JR福知山線の衝突事故は日本では極めて珍しい鉄道事故であり、新聞にも大々的に取り上げられ、現在も裁判で一体誰の責任なのかを確定するべく公判中である。今回は少々趣向を変え、福知山線の脱線事故を管理図という統計的手法を応用して解析してみたい。
2010年4月15日の本欄で、「データの細部に気を取られずに“当たり”をつけて全体を一言で表そう」という題で平均値のお話しをした。また、2010年5月20日の「投資のリスクも学力も平均値だけでは語れない」という所では標準偏差を取り上げた。
今回は、ばらつきを原因によって2つに分けて考えるお話しをしたい。その考え方は管理図と呼ばれるもので、品質管理の分野では長期間にわたり、多くの人たちによって用いられてきた。日本製品の品質が世界で非常に高く評価されるようになった根底には、製造現場でこの管理図が広く使われている事によるといえる。
管理図とは何か
管理図は、ばらつきを管理する図である。もともとは、工程を管理するためにシューハート博士によって開発されたものである。たとえば、ある部品を作っている時、長さ、幅、厚さ、硬さ、弾力性、耐久性などについて、それぞれの規格を満足させるものでないと他の部品とうまく組み合わせられないし、組み合わせても要求されている機能を発揮できない。したがって、ばらつきを抑えて均一性を保つことは、完成品の品質の維持に関して根幹的な問題である。そのため、工程から出てきた製品を計測し、その計測値を時系列的にグラフに書いて、その製品が規格を満足している事を示す必要がある。
しかし、記録された時系列を見ると、ほとんどすべての記録にばらつきはつきものである。どんなに精巧な機械を優秀な人材が操作しても、どんなにコントロールされた工程からも、作られる製品にはばらつきがある。問題は、どの範囲内のばらつきは偶然原因によるばらつきなのか、そして、どの程度を超えたら異常原因によるばらつきとみなすのかの区別である。
シューハート博士は、その工程の時系列の平均値±3標準偏差の値をもって、それぞれ上部管理限界(UCL:Upper Control Limit)と下部管理限界(LCL:Lower Control Limit)とした。つまり、計測値がUCLとLCLに挟まれたところにある状態では偶然原因によるばらつきとみなし、これは現状では避けられないばらつきなので、ネジを締め直したり温度を上げたりといった微調節をしてはいけないのである。
計測値がUCLの上に出るか、LCLの下に出る場合は、通常のばらつきとは違うので、異常原因によるばらつきとみなす。つまり、通常のばらつきとみなすにはあまりにも明らかな異常なので、現場で作業員だけで、あるいは、職長と一緒に問題の解決にあたる。これは明らかな問題なので、それが解決されればその局所的な問題は解決される。そして、すべての異常原因のばらつきが取り除かれた場合、残るのは偶然原因によるばらつきだけである。
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