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農家の規模拡大を阻害する農地法

ゾーニングを厳しくし、株式会社の農業参入を認めよ

  • 山下 一仁

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2011年8月30日(火)

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 戦前の農政は、「小作人の解放」と「零細農業構造の改善」を目標とした。前者は農地改革で実現した。しかし、これによって自作農=小地主が多数発生し、零細農業構造を固定させてしまった。しかも、1952年にGHQの要求で制定した「農地法」は、農地改革後の状況を改善しようとするのではなく、多くの小地主の存在を維持しようとするものだった。

 実は、戦後の他の経済改革と違い、農地改革だけは、日本政府、農林省の発案だった。最初GHQは農林省の農地改革案に「ノー・オブジェクション」とだけ言い、全く関心を示さなかった。しかし、GHQはやがてその政治的な重要性に気づいた。終戦直後、燎原の火のように燃え盛った農村の社会主義運動が、農地改革の進展とともに、急速にしぼんでいったからだ。小地主となった元小作人が保守化した。

 GHQは保守化した農村を共産主義に対する防波堤にしようとして、農地法をつくらせた。多数の小地主から成る農村は保守党を支える基盤となった。農家戸数を減少させて農業の規模拡大を進めるよりも、小規模のままの多数の農家を維持する方が票田になる。農地改革をさら進めて、零細農業構造を打破して農業改革を実現するという農林官僚の夢は、大きな政治の波の前に藻屑と消えた。

自作農主義にこだわる農地法

 農場の「所有者」とその「経営者」、「耕作者」は同じである必要はない。素人よりもプロが経営すべきであり、所有者(出資者)は農場に投下した資本で配当を得ればよい。これは、ブラジルなどで普及している農業経営である。

 ところが、農地法は、農地改革の成果である「所有者=耕作者」、すなわち自作農が望ましいとする。このため、株式会社のような農地の所有形態――農地の耕作や経営は従業員が行い、農地は株主が所有する――を認めない。

 農地法の規制下でも、借地なら一般の株式会社も農業を営める。しかし、所有権のない、いつ返還を要求されるか分からない借地には、誰も投資しようとしない。大きな機械投資をして参入しても、投資が無駄になってしまう可能性がある。しかし、株式会社の農地所有は農地法が認めない。

 制定された当初、農地法は法人が農地を所有したり耕作したりすることを想定していなかった。しかし、節税目的で農家が法人化する例が出たため、これを認めるかどうかで農政は混乱した。ようやく、1962年に「農業生産法人制度」が農地法に導入された。だが、これは農家が法人化することを念頭に置いたもの。しかも株式会社化することは認めなかった。

 農地法は2000年の改正でやっと、株式会社形態の農業生産法人を認めた。しかし、農業関係者以外の者に経営が支配されないよう、農業者や農業関係者の議決権が4分の3以上であることという要件がある。農業関係者以外が持てる4分の1未満の議決権についても、販売業者などその農業生産法人と取引関係にある者でなければ取得できない。普通の人が出資して議決権を持つことはできないのだ。

 これに加えて、役員の過半は農業に常時従事する構成員であることという要件もある。さらに、農業生産法人に対して、取締役会などの承認を得なければ株式を譲渡できないと定款で規定することを求めている。

株式会社は農地を所有できない~農地を潰したのは農業界だ

 農地法は、資金調達の面でも、農業を参入リスクが高い産業にしている。

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