• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

語られなかった日韓戦の勝因

「らしさ」をストロングポイントに変えるもの

2011年8月18日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 先週、アジアのサッカー界では宿命のライバルと言われる日本対韓国の試合が札幌で行われた。お互い9月から始まるワールドカップアジア3次予選(これを勝ち抜けると最終予選に進出)に向けての強化試合という位置付けだが、ご存知のように日韓戦では単なる強化試合とならないほどお互いが勝負に拘ってきた。

 しかし、この試合の前までの戦績は日本の11勝38敗22分け。ワールドカップの実績も含め圧倒的に韓国が上回っていた。日本が同等に近い戦いができ始めたのは、メキシコオリンピック当時を除いてはここ15年ほどである。日本が、初の決勝トーナメント進出(ベスト16)に沸き立った2002年日韓共催ワールドカップでも、韓国はベスト4と常に先を走る存在であり、それはここ30年のアジアの勢力図を考えれば当たり前のことであった。

 しかし今回の日韓戦は37年振りと言われる3点差の勝利。しかも内容もこれまでの韓国戦の中で最高と言えるものであった。この1試合だけで全てを判断することは危険であるが、日本がアジアナンバーワンの韓国に追いつき、対等の関係になったことは間違いない。日本がここまで成長して来た原動力は何処にあるのか。現場と組織の3つの側面から分析してみた。

アジアカップのヨルダン戦で魅せたザッケローニの手腕

 サッカーにおける現場の最前線がピッチであることはいうまでもない。日韓戦という大舞台で選手達が楽みながらプレーし、かつ結果も手に入れた背景のひとつに、ザッケローニ監督のマネジメント方法があることは疑いようがないだろう。

 就任した直後からアルゼンチン戦、アウェイでの韓国戦と親善試合とは言い難い試合が続いた。そして今年1月にカタールで行われたアジアカップ。初戦、格下のヨルダン相手に試合終了間際にフリーキックから吉田麻也選手のヘディングで何とか追いつき1対1で引き分けた。この大会でもこれ以降もザッケローニ監督のマネジメントの肝はアジアカップ初戦のヨルダン戦にあった。

 南アフリカワールドカップでベスト16に進出し、岡田ジャパンの後任として就いたザッケローニ監督は、選手選考やサッカーの志向に関して前任者のやり方を上手く踏襲しながらマイナーチェンジしていった。通常新任監督は前任者を否定する部分を明確にするところから入ることが多いが、彼は「自分を出す」前に「現状を知る」ことに重きを置いた。

 そして、徐々に日本のサッカーと日本人を理解出来てくるに従い、日本人には自信が必要だ、ということを認識した。それは彼にイタリアでワールドクラスと接して来た基準があり、その基準から見て日本に足りないのは、(諸々細かいことはあるにせよ)まず自信である、と判断したのだろう。全体ミーティングや選手へのコーチングのほとんどが、「おまえのアイデアと技術はデルピエロにも引けを取らない」「ここさえ直せばもっと上に行ける」「カンナバーロだって身体は大きくないが世界チャンピオンのセンターバックだ。おまえも出来る」等々、選手にポジティブな声掛けだったと言う。選手はだんだんその気になってくる。「よし、ランクアップするためにこれに挑戦しよう」と。

 そんな中、アジアカップ初戦のヨルダン戦で不甲斐ない試合をしてしまったのだ。この試合の直後、ザッケローニ監督は非常に厳しい顔で選手にこう語った。

 「あなたたちは日本代表に相応しい心の準備をして試合に臨んだか?」
罵声を浴びせたという激しいものではなかったが、その場は静まり返ったと言う。自信と過信は背中合わせだ。普段選手にポジティブな声掛けをして、その気にさせるアプローチをしながら、ここぞ、という場面で「自信と過信は違う」ということを心に響かせたのだ。これは日常で「自信と過信は違うんだぞ」と言い続けることと響き方は全く違う。

 その後この大会で日本代表は以降の試合もギリギリの戦いをものにしながら、準決勝で韓国に2対2からPK戦で勝利、そして決勝は延長の末オーストラリアを1対0で下し、優勝を手にした。
 このミーティング以降の日本の戦い振りを見れば、“自信と過信”の境界線を見極めるタイミングを逃さなかったザッケローニ監督の手腕が見えて来る。

 加えて日常の安定したぶれないアプローチ(それは優しいものか厳しいものかに関わらず)があってこその、非常時でのマネジメントが効いたのだ。これ以降、チームの出来不出来はあったとしても選手が心のバランスを失った試合を見たことはない。この延長線上に今回の日韓戦もあったのだ。

コメント11

「城福浩の「ヒトとチームを鍛えるサッカー小論」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

子会社とどう向き合うかで、その企業のガバナンスを判断できる。

牛島 信 弁護士