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「やらせメール」を上から頼まれて、きっぱり断れますか?

自分に後悔しないための組織と個人のバランス

  • 武田 斉紀

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2011年9月5日(月)

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信頼、尊敬する、世話になっている上司に頼まれたら…

 原子力発電所建設のための住民説明会における「やらせ」が次々と発覚している。九州電力のニュースを聞いて、この会社特有の問題と思った人は少ないだろう。案の定、全国の電力会社で同じような「やらせ」問題が明らかになった。背景には国側である原子力安全・保安院からの要請があった。

 このニュースに触れて、他人事とせず自分の日常を振り返った人もいるだろう。果たして「自分が上司から、やらせメールやアンケートを依頼されたら、“嫌です”ときっぱりと断れるだろうか」と。

 これほどやらせがニュースになった後なら、はっきり断れると言い切れる人もいるだろう。しかしニュースの前だったらどうか。普段からよく思っていない上司になら言えたとしても、信頼し尊敬もしている上司、世話になっている上司に頭を下げられたらどうだろう。

 依頼元はもっと会社の上の方であって、上司は断れなかっただけかもしれない。実際、保安院からの圧力が絶対だったとしたら、電力会社のトップは断れなかっただろう。トップが受け入れていたなら、社内に内部通報しても意味はない。

 その場にいて上司の依頼をきっぱりと断ることは、かなり難しかっただろうと想像する。まして九州電力は九州最大級の企業であり、地元にも多大な影響力を持つ。他の電力会社も例外なく、地元と地元財界、マスコミに大きな影響力を持っている。

 「外部に告発したところで、まともに取り合ってもらえるだろうか。もし闇に葬られたら、自分自身も葬られる可能性だってある」。正々堂々と不正を告発したとしても、リスクを負っただけのメリットがあるとは限らない。むしろ逆に大きなデメリットの可能性がちらつく。

 マスコミが取り上げてくれて、世論が味方についてくれたとしても、社内ではどうだろう。誰が告発したかがばれて、正しいことをしたにもかかわらず、裏切り者のレッテルを張られてしまうかもしれない。本人は会社にいづらくなる。デメリットは容易に想像できる。地方の狭い世界に身を置く立場ではなおさらだろう。

 以前に比べると、社内の不正はインターネットやマスコミを通して、世の中に知られやすくなってきた。けれどもそれらはどうにも耐えられずに、事後を顧みずに告発したケースだろう。全体からすればまだごく一握りにすぎないはずだ。

 昨今、各社はコンプライアンス(法令順守)や内部統制に力を注いでいる。だが積極的に曇りのない組織を作ろうという意味合いよりも、世間や社会に対して「うちはこれだけやっていますよ」という言い訳に使われているケースも少なくない。

 それらの会社では、いくら内部通報の仕組みを作ったとしても従業員は利用しようとは思わない。内部通報は、不正の事実を社外に公表するためではなく、社内でもみ消すことに利用されるだけだからだ。結果、通報した本人に待っているのは悲惨な結末だ。

 内部通報の仕組みには、「窓口が社内で独立していること」や「通報者の匿名性が確保されること」などが大切とされる。しかし社内にあって完全に独立した組織はあり得ないし、匿名性もどこで漏れるか分からない。結局は会社とトップに対する信頼関係が前提となる。

 この会社なら、あのトップなら大丈夫と思えるか。もし顧客や社会に迷惑を掛けるような不正が社内で見つかったら、積極的に公開し、反省して出直す姿勢があると信じられるかどうか。あなたの会社ではどうだろう。

 会社ぐるみでなくとも、上司や同僚から「今回だけだから見て見ぬふりをしてくれ」と頼まれることもあるかもしれない。普段から世話になっている上司や親しい同僚なら、あえて社内通報したり、外部に告発する道を選ぶだろうか。「見なかったふり、知らなかったふり」をしてしまわないだろうか。

 積極的に関わることはなかったとしても、気がついたら不正に手を貸していたということもあり得る。それくらい私たちの身近には罠がたくさん潜んでいる。具体的な事例でお話してみよう。

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