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人間の強さと共同体の連帯と自助の物語

第3回 中央と地方の対立を超える新たな枠組みを

  • ジェラルド・カーティス,翻訳 村井 章子

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2011年8月26日(金)

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(日本語の文章の後に、英語の原文を掲載しています)

 東京にいる政治家は、3月11日の大地震の影響を表すのに危機だとか国難だといった言葉を使いはするが、彼らの行動は発言と一致していない。もしほんとうに危機に直面していると思っていたら、ありとあらゆる手を使って菅政権を引きずり落とそうとするのをやめ、超党派の政策協力を実現する道を探っていただろう。少なくとも野党陣営は、東北の危機に対して首相よりよい案を提示できると市民を説得し、財政・社会保障制度改革といった大きな課題に取り組む気運を高めようと努力したはずだ。だが自民党も、そして民主党内の反菅勢力も、政権打倒の方法を見つけることに時間を費やし、建設的な取り組みにはいっこうに意識が向かわないらしい。

 菅首相は、首尾一貫した政策策定プロセスをどう構築するか、ほとんどわかっていないように見える。しかも政治主導の名の下で官僚の力を十分に使おうとせず、官僚は官僚で首相の失敗を望むようになっている。菅がうまく権限委譲をできずにいる間に3月11日の震災が起きて危機を招き、適切な意思決定システムを確立する時間的余裕がなくなってしまった。

 今日の日本の政治は、矮小な政治的駆け引きや権力闘争に明け暮れ、市民感覚から乖離した政治家たちに翻弄されている。政治指導力を効果的に発揮するためには、国民の心をとらえ説得することが不可欠だが、見渡す限りでは、そうした能力を備えた政治指導者はいない。世論調査によると、国民の間に民主・自民両党に対する嫌悪感が広まっているようだが、それも当然と言えよう。

 日本の政治の停滞に対して、すぐに効く処方箋はない。日本はアメリカと同じく政府と議会がねじれ状態にある。野党は参議院で過半数を占めているため、どうしても必要な法案以外、民主党の出す案を片端から阻止しようとする。与党が党内反対派を説得し、野党の協力を取り付けられるのは、世論を味方につけているときだけだ。小泉元首相の場合には、世論の強力な支持があったから、党内からの激しい反発を抑え込むことができたのである。だが日本にとって不幸なことに、菅は小泉ではない。

大連立が実現したとしても一時しのぎにもならない

 大連立は、日本政治の惨状に対する答にはならない。ドイツやイギリスでは、党としてのアイデンティティや有力支持層を失うことなく連立政権を組むことができる。だが日本の場合には、階級、地域、宗教、民族など社会の亀裂となりうる要因がさして強くない。多くの国ではこうした要因が政党の基盤となっているのであるが、日本ではそれが弱いがために、大連立の成立はそのまま有力野党の事実上の終焉を、ひいては競争的政党政治の実質的な崩壊を意味する。それは、より開かれた政治に逆行するものであり、日本の民主政治そのものを脅かしかねない。

 政策協定に基づかない大連立を形成しても、権力抗争の場が国民の目の届かない密室へと移るだけである。自民党にとって大連立は、権力を再び手中にするといううまみがある。一方民主党は、自民党を取り込み、民主党政権の人質にすることが狙いである。

 民主党内にも自民党内にも、大連立に対する強い抵抗がある。自民党議員の多くは、民主党の無能さを攻撃してできるだけ早い時期に総選挙に持ち込むのが最高の筋書きだと考えている。民主党議員の多くも連立に反対だが、これは、軒を貸して母屋を取られるような事態になることを恐れているからだ。こうしたわけだから、大連立は実現しない公算が大きい。たとえ実現しても、混迷を極める日本の政治システムにとって、一時しのぎにもなるまい。

 決断力と実行力に富む政権が近い将来に出現する可能性は低く、東北の悲劇によって活力ある新時代が切り拓かれる機会も失われかねないーーこれが、日本国民が直面している暗い政治的現実である。東北で私は、出会った人々に勇気づけられた。目にしたもの、耳にしたことから、言葉に表せない悲しい思いもした。そして、日本の政治指導者には大いに失望させられた。今回の悲劇から東北の復興と日本の再生をめざす大胆な政策転換の機会が目の前にあるというのに、彼らはそれに踏み切れない。

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