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「新しいことなんかしたくない」

それなら「新しいとは思わせない」

  • 津川 雅良

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2011年9月14日(水)

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 「コンピューターを使って仕事をもっと効率化したいのですがなかなか難しく悩んでいます」。

 「新しい仕組みを入れようとすると拒絶する社員が出てきますね。その社員が駄目というわけではありません。人は新しいことなど本当はしたくないのです。となると仕組みの前に仕掛けが必要です」。

 この会話は昨年交わされたものです。同じ電材卸業を他都府県で営んでいる社長がわざわざ北海道の当社まで相談にこられました。

 社長があれこれ差配するのではなく、いわゆる「仕組みで経営」するようにできれば効率を上げられます。というわけで企業運営には新たな取り組みが常に必要なのですが、仕組みを入れ替える際に拒否者が生じます。社長が情報システムを更新する計画を立てたとしても賛同する片腕がいなければ孤立するだけです。

 社長になって体得したのは新しい仕組みを入れようとした時に「仕掛けをして爆発を待つ」という手口です。もっとも爆発までに何年もかかったりしますので、その間じっと待っていなければならず社長と社員の我慢比べの様相を呈します。

 相談にこられた社長には次のような取り組みを説明しました。

上級管理職への通告と我慢比べ

 父から社長を引き継いだ時、営業部門を改革しようと決めました。長年営業を担当してきた役員や上級管理職が顧客をしっかり握っており、それはそれで有難かったのですが、若手が育っていませんでした。

 当社の扱い商品点数は現行品だけで100万アイテムを超えており、ベテラン社員は30年近くかけて商品名や特徴を覚えてきました。これだけの商品知識を若手に教えるためには、育成期間を3年とすれば10倍の詰め込み教育が必要です。10年かけて育てるとしても3倍の詰め込みになります。つまり若手が育ちにくい業界なのです。

 ベテラン社員に未来永劫勤めてもらうわけにはいきません。いつかは彼らが引退し私以下の世代が中心になります。その時までに若手が育っていないと困ります。

 若手を育てると同時に古い情報システムを捨てて作り直そうと考えました。面倒な見積もりや受発注業務まで情報システムでやってしまえば営業部門の負荷を減らせますから若手も楽になるはずです。ただし、そのためには営業担当者にシステムを操作してもらわないといけません。

 それまでの経験から「情報システムを新しくしました」といきなり言っても誰も付いてこないだろうと予測し、新システムの導入に先立っていくつかの仕掛けをしました。

 まずは先代社長に最も近かった常務に賛成してもらうことです。受注報告を書き込む表計算シートを作り、パソコンを使えた営業に入力させました。

 そのシートを常務に見せ「これは便利だ」と言わせました。こうして「システムを使わないといけないのかな」といった雰囲気を作ったのです。

 次に見積もり業務についてだけ新しいシステムを作るとともに、別の仕掛けをしました。部長など上級管理職に次のように通告したのです。

  1. これからは「部下に手柄を立てさせた」ことだけを評価する
  2. よって顧客や商品知識を引き継ぐための計画を立て、それを実行することを義務付ける
  3. 部下に任せることをせず自分で直接受注してきても評価はしない

 営業幹部やベテランの営業にしてみると注文をいくら取ってきても部下や後輩を育てない限り評価してもらえないわけです。

 ここから我慢比べです。約3年間、上級管理職の昇進を止め、若手が育つのを待ちました。3年が経過して、部下の受注活動が円滑になったのを確認してから、上級管理職のうち、営業改革と新システムに賛同したものは昇進させ、従わなかった者は昇進停止のままにしました。

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