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職人仕事の土台が決め手

音楽から考える「基礎」と「責任内閣制」

2011年9月9日(金)

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 先週は民主党代表選のため、一度話題が野田新内閣に飛びましたが、再び『人生が深まるクラシック音楽入門』(幻冬舎新書)のおまけビデオの話題に戻ろうと思います。

 野田政権も閣僚の顔がそろいました。主要閣僚に若い人も見え(私個人としては自分と同年輩の閣僚が増え、という感想でもありますが)、過去の実績は問いにくいかと思いますが、何とか現状の難局を乗り越える舵取りをしてもらわねばなりません。

 しかし、改めて考えてみると、今回お話しようと思っている音楽の話題と、責任内閣制のような政治システムと、どこかしら似た所もあるような気がするのです。

「ブラックジャックのメス」再び

 さて、前回は手塚治虫のマンガ「ブラックジャック」を引いてお話をしました。この例を引いたポイントは、コミックスの中の話ではありますが、外科医ブラックジャックの奇跡的な手術を可能にするのは、

☆1 職人的外科医としてのブラックジャック本人のウデ

☆2 外科医が存分に力を振るえるメス
それに
☆3 メスを常に最高の状態に保つ職人プロとしての鍛冶師

という、3つの力がそろってこそ、なのですが、この第2、第3の部分は必ずしもお客様の目や耳にとまらない、あるいは前面に押し出さないようにしてきた、過去約1世紀に及ぶ日本の洋楽、クラシック音楽の受け取り方があるわけです。

 実はそれが、色々な限界、壁を作っているような気がするのです。これはまた、あえて言うなら「個人主義」とか「民主主義」など、やはり西欧から日本が輸入した「舶来物の受け取り方」全般に共通する面があるような気もするのです。

音を創るケーススタディ…オーボエの例から

 突然ですが「オーボエ」という楽器を例に挙げて考えてみます。国際的に活躍される奏者、例えば宮本文昭さん、あるいはNHK交響楽団の茂木大輔さんなど、広く知られる名演奏家も多数ある、魅力的な楽器です。国際的にはハインツ・ホリガーなど歴史的な名手の名も有名でしょう。

 このオーボエ、楽器の元来の先祖を尋ねると、意外かもしれませんが「夜鳴き蕎麦」というか夜鳴きラーメンですが、屋台などでラーメンを売って歩くときに吹く(かつては吹いていた)「チャルメラ」と親戚に当たる楽器です。どこが「親戚」なのかというと、音を出すために口でくわえる葦の「音舌」リードの形が同じ「二枚舌」ダブルリードで共通しているのです。

 東儀秀樹さんの登場ですっかりメジャーになった感のある日本の雅楽の楽器『篳篥(ひちりき)』も、この「ダブルリード」楽器の1つ、つまりオーボエと遠縁の楽器です。

 さて、このオーボエ、プロフェッショナルとしてこの楽器の奏者、つまりオーボエ演奏の職人になるなら、通常の意味での「演奏」や「練習」と並行して、どうしても避けて通れない「下準備」の段階が出てきます。それは「リード削り」です。

 私自身、オーボエを演奏しませんので本当に具体的なことは言えないのですが、リードの削り方1つで、オーボエの音は全く変わってしまうようです。

 20年くらい前になりますが、いま第一線で活躍する、とあるオーボエ奏者が大学生時代、リードの削り方で開眼したということで、音色が全然変わり、その後とある在京オーケストラの首席試験に在学中に合格して、大きく飛躍するのを目の当たりにしたことがあります。リード削り、ないし音色作りは、職業人としてのプレーヤー生命を決する、非常に重要な仕事の核なのです。

 ある若いオーボエ奏者の友人によれば、本当に優れたオーボエのリードを作ろうとするなら、リードを削るのは当然として、そのリードを削る「ハモノ」、さらにはその「ハモノ」を作ったり、作り変えたりする機械までそろえる必要があるとのことでした。実際、彼はドイツ留学時代、「リード削り工具を作る機械」まで仕入れてきて、それに習熟し、自分の演奏する音作りを基礎の基礎から鍛えるようになりました。新たな職人、ドイツ語で言うならマイスターの誕生です。

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