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このミスは個人の責任ではなくシステムの責任

福知山線の脱線事故は誰の責任か~統計的思考の試み

  • 吉田 耕作

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2011年9月15日(木)

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 JR福知山線の衝突事故は日本では極めて珍しい鉄道事故であり、新聞にも大々的に取り上げられ、現在も裁判で一体誰の責任なのかを確定するべく公判中である。今回は少々趣向を変え、福知山線の脱線事故を管理図という統計的手法を応用して解析してみたい。

 2010年4月15日の本欄で、「データの細部に気を取られずに“当たり”をつけて全体を一言で表そう」という題で平均値のお話しをした。また、2010年5月20日の「投資のリスクも学力も平均値だけでは語れない」という所では標準偏差を取り上げた。

 今回は、ばらつきを原因によって2つに分けて考えるお話しをしたい。その考え方は管理図と呼ばれるもので、品質管理の分野では長期間にわたり、多くの人たちによって用いられてきた。日本製品の品質が世界で非常に高く評価されるようになった根底には、製造現場でこの管理図が広く使われている事によるといえる。

管理図とは何か

 管理図は、ばらつきを管理する図である。もともとは、工程を管理するためにシューハート博士によって開発されたものである。たとえば、ある部品を作っている時、長さ、幅、厚さ、硬さ、弾力性、耐久性などについて、それぞれの規格を満足させるものでないと他の部品とうまく組み合わせられないし、組み合わせても要求されている機能を発揮できない。したがって、ばらつきを抑えて均一性を保つことは、完成品の品質の維持に関して根幹的な問題である。そのため、工程から出てきた製品を計測し、その計測値を時系列的にグラフに書いて、その製品が規格を満足している事を示す必要がある。

 しかし、記録された時系列を見ると、ほとんどすべての記録にばらつきはつきものである。どんなに精巧な機械を優秀な人材が操作しても、どんなにコントロールされた工程からも、作られる製品にはばらつきがある。問題は、どの範囲内のばらつきは偶然原因によるばらつきなのか、そして、どの程度を超えたら異常原因によるばらつきとみなすのかの区別である。

 シューハート博士は、その工程の時系列の平均値±3標準偏差の値をもって、それぞれ上部管理限界(UCL:Upper Control Limit)と下部管理限界(LCL:Lower Control Limit)とした。つまり、計測値がUCLとLCLに挟まれたところにある状態では偶然原因によるばらつきとみなし、これは現状では避けられないばらつきなので、ネジを締め直したり温度を上げたりといった微調節をしてはいけないのである。

 計測値がUCLの上に出るか、LCLの下に出る場合は、通常のばらつきとは違うので、異常原因によるばらつきとみなす。つまり、通常のばらつきとみなすにはあまりにも明らかな異常なので、現場で作業員だけで、あるいは、職長と一緒に問題の解決にあたる。これは明らかな問題なので、それが解決されればその局所的な問題は解決される。そして、すべての異常原因のばらつきが取り除かれた場合、残るのは偶然原因によるばらつきだけである。

コメント5件コメント/レビュー

人をいくら入れ替えても状況が一向に改善しない(ように見える)日本の政治の現場に対し、統計やシステムの考え方で、有効な対応策を提案できないものだろうか。(2011/09/15)

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いただいたコメント

人をいくら入れ替えても状況が一向に改善しない(ように見える)日本の政治の現場に対し、統計やシステムの考え方で、有効な対応策を提案できないものだろうか。(2011/09/15)

事故がシステムにあるとすれば、誰でもその状態にらると事故を起こす(可能性)があるという話です。道路交通の事故では特にこのシステムのまずさが原因のものが多々あるようですが、一般には運転者が犯人になります。(事故では原因の追求より犯人探しが優先) 今回の福知山線の事故はこのシステムの問題では無いでしょう。あえて辛口に言えば、今まで度々失敗(軽微な)を繰り返し、「問題の教育」を受けていた運転者は、技能に問題ありと考えるのが普通でしょう。平たく言えば「運転手失格」だったのでしょう。 例えば、本人が俺は歌が好きで、歌手になるのだ。でも幾ら努力しても歌が下手で、とてもプロにはなれない。のと同じですが、プロの運転手はお客の命を預かるので、歌手よりずっと責任が重いものです。 JR西では、運転手の技能の促成栽培が出来ると思ったのでしょうが、精神教育で技能の鍛錬は出来なかったのです。(2011/09/15)

私は、『管理図でいう経営者の責任である「偶然要因」の一部が特定の運転士の責任として捉えられている可能性が非常にあるように思えるのである。』については、事故発生後に周知された「日勤教育」制度が判明した時点でそう解釈していました。実際、社長逮捕までに何度もTV等の取材対応の報道を見ていましたが、「悪いのは運転手」といわんばかりの言動にしか見えませんでした。●宅配業者の労働訴訟において、労働者勝訴した例で「反省」させるために草むしりをさせていたものがあります。単なるイジメとみられるような行為は懲罰にはなっても教育ではありませんので敗訴当然ですが、事故後叩かれてATS等を設置したことからみても経営責任の方が割合としては高いものと考えますので、JR西も労組勝訴となってしかりです。(2011/09/15)

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