日経ビジネス9月12日号特集「未来都市フクシマ」の関連インタビュー。
第2回は、城南信用金庫の吉原毅理事長。同氏は3・11を機に原発依存社会から脱することを目指して経営するようになった。何が彼を動かしたのかを聞いた。
(聞き手は金田信一郎=日経ビジネス副編集長)
―― 「脱原発社会」を目指すと明言されていらっしゃいます。
吉原:福島第1原子力発電所の事故があって、それから虚心坦懐に考えたら、そういう結論になったということです。
信用金庫や信用組合は、地域の地場産業や個人の方々と一緒にコミュニティーを作っています。「金融機関だから利益を求めているのだろう」と思われがちですが、その前に、「社会のためにある」という考えがあります。
儲けよりも、地域を良くすることが使命
1844年、英マンチェスターに世界で最初の信用組合が誕生しました。その理念が、「お金に振り回されず、人間を大切にする会社や社会を作ること」だったのです。カネを貸してカネを儲ければいいわけではありません。我々には、地域を住民とともによくしていくことが求められています。
例えば、城南信金がある東京で原発事故があったら、と考えてみました。放射能汚染に襲われて住民が避難しなければならなくなったら、地域が甚大な被害を受けてしまう。店舗も撤退しなければならないでしょう。そう考えると、我々のような地域金融機関が「脱原発」の社会を目指すというのは、自然な流れだと思いました。
―― もともと、「脱原発」という考えを持っていたのでしょうか。
吉原:いえ。恥ずかしながら、3・11まで原発について深く考えたことがありませんでした。でも、今、「原発は中長期的に減らしていこう」という人が非常に増えています。その多くは、社会運動などと無関係の方々です。
―― 「脱原発」を打ち出したきっかけは。
吉原:原発事故の直後、福島県南相馬市のあぶくま信用金庫から問い合わせが来ました。そして、「うちの従業員を採用してもらえないでしょうか」と言うのです。
企業の国際競争力維持を口実に、原発継続を唱えるのは簡単だ。逆に、感情的に原発即廃止を唱えるのも簡単だ。しかし、責任や具体的対策・行動を伴った発言は恐ろしく少ない。吉原氏が経営者として熟考の末に明確な行動に移していることに感嘆する。(2011/09/18)