主役にすえる

 大木は次を考えた。山梨といえばワインである。ところが日本一のワイン王国を自称しながら、県庁所在地である甲府市内にさえ山梨産のワインを売っている店がほとんどなかった。地元ではそのくらい飲まれていない。都内の限られた店で国産ワインの1本として売られるか、観光に来た人が買っていく単なるお土産品でしかなかったのだ。

 こうした状態を変えようと、県のワイン組合が音頭を取って、甲府の駅ビルに観光客向けのワインバーを開いたことがあった。だが、蓋を開けてみると毎日、閑古鳥が鳴いていた。

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著者プロフィール

荻野 進介(おぎの・しんすけ)

1966年埼玉県生まれ。1989年、PR会社の知性アイデアセンター入社。2001年より、リクルートワークス研究所で人事経営誌『Works』の編集業務に携わる。2008年より、編集業務と人事コンサルティングを行うニッチモに所属。著書に『サバイバル副業術』(ソフトバンク新書)、『ダブルキャリア』(共著、NHK生活人新書)、『サラサラの組織』(共著、ダイヤモンド社)がある。



このコラムについて

ワインから考える体験型ツーリズムは地方を救うか?

震災と原発事故の影響で観光業界が大きな打撃を受けている。ホテル、旅館、バス会社、鉄道会社、航空会社、旅行代理店……3・11以降の観光業界の課題は山積みだ。しかし、考えてみれば、震災前であっても、従来型のマスツーリズムは縮小方向にあり、多くの地方都市は観光を起爆剤とした地域活性の方途をさまざまに探っていたはずである。

では、「持続可能な観光」を地域に根付かせるためには、何をすればいいのか。そのヒントの一つが「ニューツーリズム」という地域発信型の観光スタイルだ。本連載では、勝沼のワインツーリズムを題材に、「持続可能な観光」が成功する条件を探ってみたい。

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