「いやぁ、横山さん…」
誰もいなくなった会議室で、私は営業部長から熱い握手を受けた。言葉にしなくても、それが「感謝」の気持ちであることが伝わってくる。
営業コンサルタントとして私の役割は、組織の中にいてはなかなか言えないことを第三者として客観的に表現することにもある。
「取締役のお2人、この会議室から出ていってください。今後、営業会議にお2人はご出席いただく必要はありません」
この会社の営業会議には、営業部長と6人の営業課長、そして2人の取締役が必ず出席していた。
「現場は何やってんだ!お前ら、どうやって若手の教育してるんだ。やって見せ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ、っていつも言ってるだろうが。課長がもっと自ら動かないとダメなんだ!」
取締役の恫喝が会議室に響き渡る。課長たちは神妙な顔で聞いているふりをし、部長は書類から目を上げない。そんな場面を腐るほど見てきたから分かることがある。この会議に、この人たちはいらない。この取締役2人がこの席からいなくなれば、毎週の会議は2週間に1回へと減らすことができ、3時間以上続く会議も30分まで減らすことができる。本来リーダーシップをとらなくてはならない課長たちの士気も上げさせることができる。
「会議総コスト」を90%削減させる
営業成果を上げるためには、いくつかの戦略がある。その重要な武器の1つが「脱会議」。
私が提唱する「脱会議」とは、『会議の「数」、会議の「時間」、会議の「参加者」を2分の1に削減し、「会議総コスト」を90%削減させる』こと。
脱会議を促進させれば、リアルコミュニケーションが増え、報告・連絡・相談が活発になり、指示待ち人間が減って組織が活性化する。もちろん労働時間は減り、家庭へ戻る時間が早まり、家族でのコミュニケーションが増える。個人のワークライフバランスも好転する。何より会議依存経営を続けていると意思決定スピードが遅くなり、日本企業は国際競争力を失いかねない。
世の中には、「会議のやり方」を変えるという提案がたくさんある。私も「会議ファシリテーション」の本を何冊も読み、参考にさせてもらっている。その上で発言するが、素人が会議をうまくファシリテーションすることはきわめて困難だ。
出席者全員のアイデアを発散させ、収束させ、意志決定させる。これを上手にこなして会議を活性化することは重要だが、一般企業のマネジャーの中でこのようなファシリテーションスキルを身につけられる人材は10%もいない。年に2〜3回研修を受けたら誰でも体得できるのならば「ファシリテーター」の専門家が存在する意味がなくなる。
それよりは会議を劇的に削減して、年2回のプランニング会議の時だけは、プロのファシリテーターに依頼すればいい。日常的な会議の「質」を向上させることにこだわりすぎても、あまり意味がない。次回以降のコラムに詳しく記すが、会議を実施することのメリットよりも、デメリットの方が大きすぎるからだ。
とにかく回数を減らし、出席者を減らし、時間を短くする。メソッドがシンプルであるし、何よりも分かりやすい。マネジャーのスキルに依存することなく実践できる。組織内コミュニケーションが活発化し、意思決定スピードが速まるのだから、企業競争力がアップする一番いい戦略だと考えている。
ハーフタイムに選手はうつむかない
例えば営業会議ならば、2週間に1回、30分だけいい。
営業の最終的な目的は、目標予算を達成させること。会議はその道具の1つでしかない。いわば試合中のハーフタイム。監督から的確に指示を受け、選手間で戦略を共有していくためのもの。そのハーフタイムで決まった戦略を基に、試合に入れば選手一人ひとりが自分で判断して動いていく。ハーフタイムが試合より長かったり、ハーフタイムで選手がうつむいているスポーツなんて見たことがない。
けれども、会議で営業現場に出る時間を削ってしまう会社があったり、長い時間叱責したり、ダラダラと意味のない時間にして、逆にメンバーの気持ちを萎えさせてしまうマネジャーがいる。
今はスピードの時代。現場にいる選手が細かいパスをつないでゴールを決める。これが現代のやり方。ハーフタイムに明け暮れているチームに明日はない。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



アタックス・セールス・アソシエイツ取締役副社長

からのご案内




