【最終回】改革に失敗する日本企業がはまり続ける罠

グローバル企業のトップが驚嘆したTOC流の解決法

  • 岸良 裕司

 東日本大震災によって生産停止の連鎖が日本全国や海外にも広がり、日本のモノ作りの効率化は行き過ぎだったと再考を促す声が高まった。だが、それは本当に正しい指摘なのか──。

 本コラムでは、ビジネス小説『ザ・ゴール』(ダイヤモンド社)の著者として知られるイスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット博士が考案した改革手法の理論「TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)」とその具体的な手法を紹介しながら、実は効率化が進んでいなかった日本のモノ作りの実態を明らかにし、処方箋を提示してきた。

 最終回の今回は、モノ作りを手がける製造業だけでなく、ほかの業種も含め、日本企業の多くに共通する課題を取り上げる。それは、さまざまな改革に取り組んでいるにもかかわらず、努力が実を結ばず業績が上向かないという問題だ。

 改革が頓挫してしまう真因は何か。それを解消するにはどうしたらいいのか。ゴールドラット博士から直接、薫陶を受けたゴールドラットコンサルティングの岸良裕司ディレクターが、実例を基にTOC流の解決策を示す。

 「全社を挙げてさまざまな改革を行っている。なのに、一向に結果が出ないのはなぜなのか」

 医薬品用の原材料の研究・開発・生産を手がけるE社の会議室。我々と初めて会談した同社の経営トップは悲痛な表情を浮かべながらこう訴えた。

 それも無理はなかった。同社は「全員参加」の号令の下、生産現場のコスト低減や生産性改善活動はもとより、新製品の開発効率向上を目指して新たなプロジェクトマネジメント手法を導入するなど、ありとあらゆる改革に取り組んできた。しかし、目立った成果が出ていなかったからである。

 一方で、激しく追い上げてくる海外の競合企業にシェアを奪われ、E社の業績は上向くどころか悪化の一途をたどっていた。E社の経営幹部たちは打つ手がなくなり、我々に支援を求めてきたのだった。

E社の経営幹部が首を傾げた提案の内容

 確かに彼らの話を聞き、同社の社内を見学して回ると、最新の改革手法を次々と導入して実行してきたことがすぐに分かった。同社の経営陣は、業績の悪化に対して手をこまねいていたわけではなかったのである。しかし、改革の取り組みはいずれも功を奏していなかった。

 こうした場合、改革を実行している現場の中に入っていき、関係者の話を聞いたり、活動の様子を観察したりして、うまくいっていない原因を探る。そして改革の進展を促す改善策を考える。このような対応を取るのが常道だろう。

 しかし我々が最初にE社の経営幹部に提案したのは、全く別のことだった。現場にはそれ以上立ち入るのを止め、その代わりにまず経営幹部に一堂に会してもらい、さらに合宿を行うこと求めたのである。

 3日間に及ぶ合宿を2回にわたって行った。中には、「合宿ですか…」と首を傾げる幹部もいたが、「改革を成功させるためには、いま一度、大元の経営の目標に立ち戻り、戦略と戦術を練り直すことが必要なのです」と説得。何とか経営幹部全員の参加を実現した。

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いただいたコメントコメント15件

1回から5回までの各回も各々感銘を受けましたが、この最終回がもっとも感銘を受けました。E社の状況は、私の勤務先にそもまま当てはまり、改めて「そうだったのか!!」と納得すると共に強く感銘を受けました。しかしながら、E社の成功要因は何よりもまず、経営トップが著者である岸良さんのグループに支援を訴えたことだと思います。私の勤務先も、まったく同様な状況ですが、・改革を進める横串組織を強化したり、更に・改革を強化する目的で「なぜ結果がでないのか」の分析をコンサルタントの目的で某F社に依頼し、その結果、横串組織や依頼先コンサルタント某F社の担当が原因調査の目的で現場の中に入って、現場に更なる負荷を掛ける、といったことが繰り返されて来ました。更に今回のE社の事例では、「要は、我々がマルチタスクの発生源なんだろ!、、、、不要な改革は凍結しよう!」と言い放って、まずは自分達がどうすべきか気がついた経営トップも、さすがだと思いました。この経営トップは著者である岸良さんのグループに支援を訴えただけのことはあると感じまし た。本当にTOCは素晴らしいですね。 改めて、本当にありがとうございました。(2011/09/04)

それは改革そのものが経営者候補の点数稼ぎの手段にすぎないと従業員が見抜いているからです。真の必要な改革は従業員は痛みを分けても従いますが、従業員だけ収入が下がる現状では多くの従業員は上辺だけの指示に上辺だけの対応です。もちろん一部の方はそれがチャンスと、上辺だけの成果に乗っかり昇進し、ますます経営陣が弱体します。(2011/09/04)

社員が疲弊するほど改革プロジェクトや日々の現場改善活動が錯綜しているのに、会社全体の活動の調整を図る役割の経営陣(役員)がそれに気づかなかったり、そのくらい忙しく働いて当たり前と思っていることを振り返ってそれが間違いだと自省できるようにするのは、部下である社員(管理者含む)だけで実現するには(限りなく)不可能に近いのではないでしょうか。今何に集中すべきかに合意して進める…という点でも、お互いの部門利害が相反する役員同士のせめぎ合いを解消させるプロセスも現実の会社では苦慮しているのではないでしょうか。だからこそそうした状況にある企業はなかなか浮上できずに苦しんでいるのではないのでしょうか。こうした局面において対話を通じて経営陣の内面に働きかけ、経営陣自らの内側からこうした真の原因に気づいて号令を発することができるようになるまでが思考プロセスの絶大な効果だと感じています。自社の中で出来ないときは、外部の力を借りてそうした状況を創り出すことも一つの選択肢で、自社で出来るところは自社で展開すればそれはそれでよいのでは。TOCはパブリックドメインということですから。(2011/09/01)

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