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落語の「千両みかん」とかけて、テレビの価格下落と解く

その心は、プライシングの巧拙と将来に向けたヒント

2011年9月9日(金)

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 「千両みかん」という落語がある。今年、東日本大震災で被災した子供たちを支援するために行ったチャリティー落語会で、トリを務めてくださった立川志の吉さんが演じてくれた噺でもある。

 なお最近ところどころで誤解されるので、あえて付記しておくが、私は落語を聞くのが大好きだけれど、残念ながら自分で演ずる能力はない。チャリティー会の当日も、公認会計士のTさんと私が、前座代わりに講演を行い、その後に落語家さんにご登場いただくという趣向だった。

 話を「千両みかん」に戻そう。主人公はとある大店の跡継ぎ息子。理由はよく分からないが、体調がすぐれないのか、床にふせったまま部屋から一歩も出てこない。心配した両親が、長年奉公して最も信頼している番頭に、息子と1対1でゆっくり理由を聞いてもらうことにした。

 この手の状況だと、恋患いが原因だろう、という流れになるが、それを裏切るのが落語らしいストーリーの面白さにつながる。ある噺では、スプーンだの橋の欄干だのといった金属に対するフェチズムが高じて、という仰天の展開になるのだが、演題通り、千両みかんの場合は、夏のさなかに、みかんが食べたくて、食べたくて、病にふせる、という話だ。

 ハウスみかんから冷凍みかん、あるいは輸入かんきつ類。一年中、みかんの類が手に入る現代ではなく、江戸時代の設定なので、みかんは冬にしか出回らない。真夏に、お店の跡継ぎの病気回復を願って、江戸中を走り回った番頭さん、ある大きなみかん問屋でようやく手に入れることができたのだが、何とその値段、みかん1個千両だという。

みかんに千両をつけた問屋主人の説得力

 この噺、プライシングというものを考えるうえで、なかなか面白い。

 まずは、コスト面からの議論。「千両というのは、いくら何でも暴利だろう」と言う番頭に対し、みかん問屋の主人が懇々と価格の正当性を語るのだが、それは主としてコストの正当化だ。主人いわく、

 「このみかん1個の背後には、無駄を承知で大量に保存しておいた蔵一杯のみかんの在庫がある。蔵一杯分残しておいて、ようやくこの1個だけが夏の盛りまで、傷まずに残った」

 「何年、いや何十年に一回、来るか来ないか分からない夏の盛りにみかんを所望する客のために、毎年毎年蔵一杯分の在庫を、ダメになるのを承知で(冬の間に売り切ってしまわず)残しておく、ということの大変さ。これが(同じ商人として)分かっていただければ、みかん1個千両というのは、決して無茶な値付けではない、とご理解いただけるはず」

 要は、良品1個を残すためにかかった「蔵一杯のダメになったみかんのコスト」×「過去に同様の客が来てから、現在までの期間」という背後のキャッシュフローを考えろ、と言っているわけだ。なかなか説得力ある説明である。

 さすがに、蔵を別の目的に使用する「オポチュニティー・コスト」についてまでは含めていないし、バランスシート上に減価し続けるみかん在庫が残ることの課題などについても触れてはいないが……。

 冗談はさておき、千両という値付けの背後にある尋常ならざる努力とそのコスト。これを聞いた番頭は、さはさりながら、ということで、いったんお店に戻り、主人に判断を委ねることにした。

コメント10件コメント/レビュー

企業が提供するものは、物かサービス。物が売れないからサービスは当然の流れ。ハードがテレビならる配信されるコンテンツの再生機器。テレビが売れない、買い換えられない一番の理由は、テレビから提供されるものに対価が見合わなくなってきているからと見るべきでは?だとすれば設置にまつわるサービスより、テレビを通してどんな”楽しみ”(=価値)があるかが重要。また、ハードはテレビとみるよりディスプレイと周辺装置と見た方がいいかも。  ☆ハードメーカーから”楽しみ”の部分が提供できないと思考が停止するなら、ハードの不足する海外に目を向けることしかできなくなり、国内への解が見つからなくなると思う。この視点の取り方はテレビに限らず家電全体でも同じことに見える。  ☆車と家電は中古市場の有無で決定的に違う。家電の高機能化が高価格維持に働き続けたら、携帯電話のような中古市場が家電にできてしまうかもしれない。リサイクル・リユーズも流れだし、これまでのような1つの家庭でライフサイクルを回さず。特定層に新品、別の層ではユーズドとか、買ってみたけれど交換したいというニーズがあるかも。そうなればメーカー保障のユーズド市場(やリファービッシュ市場)が立ち上げられるし、これは設置やアップグレードより現実感があると思う。これを実現するなら、既存の無意味で煩雑なモデルチェンジでの”あまり役立っていない”需要喚起が止められそう。(2011/09/12)

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「落語の「千両みかん」とかけて、テレビの価格下落と解く」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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企業が提供するものは、物かサービス。物が売れないからサービスは当然の流れ。ハードがテレビならる配信されるコンテンツの再生機器。テレビが売れない、買い換えられない一番の理由は、テレビから提供されるものに対価が見合わなくなってきているからと見るべきでは?だとすれば設置にまつわるサービスより、テレビを通してどんな”楽しみ”(=価値)があるかが重要。また、ハードはテレビとみるよりディスプレイと周辺装置と見た方がいいかも。  ☆ハードメーカーから”楽しみ”の部分が提供できないと思考が停止するなら、ハードの不足する海外に目を向けることしかできなくなり、国内への解が見つからなくなると思う。この視点の取り方はテレビに限らず家電全体でも同じことに見える。  ☆車と家電は中古市場の有無で決定的に違う。家電の高機能化が高価格維持に働き続けたら、携帯電話のような中古市場が家電にできてしまうかもしれない。リサイクル・リユーズも流れだし、これまでのような1つの家庭でライフサイクルを回さず。特定層に新品、別の層ではユーズドとか、買ってみたけれど交換したいというニーズがあるかも。そうなればメーカー保障のユーズド市場(やリファービッシュ市場)が立ち上げられるし、これは設置やアップグレードより現実感があると思う。これを実現するなら、既存の無意味で煩雑なモデルチェンジでの”あまり役立っていない”需要喚起が止められそう。(2011/09/12)

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