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社長がいつ死んでも困らない会社に

1カ月留守にしてみたら、売り上げが2割も伸びていた

  • 津川 雅良

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2011年9月7日(水)

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 「社長がいつ死んでも困らない会社にしないといけない」。

 北海道にある小さな問屋の社長を父から引き継いだ1993年、39歳の私はこう決意しました。それから17年経った2010年に、やむを得ない事情から1カ月ほど出社できなくなりそうだと分かった時、どこまで社長抜きで回るか試してみることにしました。

 社員たちに「1カ月留守にする。一切連絡を取らないように」と言い渡し、それから全く社員に接触せず過ごしました。1カ月後会社に出てみると社長の私が不在の間、商売は前年同時期に比べ2割も伸びていました。

 「社長がいなくても仕事ができるようになったかな」と感慨を深める一方で「誰一人連絡してこないとは案外冷たい連中だ」と思ったりもしました。「顔を出すな」と私が言った通りに社員はしただけなのですが人間というのは勝手なものです。

商品点数は100万アイテムを超える

 「社長がいなくても回る会社」ということを考え始めたのは、社長になる1年前の1992年に出向先から戻って役員になった時でした。呼び戻されてすぐ当時の役員や幹部が体調を崩してしまい、ほぼ私1人で会社を切り盛りするはめになりました。

 当社は電設資材(電材)卸業を営んでいます。あまり聞いたことが無い業種だと思います。全国の組合加盟数が地域の重複を含めても800社足らず、非加盟企業を入れても1200社程度の企業集団です。

 電気を必要としない人間はいませんから、顧客は法人個人の区別無く万人です。得意先は工事業者で、我々が電気資材や電設資材を電機メーカーから仕入れ、工事業者に納めます。悩ましいことに扱い商品点数は現行品だけで100万アイテムを超え、ベテランでないとなかなか受注業務をこなせませんし、日常の事務処理は極めて煩雑です。

 社員20数人の小所帯でありながら仕事は営業、配送、経理と一通りあり、それぞれの部門にベテランがいて、いわゆる縦割りになっていました。社員の多くが年長という状態で当時30代の私が複雑怪奇な電材問屋を動かせるわけがありません。

 「すべての仕事を理解したとしても、いちいち指示するのは到底無理だ。それより仕組みを整えて社長がいなくても済むようにしよう」と考え、あれこれ取り組んできた次第です。

物事のプラスとマイナスを両方考える

 「万物、自然科学には勝てない」。

 唐突に何の話かと思われるでしょう。これは今から40年前、高校時代に生物の教師から聞いた言葉です。この言葉は今日に至るまで私の考え方を左右しています。

 「作用には反作用」「長所には短所」「損には益」といったように、「全ての事象は相反する要素が支え合っており、一方だけを見て結論を出してはならない」ということを学びました。

 化学変化の前後におけるエネルギーの総和は等しく、物理では作用と反作用で均衡を保ち、生物の成長は究極には自滅です。ほかを犠牲にした繁栄はあり得ず、物事には長所短所があり、一方的な要求だけで改善が進むことはありません。

 よって、何か物事に取り組む時には、関連するすべてをいったん頭の中に並べて見渡し、従来のやり方と改定後のやり方の長所短所を洗い出し、総和がプラスになるようにしなければなりません。

 物事のプラスマイナスが最後にどうなるのかを最初に明らかにしておかない限り、いずれかの時点で頓挫する可能性があります。成功させるには、マイナスが生じて失敗する手前で終えれば良いのですが、そのために最初に全体を見ておかないといけません。

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